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第3話

短いです!

「せんぱぁ~い!!」


突然響いたニコルの声に夜襲を警戒する。そんなに人の気配はないようだが、こんな真夜中に何事だ!?


「どうした!?」


窓を開けるとニコルが中に入ってきた。言っておくとここは二階で、ニコルは獄卒の身体能力を生かして壁を登ってきたらしい。門番は何をしていた?と言わないでやってほしい。こいつも腐っても獄卒なので、驚異的な身体能力で人間の目をちょろまかして、家宅侵入するくらい朝飯前なのだ。ニコルはやや緊張した面持ちで、私も何事か大事があったのでは?と緊張する。

ニコルは震える唇を開いた。


「で、デートしてくださいっ!」

「……。」


私は無言でニコルを蹴りつけた。


「いたっ!なんで蹴るんですかあ…」

「こんな夜中に乙女の部屋にやってきて要件は『デートしてください』だあ?どんな非常事態かと警戒したのに!このアホンダラ!!」


もう一度蹴った。


「あたっ!す、すいません…思い付いたらすぐ言わなきゃならないような気がしてしまって…」

「子供か!」

「子供じゃないっす!もう立派に子作りでき…いだだだだ!抓らないでくださいいい!!」


来てしまったものは仕方ないので椅子を勧めてやる。ついでにお茶を入れてやった。


「先輩。このお茶苦いっす。」

「文句を言うな。」


家事とか、そういうのは苦手だ。


「なんで急にデートしようなどとふざけたことを思い立ったんだ?」

「ミレディさんが来たので『どうやったら先輩に僕の赤ちゃんを産んでもらえると思うっすか?』って聞いたら『犯せ』って言われたっす。」

「ほう?」


ミレディには少々お仕置きが必要なようだな。


「でも僕は無理矢理とか好きじゃなくて…」


それが好きだったらお前本人が地獄落ちするところだな。


「こうもっとロマンチックに先輩に愛されたくて…どうしたら愛してもらえるだろうって考えてたんっす。そうしたら、昔読んだロマンス小説に男女二人がデートして、綺麗な風景を見て、楽しんで、ちょっとずつお互いを好きになってくってやつがあったのを思い出したんっす。僕も先輩とそういう恋できたらいいなあって思って…」


なんだか素通りできなさそうなので聞くしかない、と腹をくくる。


「まさかと思うが、違うと思うが、一応聞いておく。……お前、私のことが好きなのか?」


ニコルは不思議そうに首を傾げた。


「普通好きな女の子にしか『僕の赤ちゃんを産んで欲しい』って思わないっすよね?」


なんでそうピュアなんだ。世の中愛してなくても『キモチイイから』種付けしたいと思ってる男がごまんといるんだぞ?

そうは思うものの……私は今ストレートに求愛されている…と思うと顔面に熱が…私を只の令嬢だと思ってる男からじゃなくて、地獄の獄卒だって十二分に理解してる奴からの求愛……やべえ!なんかやべえ!顔あっちいよ!!

ニコルが私の顔をじろじろ見てくる。


「見んな!くそっ。」

「照れてる先輩も可愛いっす。」

「ウルサイ。」


私はニコルの足を踏みつけた。


「そういうわけで、デートしてほしいっす。」

「イヤダ。」

「そう言わずに。絶対!絶対!楽しいデートにしてみせます!」


ニコルがフンス!と鼻息を荒くして言った。


「……お前、私のどこが好きなんだ?」


顔か?


「魂の色が綺麗っす。燃えるようなくれない色。純粋で苛烈で弾けそうな火花みたいな綺麗な色っす。性格も好きっす。普段ツンケンしてるのに、ここは!ってところでは絶対に優しくて…僕みたいな間抜けのことを自分の身を呈して助けちゃったり、先輩が自分の担当してる死者が早くカルマ値を削れるようにって一番早くカルマ値が削れるコースを悩みに悩みぬいて決めてることも知ってるっす。他の同僚が捌ききれなかった仕事を、寝る間を惜しんで手伝ったり、僕みたいな危なっかしい新人の指導は率先してやったり、そういうの格好いいなあって。同時に自分の身を削りすぎてるところがちょっと危うい気がして、実はいつも心配してます。デスクワークで疲れて居眠りしちゃうことも多いみたいだし、でも先輩の仕事を手伝ってあげられるだけの能力は僕にはなくて、いつも毛布を掛けてあげることくらいしかできないんっす…。あ、見た目も勿論好きっすよ?ぱっちりした灰色の瞳は吸い込まれそうだし、ふわふわのミルクティー色の髪は柔らかそうで、いつも触ってみたいなあ…って思うんっすけどやったら叱られそうだから我慢してるんっす。唇なんて果実みたいで、むしゃぶりつきたいと何度も…」

「もういい。」

「……。」

「……デートな。楽しくなかったら次はないと思え。」


ニコルがぱっと瞳を輝かせた。

最近デスクワーク中に居眠りしてしまうと必ず毛布がかかっている謎があっけなく解明されてしまった。犯人はこいつだったらしい。

予想以上に熱愛されてて頬が火照る。奴の目がまともに見られない。デートまでには平常心に戻ってるといいんだが…。


「じゃあ、1週間後!迎えに来るっす!楽しいデートにしましょうね!!」


やつは見るからにウキウキと浮かれて帰っていった。浮かれるあまり、ここが2階なのを忘れて窓から空中を踏んだほどだ。慌てて捕まえてやったけど。地獄の獄卒とはいえ、今は人間の体だ。無茶をすれば怪我もする。ちょっとは気を付けて欲しいものだ。



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