春の風はふたりを優しく包み込む
そういえば2017年になって早くも2月になりましたね。そろそろバレンタインとかいう製菓会社の策略に男子高校生が踊らさせれる時期になりましたね。
電気毛布から抜け出せないまま2月も終わってしまうのではないかと不安ですが、2月もまったりのんびり頑張りましょう。
俺の通う青葉総合高校は屋上を開放しているという噂は真実であった。
東京と神奈川の県境にあるため、都心とはまあまあ離れている。周囲に高層ビルはなく自然のに囲まれていて、屋上から見る景色は自慢のスポットらしい。
──そんな開放的空間で俺は何故ここまで窮屈な思いをしているのだろう。
豊永と屋上に到着して10分が過ぎようとしているが未だに豊永は一人で景色を堪能していた。まるで子供のように目を輝かせながら。
「あ、あのさ俺帰ってもいい?」
「あ、君の存在を一瞬忘れてた」
「三歩歩けば忘れるほどアホなやつ初めて見たよ」
「あ?」
「いえ、なんでもないです、ごめんなさい」
目が怖い。雰囲気そんなに怖くないのに怒ると怖いな。オンオフのスイッチ切り替わるの速すぎだろ。思わず謝っちまったろうが!
「ここに君を呼んだ理由はわかるだろ?」
「な、なんのことだか」
「目が泳いでるぞ」
ムッとした表情を見せる。表情のバリエーション豊富だな。表情筋鍛えすぎだろ。
「私のその、ぱ、パンツを見ただろ?」
「いや、全然?なんのこと?」
「見ただろ?」
「さあ、なんのこと?」
あーもー。早く帰りたい。エロゲしたい。裏ヒロインめぐめぐの裏ルートまだ見つけてないのに!
「本当に見てないのか?なら、それはそれで良いんだが…。その時反射的にお前を殴ってしまっただろ?それは謝ろうかなとか思って…だな」
「キニシナクテモイイヨ、デモジブンカラブツカッテキテ、ナグルッテノハドウナノ」
「なにその棒読み!根に持ちすぎたろ!男のくせに!女々しいぞ!」
あれ?謝る気あるの?この子。
「そーゆー男だからなんだっての嫌いだから止めてくれ。都合の良い時だけレディーファーストとか、男なんだから奢りなさいよ的なの大嫌いなんだよね」
「は?何の話だ?」
俺はついカッとなってしまい畳み掛けるように自論をぶつける
「第一、男女平等って言うけど世間は大分女性にばかり優しいんだぞ?映画を見ればレディースデイがあり、電車に乗れば女性専用車両がある。俺的には男性専用車両がほしいね。痴漢に間違われるくらいならな。平塚らいてうの目指した男女平等って本当にこんな感じだったの?そもそも端からこれが狙い?そもそも黒いパンツの一つや二つ見られたところで」
「見てたんじゃねえかこの変態!!」
調子に乗っていらんことまで言ってしまった。
後悔する間もなく豊永の右ストレートが俺の頬を掠める。顔はダメだろ流石に!
「あー!もう暴力反対!俺帰るぞ!じゃあな!」
「あ!逃げた」
振り返ることなく俺は全速力で屋上を後にした。
あれから1週間。豊永との絡みはあれ以来一切なく、平穏な毎日を過ごしていた。
一時間目の国語は相変わらず眠気との戦いだ。教科書は貸したまんまだし。
まあ、困ってないからいいんだけど。
「はい、授業始めるよー…って今週も教科書忘れたのかい?東雲くん」
「あ、いや、その、はい…その通りです」
おい先週気づいてたのなら何故黙ってたんだ。
「隣に見せてもらってね」
「は、はあ…」
最も恐れていたことが起こってしまう。教科書見せてもらうのって気まずいんだよな…。あの微妙な距離感と授業中の静けさの凶悪タッグは精神をズタボロに引き裂くのだ。
「わ、悪い…見せてもらってもよいか?」
「…あ、はい。どーぞ」
あーあー…気まずいなー…本当に帰りたい。まだ一時間目なのになー。くそー。
俺達の自由の鐘(東雲命名)が鳴り響く。
さて、帰ろ。帰ったら何をしよう。エロゲ?それともFPS?
