部分鎧・完全鎧・素材や形状
防具の代名詞。
鎧について。
鎧についてとか言って服も一部取り上げていますが、そこはまあご容赦お願いします。
なおローブやマントについては、この項目では取り扱いません。
鎧です。
いわゆる身に纏う防具です。
防具とは、体を害から守る為に有るもの。
害とは暑さ寒さだったり、ウイルスだったり、放射線だったりも含まれています。
そういう意味では防寒具や消防服、防護服や宇宙服も立派な防具と言えるでしょう。
広い意味で言えば、料理で跳ねる食材の汁や調味料なんかの液体から守るエプロンも、そうなのでしょう。
単純な胸当てから、全身隙無く覆う鎧まで。
素材も厚手の綿や生き物の革、金属等。
様々な試行錯誤を経て、防具は生み出されてきました。
それらの代表的な一部を雑に取り上げてみます。
部分鎧
部分鎧とは、鎧のパーツそれぞれで独立している物です。
ゲーム的に言えば、防具の装備可能枠として 頭・胴・腕・足 に別れていたりしますよね? つまりそう言った物。
そう言った部分鎧を使い、人体の急所を重点的に守る様な部位だけにして動き回れるよう図ったモノは、軽量鎧……つまり軽鎧とも言われる。
完全鎧
部分鎧とは違って、全てセットになっている鎧です。
ゲーム的には一つの装備で、防具の装備可能枠の全部が埋まってしまう全身鎧と言った方が分かりやすいかもですね。
まあ装備枠が 右手・左手・体・装飾 なんて極端なゲームだと、防具の装備可能枠はひとつだけなので、その場合は完全鎧しか存在しない世界になりますが。
兜
英語ではヘルメットとかヘルムとか言われる物。
人間にとってかなり重要な機能が集約されている頭を守る、かなり重要な防具です。
頭に被り、落下物や意図した頭部への攻撃から守る目的と機能を持っています。
鳥の嘴みたいな出っ張りが有るなら、それで頭突きを仕掛ける汚い手段もアリ。
“勝って兜の緒を締めよ”の言葉通り、大抵の兜には緒(縛り紐)が付いていて、これをしっかり縛らないと兜はキチンと機能しません。
兜を叩かれて、その衝撃で脱げ落ちました! なんてなったら兜の意味がほとんど有りませんので。
オープンヘルメット
顔が出る兜のこと。
バイザーで目が隠れていても、口が出ていればオープンヘルメットの範囲内 (らしい)
クロースヘルメット
フェイスマスクを付けて顔を守り、喉までカバーが付いている、防御力の高いヘルメット。
顔を守る目的が有るので、結果としてフェイスマスクの隙間越しに見る事になって、視界がとても狭くなるのが欠点。
ヘルメットのバイザーで小ネタ
雑学本にありましたが、現代で使われる敬礼のひとつ。
バシッと直立して、コメカミ辺りに手をビシッと伸ばして添えるアレ。
あの敬礼のポーズの原点は、兜のバイザーを持ち上げる騎士の姿だって話です。
……本当かどうかは知りませんよ? そんな話があったなぁ~ってだけなので。
ティアラ……と王冠
防具……として扱われる事もありますので、ここでちょいと小ネタを。
ティアラは女性用の物では無いです。
王様なんかもしてます。
なぜなら、王冠なんて重いものをずっと被っていられないので。
王の威厳の為に、金と宝石をゴッテゴテに盛りに盛ったやつが、軽い訳が無いので。
その王冠を簡素化した物がティアラです。
ついでに言えば、ティアラを付けられる=王家(又はそれ並に偉い身分)の構図にもなる。
正式な式典とか、重要な場面では王冠。 正式でも、それほど重要度が高くない式や、長時間かかると見込まれる会議なんかの時にはティアラです。
さらに踏み込むと、パーティーなんかにティアラで王様が現れた場合は、少し羽目を外してもいい場面。 気を楽にして良い。
そう言う場所だと言外に示す事も可能です。
後は国内の遠方地。 王冠なんて大切な物を運んでいて、壊してしまってはよろしくないので。
だが例外も。
王都から離れた国の聖地とかで重要な儀式をするなら必要でしょう。
他にも他国の者と会うために遠出するなら、壊れるリスクを負ってでも、見栄えや威厳や誠意の為にも持って行く事は有ると思われます。
鉢巻
これはちょうど額にくる部分に金属を縫い付けてやると簡易的な兜となりますが、西洋にもダイアデムって名前で似たような“冠”があるとか。
日本の兜
オープンかクロースかの分類が面倒なんですよね、これ。
日本のには面頬と呼ばれるマスクがあります。
これは兜の付属品とも言えるし、兜のパーツのひとつとも言えます。
なので、どうにも扱いが……(お目目グルグル)
籠手
ゴーントレットとも。
まんま、手を守る部分鎧です。
手を覆う物なので、各指や手首の関節が動かせる構造が必要となり、複雑なパーツであると言えます。
まあ防具だから硬い素材でできてる場合も多く、身に付けた鋼鉄の拳で殴ってやれば痛みを与えられるでしょう。
二の腕を守るパーツは二の腕当てとか言うそうで。 又は単純に腕全体の防具として、腕甲。
それで、胴鎧と一体化して上腕を守る部位は スリーブ だそうです。
脚甲
グリーブですね。 足を守る防具です。
なぜかブーツと呼ばないようで。
鉄製なら鉄靴です。 これで蹴ってやるだけで、アホほど痛い思いを相手に与えられるでしょう。
……まあ現代の感覚では、ブーツと言えば革製の靴なんで、あまり馴染みにくいのかも知れません。
胴鎧・胸甲
ブレストプレートと言えば良いでしょうか?
