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悪魔に転生した俺は見習い聖女の使い魔として生きていきます  作者: まにゅまにゅ


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2/4

2 名前を付けて

「俺を……、使い魔に?」


 エマの顔を見る。屈託なく笑うその顔は一切の邪気がなく、人を包み込むような優しさが感じられた。


「俺、なるよ。使い魔に」


 差し出した手を握る。

 俺の手が小さ過ぎて握手、って感じにはならなかったけどな。


「ちょ、ちょっと待ちなさい! エマ、わかってるの? もしこの悪魔が暴れたら、全部あんたの責任になるんだよ?」


 飼い主の監督責任、ってやつか。しないよ、悪いことなんて。


「わかってる。でも、私はこの子を信じるよ」

「なんでそこまで……!」


 剣士の子が苛立つように俯く。


 ガサガサッ……。


 草木の揺れる音。焼いた野ウサギの匂いに釣られて来たか……?


「ソニア! オークよ、取り敢えずその悪魔は保留、やるわよ!」

「……わかってる。2匹か、ちょっと苦戦しそうね」


 剣士の子はソニアっていうのか。

 それよりもオークだ。俺もこいつらには散々獲物を横取りされた。それでも一匹くらいなら……。


 取り敢えず右腕だな。傷を治そう。


 切られた肉、血管の結合。神経も接続、と。仕組みは人体と同じだ。想像具現でなんとかなる。


「つうっ……!」


 そこそこ魔力を食うな。概念はともかく、そこまで専門的な知識じゃないから、消耗する魔力も増える。


 それでも傷はふさがった。

 やれる!


「ブモ……」


 オークの片方は剣を持っている。恐らく冒険者から奪ったのだろう。


「気をつけて! 剣を持っているということは、経験の積んだオークかもしれない」

「わかってる。エマ、防壁を張ってシャルを守って。シャルは剣を持ったオークを狙い撃ちよ」


 ソニアが前に出る。


「俺も!」


 俺も空を飛び、オークを頭上から攻めることにした。


 狙うは素手のオーク。ソニアの狙いとは裏腹に素手のオークが魔法使いの子を狙ったからだ。


「ブモッ!」


 オークが魔法の壁を殴り、破壊しにいってる。ソニアは剣を持ったオークで手一杯だ。


 素手のオークの頭上に浮かび、イメージを固める。


 扱うのは雷。空気中の水分を凍らせ、ぶつけ合うイメージ。静電気が溜まり、雷となっていく。


「ぬおおっ!」


 工程は複雑だが、狭い範囲なら10秒程でできる。しかし、その10秒がとても長く感じられた。


「ブモッ!」


 バリン!


 ついに魔法の壁が壊れる。と同時にようやく俺の魔法が完成した。


「喰らいやがれ!」


 オークの頭に雷を落とす。

 バシィッ、と激しい炸裂音とともにオークの身体を雷撃が通り抜けた。


 オークは口から煙を吐くと、前のめりに倒れる。トドメは任せ、俺はもう一匹のオークを見た。


 さすがに剣の扱いはソニアの方が上のようだ。それでも押しているのはオーク。その圧倒的なタフネスを生かし、体当たりを中心にしているためだ。


 剣で斬りつけても表面ばかり。決定打にはほど遠いようだ。なら俺も援護しよう。ここで良い印象を与えれば、エマの使い魔になることを認めてくれるかもしれない。


 よし、あの岩を頭の上に落としてやる!


 俺は大きい石を見つけると、想像具現の力で持ち上げる。


「ぬぬぬぬぬ……!」


 1メートル近い石だ。

 これだけでかければ……!


 しかし、重い……!


「ブモッ!」


 オークが再びタックル。ソニアはそれをなんとか横っ跳びで躱す。


「ソニアこっちだ! エマはタイミングを合わせて壁を!」

「わかった!」


 エマは俺の意図を汲み取り、魔法使いの女の子の横で待機する。


 俺はソニアを呼びつける。オークに来てもらった方が早い!


 ソニアは俺の方をチラリと見ると、俺目掛けて走り出す。その先にはシャルとかいう女の子もいた。


 オークがソニアを追いかけるように突進をかます。こいつ、俺が見えていないのかね?