三階の教室から東階段を下り一階ロッカーへと足を進める。ちょうど一階女子トイレの目の前を通った時だ。トイレの中から聞こえるほど馬鹿でかい女子グループの会話が聞こえてきた。
「うおのめってさ!マジキモイよね!」
「死んだ魚の目してるからね(笑)」
「私今朝アイツに教科書見せたんだよね」
「なにそれ、キモっ(笑)ウケる」
思わず足を止めてしまった。勘違いしないでほしい、悪口や陰口を言われてる事なんて日常茶飯事でありそれに対して足を止めたりなんかもうしない。
「東雲…アイツらぶち殺してくるから担架4つ頼んだ」
本当にめちゃくちゃ物凄い形相でトイレの前に立っていた豊永にビビって立ち止まったのだ。
「いや、まてまてまて」
今にも本当にぶち殺しそうな目でそんな事言うな。警察呼ぶか迷うだろうが。ここは退散だ。死人を出すわけにはいかない。
「よし、付いてこい」
「ちょ、おい!」
豊永の手を取り屋上へ強引に引っ張っていった。
豊永は今とてつもなく機嫌が悪い。
「なんで止めた!!」
「いや、なんでお前が怒ってるんだよ」
「イライラするだろ!」
「いや、イライラしたって殺すなよ。ライオンかお前は」
ムキーっと言いながら無造作ショートカットをわしゃわしゃとさせている。
クソ。なんて言えば納得させられるだろうか。
「俺が悪いからいいんだ」
「そんなことあるか!」
「ああ、全くもってその通りだ」
豊永は目を丸くし、やがてコイツ頭イカレチマッテるのか?という不審者を見るような目に変えた。
「俺は何も悪くないさ。でもそれがいつだって青春というものだろう?理不尽なもんだよ。青春なんてやつは。世の中なんかもっと理不尽だぞ?正義なんかクソくらえだ。正義があるから悪がある。悪を創り出しているのは正義だ。じゃあその正義が偽物だとしたらそれに作られた悪はどうなると思う」
「悪じゃない?」
「いや、悪のままだ。何故なら正義は絶対だからだ」
「…ふーん」
「まあ、俺は慣れてるし、理不尽なものは仕方ない。なんとも思ってないし、嫌な気分にもなってない。いつものことだ。気にするな。よし帰るぞ」
しかし豊永は納得いかない顔を隠すように俯いている。何をコイツは考えてるんだ?さっぱりわからん。
「わた…が…」
「ん?」
「私が…教科書返せなかったから…」
あー。そんなことか…
「先週ここで返そうと思ってたんだ。でもなんかこう、上手くいかなくて…」
「それで責任を感じた。と」
「うん。」
あー…涙目の女の子への対処法とか知らねえよー。どうすればいいの。ねえ、誰か教えて?
「本当にごめん」
……沈黙が気まずい。何を言えばいいんだろう。こんな状況でごめんねと謝られたらどーすればいい…思い出せ!記憶を辿れ!どこかで学んだろ!
…はあ。
「仕方ねえな。許してやるよ」
シンプルイズベスト。これがベストだろう。
ごめんなさいって言われたら、許してあげる。幼稚園で習ったことは俺らの日常で非常に役立つものだと改めて実感する。
「…本当?」
その上目遣いずるいなおい。ドキッとしただろ。
「お、おう。本当だ。だからもう気にすんな!な?」
「うん!」
何この妹みたいな感じ。あれなんかこの子キャラ定まってなくないですか。あんだけぶち殺すとか物騒なこと言ってたのに。おい、作者!キャラ設定ちゃんと練ってんのか!?寝ぼけながら書いてないだろうな!
「あのよ、東雲は思ったより良いヤツなんだな」
「まあ、俺も少しはそう思うよ」
「ナルシス?」
「ノンノンノ。ノットナルシス」
「なんだそれ(笑)」
とてもアホらしく、とても平和な会話だった。久しぶりだ。この感じ。
「これ、教科書ありがとうな」
「おう」
「教科書本当は二つ持ってなかったんだろ?」
「さあな?信じるか信じないかはアナタ次第です」
さて時刻は16時30分。そろそろ帰るか。
「じゃあ、私先に帰るね」
「お、おう」
じゃあなと手を振り屋上を去る豊永を見送る。
はあ、なんか疲れたな。
少し時間の間隔を取らないと、後でまたハチ合わせたら気まづいな。もう少しここで景色でも堪能するとしよう。
──暖かい春の風が俺を優しく包み込んだ
豊永唯ちゃんのキャラ設定は人間らしい子にしています。喜怒哀楽の激しい豊永唯ちゃんに今後も期待しててください。




