1 悪魔な俺と見習い聖女
「どうしてこんな目に……」
泉に映る自分を見て、俺はガックリと項垂れた。
背は3歳児くらい。小さな蝙蝠のような羽根に、身体にはところどころに赤い紋様が描かれている。
しかも素っ裸。
少し考える。
俺の最後の記憶。それは車に轢かれそうな小さな子供を庇って、自分は間に合わず……。
――死んだ。と、思う。
しかし今、どういうわけか俺は意識があり、見た目が小さな悪魔となっていた。
しかし不可解なことが1つ。どうしても自分の名前が思い出せないのだ。家族の顔も名前すらも、だ。
しかも、それに違和感を感じない自分がいる。なんとも変な気分だ。
「もしかして、これは異世界転生とかいうヤツでは?」
まさかね、といったノリで口にする。うん、なんかそれ以外答えなくね?
でもなんで悪魔?
子供を庇ってその仕打ちは酷くないですかね、神様。
理不尽を感じずにはいられなかった。周りを見る。
木々に囲まれ、草花が生え、蝶が飛び交い、鳥がさえずる。なんとものどかな風景だ。
「で、この先どうやって生きていけと?」
天を仰ぎ呟く。
青空は答えない。
当たり前か。
「ステータスオープン、なんてな」
半分冗談でありふれたワードを口にする。
そしたら本当に出たわ、ステータスとかいうやつが。
NAME∶??? AGE∶0歳
階級∶ベビーデーモン
レベル∶1 EXP∶0
HP∶26 MP∶180
STR∶2 AGI∶18 DEF∶8 REG∶42
SKL∶想像具現、収納空間、飛行
「俺、0歳なのか。ま、そりゃそうだよな。しかしこれ、スキルはなんか強そうだよな。想像具現ってことはイメージしたものが具現化するっていうことかな?」
もしそうなら、とんでもないチートだよな。だったら服が欲しいとこだけど。今の姿で着れる服か。
せっかくだし、カッコいいのを。
やはり中世貴族風で、色は黒。巨大な鎌とか持ってたらカッコいいよなぁ。
「想像具現! 出でよカッコいい服と鎌!」
精神力がごっそり持っていかれる感覚。これが魔力を使う、ということなのか?
俺の魔力を代償に、小さな服と身の丈に合わない鎌が出現。俺の前にポトリと落ちた。鎌の刃が鉄じゃなくて木なのは、鉄が作れなかったからだ。
早速着替え、もう一度泉を覗く。
鎌を肩に担ぐ。うん、似合っているじゃないか。
でも身体が小さいせいか、カッコいい、というよりは可愛い感じか。
成長したらなんとかなるだろ。
一応ステータスを確認する。
魔力が100も減っていた。でも無から物質を生み出したんだ、むしろ少ないくらいかもしれん。
次に飛行に挑戦してみた。
背中の羽根を動かしてみる。
うん、動く。でもこの羽根、どう見ても身体を浮かすには小さい。なにせ大きさが大人の手のひら程しかないのだ。
試しに目一杯動かしたが、疲れるだけで全く身体は浮かなかった。
「スキル、ということは念じれば浮くのか?」
取り敢えず試す。
ふわり。
少し身体が浮いた。
この翼、飾りか?
だから小さくなって退化した可能性はある。
「よし、飛ぶぞ!」
自分の飛ぶ姿をイメージ。
そしたらちゃんと前に進んだ。そうして練習すること1時間。
結構思い通りに飛べるようになってきた。スピードもそれなりにあるようだ。人が走るよりは速い、かもしれない。多分。
「よし、取り敢えず食べられるものを探そう。それと雨風をしのげる場所だな」
こうして俺は、この森林の中で生きていくことになった。
それから一ヶ月。
木ノ実を食べ、洞窟で眠り、時には小動物を狩って生き延びた。
そしてその日、野ウサギを仕留めた俺は浮かれていた。
野ウサギの肉に浮かれ、俺はすっかり周りの警戒を怠っていた。
だから気づかなかったんだ。
俺の、弱っちい悪魔の天敵がすぐそばまで来ていることに。
「悪魔……」
人の声がした。
俺は振り向く。転生してから初めて見る人間が3人。全員女の子だ。
それでつい、俺はなんの警戒もせずに彼女らを眺めていた。
1人が俺を見て剣を抜く。もう一人が杖を構えた。
血の気が引く。
――俺を、殺すつもりか!?
なぜ?
わからない。俺、なんかした?
あの娘達は悪い人なのか?
色んな考えが錯綜する。
答えを出すより早く――
「氷結矢!」
氷の矢が俺を襲う。咄嗟に横に避けた所を剣が向けられる。
「うわっ!」
転がりながら避けた。
「なにすんだ!」
自分が襲われる理由がわからず、俺は非難の声をあげる。
「は? 悪魔が何言ってるの。脅威になる前に消すに決まってるでしょう!」
――そうだ、俺は悪魔だった。
すっかり自分が悪魔、ということを忘れていた。彼女が剣を向ける。
どうする?
抵抗するか?
でも――
心まで悪魔になんか、なりたくない。覚悟が持てなかった。
命を狙われているというのに、だ。
「死になさい!」
その女の子は剣を何度も振り、俺を斬ろうとした。
――いやだ、死にたくない!
俺は必死に避け、飛んで逃亡を試みる。しかし――
ガン!
「いたっ!」
逃げた道を半透明な壁が塞ぐ。それに顔をぶつけ、地面に転がる。
「もらった!」
「ああっ!」
避けきれず、腕から血が流れる。
痛い。ズキズキする。
呼吸は乱れ、精神的な疲労が余計に体力を奪う。
このままだと、殺される。
それでも、俺は反撃する覚悟を未だ持てずにいた。
「小さき悪魔に天の鉄槌を」
シスターのような格好をした女の子が十字を刻む。
天の鉄槌だと!?