いや、ブレストガードの方が良いですかね?
まあぶっちゃけ、胸から腰辺りまでを覆う防具です。
こう言った物は“前面”と“背面”に分けられていて、体を挟んで金具やベルトなどで固定して身に付けるらしいです。
鋼鉄の抱擁。 硬い壁に押し付けられる地獄、味わってみます?
胸当て
胸に当てて、身を守る物です。
……なんてひどい解説じゃあ駄目ですね。
人間の究極の弱点のひとつ、心臓の保護しかしない防具。
又は弓を射る時に、弦が胸を打たない様に自傷を防ぐべくつける道具。
背中側は縛って固定するためのヒモとか帯しかないので、背中側の防御力はほぼありません。
…………いや、前半分も防御範囲は最小限だから、前半分も防御力があると言い切れないのですが。
守りが最小限なので、攻撃を受けない者か、気休めやお守りみたいな物として付けているか。
なにせ中世最強の鎧だったとしても、銃には勝てませんでした。 むしろ重い鎧を着てノタノタとやってくる敵なんて、良い的でしかなかったそうな。
なので、胸当てみたいな最小限の防具だけ身に付けて、動き回って攻撃を避ける方向にシフトしたらしいです。
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布の服 又は クロースアーマー
最弱の防具の名を欲しいままにする名称。
守れるのは、日常のちょっとした衝撃や植物のトゲ程度。
旅人用の服は、厚手の生地で縫った物なので丈夫。 それ位。
それでも厚手の服はクロースアーマーに分類されていて、防具と呼べなくもない。
だけど、ちょっと待ってほしい。
一体誰が、これ一枚だけ着ろと言った?
都合によっては2枚3枚を重ね着するのが限界って人も居ないではないけど。
でも大体は、金属の鎧を地肌の上に着ないでしょう?
地肌に直接着てしまうと、肌荒れ・アレルギー・なにより炎や氷や雷等のダメージが直接肌に来るし。
極寒の地では、肌に直接張り付いてしまう恐れもありますし。
逆に鎧の上に模様付きを羽織って、敵味方の識別に利用したり。
重ね着すればイケるじゃないか。
なお、サーコートやタバード と呼ばれる種類がそうで、サーコートは鎧の上から着る服で、タバードは鎧の上から着るコートだったとか。
なので、下の鎧コミコミでサーコートやタバードと呼ばれる場合もあって油断ならないのだ。
ソフトレザーアーマー
素材となった動物の皮が固くならないようなめした革を使った鎧。
動物の皮だからといって、侮るなかれ。
現代でもレーシングスーツなんかで、素材として使われているのを知ればどれだけ頼りになる物なのかは分かるでしょう。
なめし革の魅力は、静音性の高さ。
ただの服じゃあ心許ない、金属鎧じゃあガチャガチャ言って隠れられない。
でもこのソフトレザーアーマーなら物音はそれほど出ないでしょう。
なので斥候職の防具に最適であると言えます。
革なんて防具になるのか、ですか?
ファンタジー世界には、魔物皮なんて素材もありますからね。 なんなら魔法を込めた魔法の品にすれば普通の革でも、魔物の革に施せば余計に。
それらを使えば鉄や鋼なんかより強い防具を作る事だって可能ですよ。
ハードレザーアーマー
オイルやワックスなんかで煮て固めた革を使った鎧。
固めた革は金属の鎧に近い能力があったとかで、代用品として十分に使えたとか?