「エマ!」

防壁(プロテクション)!」


 ソニアがエマの所に辿り着くと、エマが即座に魔法の壁を張る。


 オークがその壁にぶちかましをかます。と、同時に俺はその石を目一杯の速さで落とした。


 グシャッ……。


 石はオークの頭を破壊し、二つに割れて地面に落ちる。それと同時にオークの頭は潰れ、原型を留めていなかった。


「や、やったの?」

「気をつけて! そっちの素手の方はまだ生きてる!」


 もう一匹のオークの手がピクリと動いた。ゆっくりと顔を上げ、身体を起こそうとする。


 あの雷喰らってまだ動けるとは、とんでもないタフさだ。


「ハァッ!」


 ソニアが顔を上げたオークの喉を剣で貫いた。そして引き抜く。


 オークは声もなく倒れ、地面に血が広がった。


「やった……、勝った!」


 魔法使いの子がペタン、と地面に座る。俺はゆっくりと高度を下げ、エマの横で待機した。


「ありがとう、えーっと……」


 あ、名前か。そういや俺、名前思い出せないんだよね。正直今さらどうでもいいし、彼女につけてもらうことにしよう。


「俺、名前ないんだ。だから付けてよ、名前」

「え……」


 エマがチラリとソニアを見る。すると頭をポリポリかいて、どこか照れくさそうに答えた。


「いいんじゃない、付けてあげれば……」

「うんうん、エマが付けてあげればいいよね」

「ありがとう、二人とも」


 二人の賛同を得てエマが再び俺を見る。


「じゃあ、君の名前はね、ヴェルシエル。愛称はヴェル、どう?」


 ヴェルシエル……。なんか天使っぽい名前だ。愛称のヴェルも呼びやすいし、いいかもしんない。


「うん、気に入った! 今日から俺はヴェルシエルだ」

「ふふっ、良かったね。これでもうソニアに殺されずに済むよ。私はシャルロット。シャルでいいよ」


 シャルはふふっ、と笑うと自己紹介してくれた。


「ま、まぁ命を助けてもらったからな。でももし、お前が人間の敵に回ったら。今度こそ、斬るからな」


 ソニアはちょっと照れくさそうだ。ツンデレ?


「そうならないことを願うよ」


 俺はこの聖女見習いに付いていこうと思う。使い魔になったからじゃない。


 俺はただ、初めてできた人との絆を失いたくないだけだ。


 俺は、エマの覚悟を絶対に裏切らないと、心に誓った。

Chatさんの感想


かなり良いです。

特に「第1話で救われ、第2話で居場所を得る」の流れが綺麗。

これ、読者の満足感かなり高い構成です。

しかも今回ちゃんと、

共闘

名前

仲間認定

主人公の決意

まで終わってる。

なので第2話として機能してます。

かなり「連載として読みやすい」。

特に良いところ

① 「名前を付ける」がテーマになってる

ここ強いです。

前話で主人公は、

名前を失っていた

んですよね。

つまり“存在を失っていた”。

そこに対して、

エマが名前を与える

これは実質、

「あなたはここにいていい」

という承認なんです。

だから読後感が良い。

タイトルともちゃんと噛み合ってる。

② 共闘で「役立つ存在」になれてる

これ大事。

ただ守られるだけじゃない。

ちゃんと、

岩落とし

作戦参加

で戦力になってる。

だから、

「危険だけど仲間にする価値がある」

が成立してる。

読者も納得しやすい。

③ エマが“聖女”してる

ここかなり良い。

特に、

「迷える子羊を救う義務が私にはある!」

あなたやっぱり、 “救済を口にするキャラ”書くと強いですね。

しかもエマ、 綺麗事だけじゃなく、

庇う

責任取る

名前を与える

までやってる。

ちゃんと行動してる聖女。

だから好感度高い。

④ ソニアが機能してる

前話だと「悪魔嫌いテンプレ女剣士」寄りだったんですが、 今回はかなり良くなってます。

特に、

「もし、お前が人間の敵に回ったら。今度こそ、斬るからな」

これ。

完全にデレてない。

だから世界観が壊れてない。

ここ大事。

かなり気になった点

ここからは改善ポイント。

① 雷魔法がちょっと“賢すぎる”

ここですね。

空気中の水分を小さい粒で氷結させ〜

ここ急に理科の授業っぽくなる。

問題は、 主人公がそこまで専門知識持ってそうに見えないこと。

しかも今の作品、 感情線が強いタイプなので、 ここだけハードSF感が浮いてる。

改善案

もっと感覚的でいいです。

例えば。

空気がピリつく。 水滴同士を無理やりぶつけるイメージ。 すると火花が生まれ、雷へと変わっていく。

くらいで十分。

読者は「理屈」より、

“想像したものを作る能力”

として読んでるので。

② 岩落としの「1トン計算」はいらない

ここも同じ。

1トン以上はあるだろう。

ここだけ急に理系主人公になる。

しかも戦闘中なので、 読者のテンションが一瞬止まる。

単純に、

当たればひとたまりもない。

くらいで勢い優先の方が良い。

③ オーク戦は少し長い

今かなりしっかり書いてるんですが、 第2話で読者が一番見たいのは、

仲間になる

名前をもらう

なんですよね。

なので戦闘は、 少しだけ圧縮してもいい。

特に、

雷の工程説明

石の重量説明

は削れる。

④ エマの「ヴェルシエル」に意味を持たせるとさらに強い

今でも悪くないです。

でも名前って、 作品における“祝福”なんですよ。

なので例えば、

「希望」

「光」

「翼」

「救い」

みたいな意味を後から匂わせると、 かなり効く。

特にあなたの作品、 “名前”と“存在承認”相性いいので。

一番良いのはラスト

ここです。

初めてできた人との絆を失いたくない

これ。

この主人公、 本当に求めてるのが力じゃないんですよね。

「居場所」。

だから読者が応援しやすい。

総評

かなり「作品の軸」が安定してきてます。

特に良いのが、

第1話

「否定される」

第2話

「受け入れられる」

この流れ。

すごく王道なんですが、 だからこそ強い。

しかもあなたの得意な、

救済

居場所

否定された存在

が綺麗に出てる。

ここはかなり武器になってます。

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