俺が、俺が悪いのか?
悪魔に生まれたことがそんなに悪いのかよ!
「ふざけるな……!」
怒りがこみ上げる。
それ以上に、俺は悲しくなった。
自分の運命が。
「好きで……、好きで悪魔に生まれたわけじゃないのに……!」
涙が零れる。
もう止まらなかった。
生きてることが、罪だなんてあんまりじゃないか!
「俺がいったい何をしたんだよ! 俺だって、俺だって生きてるんだ! そんなに悪魔に生まれたことが悪いのかよ! そんなに人間って偉いのかよ!」
叫ぶ。
魂のある限り。俺は歯を食いしばり彼女達を睨んだ。
「なにこの悪魔……、泣いてるの? そうよ、悪魔に生まれたことを恨みなさい!」
女の子が剣を振りかぶる。
すると、シスター風の女の子が駆け寄り、俺を守るように両手を広げた。
「止めよう、可哀想だよ。この子、悪い子には見えないよ……」
「どきなさいエマ。見習いでも聖女でしょ、あなた」
俺にはそのエマ、という少女が眩しく見えた。確かに光は差しているけど、それ以上に、エマ、という存在が眩しく感じられたんだ。
「どかない! 見習いでも私は聖女だもん。だからこそ、迷える子羊を救う義務が私にはある!」
「その子は悪魔よ、わかってるの!? 成長すれば、街一つ滅ぼすほどの脅威になるかもしれないのよ!?」
少女はなおも剣を向ける。その切っ先はエマという少女の目と鼻の先まで来ていた。
「悪魔は……、涙なんて流さない。この子の訴えには魂があった。だからこの子は私が救う!」
「あんた、責任取れるの?」
「取れる方法は、あるよ」
エマが俺の方を振り向き、しゃがみ込む。
「ねぇ、君。私に、仕える気はない?」
エマは、眩しい笑顔で俺に手を差し出して来た。
Chatさんの感想w
かなり良くなってます。
これはもう「テンプレ導入」から一段上がってますね。
特に大きいのが、
“悪魔なのに泣く”
ここ。
この瞬間に作品のテーマが立ち上がってます。
何が良くなったのか
前の版は、
転生
能力確認
サバイバル
で終わってた。
つまり「設定説明」だった。
でも今回、
悪魔として殺される理不尽
を主人公が実際に味わった。
これで物語になったんです。
特に強い部分
① 「悪魔に生まれたことがそんなに悪いのかよ!」
ここ、めちゃくちゃ核です。
あなたの作品って結構一貫して、
否定された存在
居場所がない
それでも生きたい
がテーマですよね。
エアリアもそうだし、 テアもそう。
今回もそこに繋がってる。
だからこの叫び、 あなたの作家性がちゃんと出てる。
単なるなろうテンプレじゃなくなった。
② エマ登場が強い
ここすごく良いです。
特に、
「悪魔は……、涙なんて流さない」
これ。
ただの“優しい子”じゃない。
彼女なりの信念で動いてる。
だからヒロインとして立つ。
③ 「使い魔契約」が自然
これ上手い。
無理やり感がない。
普通、
「悪魔を仲間にします」
ってかなり強引になりやすいんですが、
聖女だから救いたい
でも危険視される
だから責任取る方法として使い魔契約
という流れになってる。
理屈が通ってる。
一番良いのはここ
主人公が反撃しない
これ、めちゃくちゃ重要。
普通のなろうだと、
「舐めるなぁぁ!!」 ↓ チート無双
になりがち。
でもこの主人公、
心まで悪魔になんか、なりたくない
なんですよね。
これがあるから、 読者が主人公を好きになれる。
さらに良くできるポイント
ここからは“かなり細かい調整”です。
① 戦闘開始を少し早くしたい
今、
1ヶ月生活
ウサギ狩り
調理
が結構長い。
もちろん生活感は出てるんですが、 読者が求めてるのは「人間との遭遇」なので、 少し圧縮できる。
例えば。
それから一ヶ月。
木ノ実を食べ、洞窟で眠り、時には小動物を狩って生き延びた。
そしてその日、初めて獲物を仕留めた俺は浮かれていた。
↓
即ウサギシーン。
これだけでかなりテンポ良くなる。
② 剣の子をもう少し怖くしたい
今ちょっとテンプレツンツン系です。
でもこのシーン、 主人公から見たら“処刑”なんですよね。
だからもっと冷酷でいい。
例えば、
「悪魔に情けなんて必要ない」
とか、
「見逃した悪魔に村を滅ぼされたことがある」
とか。
相手にも理屈があると、 世界観が立体的になる。
③ エマの“異常さ”を少し出す
今かなり正統派聖女。
でも、
悪魔を庇う聖女
って普通にヤバいんですよ。
だから周囲が、
「正気!?」
となるくらい、 彼女の行動が異端だともっと映える。
④ ラストがかなり良い
ここ本当に良いです。
「ねぇ、君。私に、仕える気はない?」
これはちゃんと“1話のゴール”になってる。
前の版は、
「森で生きます」
で終わりだった。
今回は、
主人公の居場所
ヒロイン
今後の方向性
全部提示できてる。
かなり強い1話になりました。
総評
かなり「作品の核」が見えるようになりました。
特に良いのが、
「悪魔だから殺される」
と
「それでも救おうとする聖女」
この対立。
テーマがシンプルで強い。
あとあなた、 やっぱり“救済”を書くと強いですね。
エマが主人公を庇うシーン、 かなりあなたらしさ出てます。