ただ固くなったと言うことは、ソフトレザーほどには柔軟性も隠密性も無いので、動きにくくなるのは理解しましょう。
革は手に入りやすいし、非金属なのでお手いれは簡単。 購入コストも維持コストも、鎧の重さだって軽いのはかなり魅力。
駆け出しの近接戦闘をする冒険者なんかは、これを着ることが多いのでは無いでしょうか?
なめし革を何枚も重ねて作った物をハードレザーに分類する場合もあるそうですが、あえて固く煮た革のみでこちらを紹介。
皮・革の値段
家畜や狩り、加工する職人の数等が人口の比率の関係から今より安く手に入れられたんじゃないか?
そんな話を本で読みました。
なので自分も、それに乗っかってます。
リングアーマー
リングメイルとも。
まず言っときます。
大きな輪っかを斜めにかけた防具では有りません。
魔法をかけて、鎧並の防御力を持つ結界を体に纏わせる指輪かもしれませんが、その場合は“アーマー(オブ)リング”とした方が良いかもしれません。
現代の歴史の資料に、肩掛けかばんみたいなリングを防具にした記述は、資料にした物によると見つかっていないそうなので。
……記録に残らぬキワモノ防具として、存在はしていたかもですが。
ではどんな防具かって言えば、金属の小さな輪っかを服やソフトレザーアーマーの表面に、沢山縫いつけた物です。
服やソフトレザーアーマーよりは多少防御力はあるそうですが、金属は穴だらけなので槍や矢には弱く、縫い付けられているので受ける衝撃はそのまま着用者へ届きます。
金属鎧とするには中途半端で、ソフトレザーアーマーの柔軟性や静音性をダメにする、なんとも絶妙に微妙なブツ。
スケイルアーマー
スケイルとは鱗の事。
で、このスケイルアーマーで使う鱗が何かって言えば、鱗形の金属片。
リングアーマーみたいに、ソフトレザーアーマー等に鱗状の金属片をビッシリと鋲・リベットで留めた鎧を指すそうです。
なおその留める際に金属片の頭だけ留めてやれば、正に魚の鱗みたいなスケイルアーマーが出来ます。
10世紀頃? の海賊が角付き兜に片手斧にスパイクシールド、そしてこのスケイルアーマーを着ているのが簡単にイメージ出来るでしょうか?
そのヴァイキングが着ていたのは“ビルニー”と呼ばれていたそうです。
このスケイルアーマーは金属片を密集させていますので、とにかく重い。
リングアーマーみたいに穴が無いのでなおさら。
ただスケイルは1ヶ所しか留めないので、体を動かす邪魔には重さ以外は無かった様子。
なお密集させた結果として金属片同士がよくぶつかってジャラジャラ鳴るので、隠密性は全く無い。
大体のコレの扱いはチェインメイルより弱く、安く、そして重い。
金属片をリベットで留めるだけなので簡単に作れるから安いのは理解できる。
余談だけど、そこらの金属より強靭な鱗を持つ魔物の、その鱗を素材とすれば話は変わる。
そう、ドラゴンの鱗とかを使えれば。
現代のスケイルアーマー
今も実在していると言えます。
それは何かと言えば、スパンコール。
あのプラスチックとか金属片なんかを、服やドレスにジャラジャラと付けた、光が反射してまぶしいアレ。
アレをビッチリ付けている姿は、まさにスケイルアーマー。
ラメラーアーマー
小札・ラメラーと呼ばれる、長方形で小さな金属の板を隙間無くソフトレザーアーマー等に縫い付けた物。
別名で金属の小片を使っている所から、スプリントメイルとも言われるらしい。
スケイルアーマーとは違って、金属を完全に縫い止めているのでかなり固く、運動しにくいらしい。
逆に縫い止められているので金属同士があまりジャラつかないので、出る音がスケイルアーマーよりは静かだそうです。
歴史的にはチェインメイルより前の鎧らしく、やはりチェインメイルより防御効果は弱いって話。
ただ、チェインメイルにラメラーを組み込んだ場合はさすがにこちらが上。 その分重くもなるけど。
実は日本の戦国時代なんかの鎧も小札が使われていて、ラメラーアーマーの一種とも言えます。 気になる方は、小札鎧 で検索をどうぞ。
バンデッドアーマー(メイル)
山賊・野盗アーマーでは無いので、そこは本当に注意。
山賊や野盗が身に付けてそうなのは、多分毛皮アーマーじゃないかと。
……いや、むしろ毛皮の服?
