表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/11

近未来百年史(8) 外国と日本

 西暦2125年。日本の総人口はおよそ4千万人となった。


 国内の百万都市は18。東京、大阪、横浜、名古屋、京都、神戸、浦和、札幌、仙台、広島、福岡、岡山、北九州、千葉、新潟、浜松、姫路、松山。これらの各都市の人口はそれぞれ150万人程。東京と大阪は300万人を抱えていた。この他に十万都市が日本中に100箇所ほど存在した。約1万人が都市以外に住み、主に一次産業に従事していた。


 日本における人型ロボットの総数は、人口の約3倍となっていた。多くのロボットが様々な労働の現場に投入され、社会を支えていた。


 日本人には1人につき2体のロボットが政府から支給され、その人間の専属となった。1体は家事を担い、もう1体は常に人間に同行して秘書代わりとなるのが通例だった。


 買い物の際は同行している秘書ロボットが代金を支払った。ロボットには決済機能が搭載され、店員ロボットとの間で自動的に認証・決済された。


 買い物の現場で人間がお金を意識する事はほとんど無かった。預金や不動産その他を含め、個人の財産はすべて秘書ロボットが管理していた。収入と支出については、秘書ロボットから人間へ毎日報告され、人間も把握していた。


 生活費と小遣いへの振り分けや、重点的支出項目の選択などについて、人間と秘書ロボットの間で議論され、決定された。遊興費などは予算を超過し易い項目だったが、予算の管理も秘書ロボットが行い、超過は事前に警告されたりした。


 国内の物価は極端に安くなっていた。日本国内に居る限りにおいて、日本人はベーシックインカムのみで余裕のある生活を営む事が出来た。


 ロボットによる社会の維持と管理、働かなくても保障される人間の生活。この状況でなお社会の主役は人間であった。このような日本の社会は世界の注目を集めた。世界の識者が日本を視察し、様々な形でレポートを提出した。


 しかし結局、日本のような社会を目指す国は現れなかった。


 日本型社会を容易には実現できない主な理由は、人型ロボットの大量生産と、貧困層に至るまでの大規模な普及、そして全国民の生活保障、これらが経済的に難しいという点にあった。フランケンシュタイン症候群が根強い事も大きな要因となっていた。日本型社会からのロボットの反乱が小説や映画の人気テーマとなり、衆目を集めた。


 そのような状況下で、日本への観光旅行は世界中で人気となった。映画などで知った日本、その聖地巡礼。それだけでなく、物価が安く、治安は良く、社会インフラが整っていて、宿泊施設も多く、ロボットを通訳として世界各国の言葉が通じ、都市を離れれば風光明媚、都市内においても人々はどこかのんびりしていて親切だった。


 旅行者には1グループ1体の案内ロボットが貸与され、買い物などでは支払いを代行した。案内ロボットは貸与期間の上限が3ヶ月と決められて、その後は強制返却となった。


 長期滞在を希望する場合は、3ヶ月で一旦国外へ出て再入国する事で対応した。


 出国して入国するのは、国外を経由する為に、高額ではないがそれなりにお金が掛かった。噂に聞く楽園での新生活を夢見て日本への移住を目論んだ貧しい人々は、3ヶ月後に案内ロボットが強制返却となった後は買い物が出来なくなり、生活が不可能となった。


 日本で難民申請をしても、認定されて定住が認められる可能性は非常に低かった。違法な定住を試みても、そもそも人間の仕事が少ない上に賃金は極端に低かった。何より、政府支給のロボットを付けてもらえなければ決済手段が無く、賃金の受け取りも買い物も出来なかった。


 日本は夢の国だが財産が無ければ命も保証されないと揶揄された。これは選民思想の合法的実現に他ならない、黄金の国ジパングの闇、などと世界中から批判された。しかし日本政府の公式な対策としては非合法な移民ブローカーの摘発だけだった。不法滞在について状況が斟酌される事は殆んど無かった。

不法滞在が発覚すれば情け容赦無く国外追放となります。しかし政府が積極的に捜索と摘発に動く事は滅多にありませんし、ロボットにも危険な兆候の報告義務はありません。従って、自力で周囲に保護を求めて日本人に匿われれば、そのままになります。経済によって生活する都市では難しいですが、自給自足の農村なら可能性はあります。そしてそれこそが政府の主要な難民救済策であり、ロボットを通した国民管理を一切しない大きな理由です。

…という裏設定もありますが、管理社会にしない理由としては弱いですね…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