これも“その他武具”の項目で説明した、帯を使った鎧だからバンデッドメイル。
服やソフトレザーアーマーに、要所を金属を叩いて作る帯で補強した鎧です。
防御能力はやはり低い。 金属といっても、巻いたのが薄い帯ですからね。
これもチェインメイルに巻いた物になれば、チェインメイルより強い鎧扱いになりますが。
チェインメイル
板金加工技術の向上で、板金アーマーが世に出るまで最強だった(らしい)鎧。
頑丈で(金属鎧としては)軽く、構造的に動きやすい。 万能感すら感じられる鎧。
日本では鎖帷子と呼ばれている頼もしい逸品。
針金を棒に巻き付けて作った輪っかを、鎖みたいに繋げてリベット打ちした鎧。
当時、これに有効な攻撃を加えるには、メイスによる渾身の一撃か、恐ろしく鋭く研ぎ上げた槍による一突きかが必要だったとか。
なので最終的には、格闘戦で組伏せてチェインメイルを捲りとり、短剣で急所をブスリとやらないと勝てなかったそうな。
時代に合わせて様々な形状が有るけど、プレートアーマーが出現して主流になってからも、プレートの隙間を補強する素材として頼りにされ続けたとか。
なお唯一? の欠点は、着るタイプの鎧共通の悩み。
鎧の重みが肩へ集中するって所だけ。
部分部分で独立して各部へ取り付けるタイプは、重さの負担が各所へ分散するのでむしろ軽く感じたりするらしい。
プレートアーマー(メイル)
中世最強の鎧である、プレートシリーズ。
チェインメイルでも守れない攻撃が増えてきた事で、更なる防御力を求めて出来た防具 (らしい)
鉄板から打ち出す板金加工により生み出された。
西洋甲冑とか騎士鎧とか等とは違い、こちらのベースはチェインメイルで、その上に人間の急所と言う重要な部分の防御を厚くするべくプレートを取り付けている感じになる。
これの利点は、後述の鎧より軽くて動きやすい事。
全部板金なんて重すぎて、旅する冒険者にとっては過剰で過重な品。
なので、一般的な防具の内で頑丈さと装備し続けられる要素で見れば、これが最良となる(とかなんとか)
フルプレートアーマー
騎士鎧やスーツアーマーとも。 なんなら西洋甲冑の方が分かりますかね?
全身鉄板で形を作り、組み上げられた鎧です。
ヒトの動きを邪魔しない機械的な仕組みを付けていて、案外動きやすいらしい。
しかしその仕組みから、どうしても出来てしまう関節部の隙間には、当然の如くチェインメイルが補強として使われている。
非常に頑丈なのは言うまでも無いです。
が、完全に金属の塊なので、兎に角重い。
プレートアーマーの時点で、一般人は重さで動けない位ですので。
フルプレートアーマーを着込んで下手に転けようものなら、立ち上がれないかも? と言われるほど重いそうな。
謙虚な黄金の鉄の塊様みたいな速い動きは、期待できません。 彼は凄まじ過ぎたのです。
重すぎるので、基本は馬に騎乗する騎士が着ける鎧です。
なので騎士鎧。
あと意外?な欠点も。
鉄板から打ち上げるので、完全なオーダーメードにどうしてもなってしまう点。
鎧としてしっかり機能させるには、サイズを測ってキッチリと体に合わせた鎧を作らねばならんわけです。
なのでベコベコに壊れてしまったから装備を手っ取り早く換えようと中古で買ったり他人(やご遺体)から奪ったとしても、鎧師に体に合うよう打ち直してもらわない限り、すぐに使える事はまず無いのです。
とても強い鎧ですが、悲しいお知らせ。
現実の歴史では、中世時代の終わりには登場していた銃に撃ち抜かれてしまう代物です。
重い鎧を着込んでえっちらおっちらやって来て、銃に撃ち抜かれて終わり。
防具としての価値は、銃によって終わりを告げられました。 悲しい最期ですね。
銃が登場してしばらく経つと、鉄と火薬の量が物を言う時代となります。
その頃(兵の誰もが銃を手にして戦う時代)になると、鎧なんか簡単に貫いてきて、鎧の実用的価値は無くなります。
それまでの存在では有りますが、美術品的価値は有ります。
格好いいです。 それを着て存分に暴れまわる事がロマンに見えてきます。
その夢を叶えてくれるのが、中世風西洋ファンタジー世界の魅力のひとつでしょうね。
なお、火縄銃程度の時代でしたら、竹束で案外防げちゃいます。
距離があれば、水で濡らした暖簾や陣幕で止められたりしちゃいます。
だから何? って余談だけど、書きたくなったのでこそっと失礼を。