キーパーソンの登場
キャサリンの家族と国王との密会は無事終わり。新たな幕開けである。第一関門である、王子との婚約回避の達成と家族との信頼関係も回復したキャサリンたちの前に、ゲームには出てこなかった人たちが、登場する。
キーパーソンの登場
家族の団欒の席で、パパンが突然、祖父母が帰国することを告げた。
”お父様、お祖父様とお祖母様にはお会いするのは初めてですので、とても緊張します。”
ライアンは一瞬、微妙な顔をしたが、直ぐ持ち直し、
”そうだったね。父母がキャサリンに会ったのは、一度だけで、キャサリンが生まれた時だからね。ラルフも5歳だったから、あんまり覚えていないかもしれないね。”
(パパン、一瞬、なんか微妙な顔だったけど、私の見間違いかな?)
”勿論、覚えていますよ。お祖父様はとても溌剌とされて、とても引退されるような年には見えませんでした。”
”えっ、お兄様はお祖父様のこと覚えていらっしゃいますの?”
ここで、ラルフも一瞬微妙な顔になった。
(おにいまで、一瞬微妙な顔になったような。???)
”ああ、私が五歳までこの屋敷の別館に住んでおられたから、お祖父様にもお祖母様にも大変よくしてもらっていたよ。”
(じゃあ、この中で、彼らのこと知らないのは私だけ。なんか、仲間はずれにされた気分)。
落ち込んでいると、
”キャッシーの誕生にもとても喜んでらして、真っ先にお祝いの場を整えていらしたよ。たくさんの贈り物も用意してね。”
(でも、その時から、一度も会いには来てくださっていない。私は顔も知らない。)
”キャッシー、お祖父様もお祖母様もとても君に会うのも楽しみにしているよ。もちろん、ラルフにもね。”
”お祖父様たちは、第一王子の誕生と同時に(いかにも待ち構えていたように)、私に家督と宰相の職を託し(押しつけ)、お二人で諸外国を外遊しに行ってしまったのだよ。本当に、王子の誕生から一週間で、飛び出していってしまって、今まで、音信不通だったんだよ(用意周到もここに極まれリだったな)。”
パパンが遠い目をしながら続ける。
”ラルフが生まれた年から、私を宰相補佐に任命して、不可測なく引き継ぎを行い、着々と旅に出る準備を両親揃ってしていたのだよ(本当に素早かった。誰も反対する暇さえ与えず押し切って逃げ切ったのだから)。”
”お会いするのがとても楽しみです。”
とにっこり笑うとみんなとても嬉しそうに抱きしめてくれた。
祖父母が帰国する前にすべき事
まだ会ったことがないけど、肖像画でみた二人をおじいちゃん、おばあちゃんという前世の呼び方では呼べない。グランパとグランマでイイかもだけど......ちょっと長いな。一先ず、ナナとパッが良いかな?それとも、祖父、祖母?でも、本人たちに会ってから、決めよう。
でも、彼らが到着するのは三ヶ月後だと、パパンは行っていたけど...何なんだろう...この焦燥感。頭の中で、何かに追い立てられるように、すべきこととして、サブ画面の思い出しとそれを書き残す事が、デカデカと書かれている。なぜかは分からない。でも、やらなきゃいけない...よね。心がザワザワしてる。終わるまで、この警戒みたいなものは収まらなさそう。
今は、なぜを考えるときではない。ただ、やるべき時。
一枚目戸二枚目から、ヒロインとヒロインの母親の手口は大体分かった。ヒロインの母親よりも、ヒロインが悪質なのも分かった。ヒロインは相手を魅了して操るだけでなく、完璧に冤罪をかけるため、自分の能力である遮断と収納を用い、目撃者まで揃える用意周到さを見せていた。これだけでも、かなり悪質だ。
この次に出てきたものは?
3つ目のサブ画面
あれは秋のイベントで、ホームカミングパーティみたいなものだった。舞踏会よりも、もっとカジュアルで、歓迎会みたいな感じのダンスパーティだった。
私は当たり前に、婚約者である第一王子にエスコートされている。初めのダンスを踊った後、友人達との歓談。そこでヒロインの登場。何故か、二人が踊るシーン。なんだろう。メインの話が思い出しにくくなってる。サブ画面のシーン、二人が踊っているシーンは明瞭なのに、それ以外が、なんかモヤがかかったみたい。もしかして、記憶が薄れてきているのかも...ちょっと、急いだほうが良いかも。
あのシーンの右端に三枚のサブ画面があった。
1つ目は......脳内で拡大してみると、よろめくヒロインを男らしく受け止め支える第一王子様。ヒロインはそんな王子様を恥じらいつつしっかりと見つめる。なんか、目の色が変?メインで見るヒロインの目の色ではない。なんか黒というか暗黒を思わせる色。恍惚とした目でヒロインを見つめる王子様。外から見ると、とてもロマンチックなシーン。でも、このヒロインの目と王子の表情。なんかヤバい。前世でも、ゾッとしたのを思い出した。ふたりとも笑っているのに底冷えした感じで体が震える。
2つ目:王子様が私をまるで汚物のような目で見据え、ヒロインがその横で腕を組んでいる。そのヒロインの表情が......怖い。人ってあんなに怖い笑顔で人を見下せるんだね。なに、いかにも優越感丸出し、奴隷でも見ている特権階級の人みたいな。そして、笑顔なのに目が笑ってない。いかにも、消すわよ!とでも言っているよう。この人、本当に怖い。なんか、まるで虫にでもなったみたいに、潰されそう。
3つ目:いきなりヒロインのドレスが汚れて、それを嘆くヒロイン、そして、彼女を庇い、私を糾弾する王子。呆然と立ち尽くすゲームの私。空のグラスが何故か、私の足元に転がっている。
ちょっと待って、もう一度、2つ目を見ると、ヒロインの手には...違う...手の後ろにある収納にワインが入ったグラスが......
もしかして、これを浴びせられたの!でも、何故か、私が彼女に浴びせかけようとした犯人で、責められている?なぜ?そして、私の足元には何故か、同じグラスが転がっている。
王子に気付かれずにどうやって。王子は完全に私を犯人扱いしている。
もう一度、1つ目を見直すと、この見つめ合うシーン。何故か、ゾットする。ロマンチックなシーンのはずなのに。なぜ?
もしかして、’暗示’なの?ヒロインは魅了だけでなく、暗示まで使えたの?この見つめ合いは、実は王子に暗示をかけているの?
なんか、このシーン、順番がバラバラなの?もしかして、重要度が高い順?
ヒロインが王子に暗示をかけて、自分のドレスを自分で汚し、それを私のせいにしたの?
なんなの、このヒロインただでさえ、厄介な性格なのに、それに加えて、こんなに色んな能力があるなんて。もちろん、罪悪感なんか一ミリもないみたいだし。相手を陥れて、自分の優位を誇示。そして、自分以外を使って相手に攻撃させ、自分は被害者気取りで、高みの見物。
本当に怖い人。彼女にとって、私は虫以下なのかも。あのような強力な暗示が使えるなら、人を殺すことなど朝飯前だろうね。でも、彼女は一息で殺すより、ジワジワと責め、いたぶり殺すのが趣味なのね。
この暗示、魅了や、遮断と収納よりも、更に厄介かも。う〜ん。
......確か、おにいが言うことには、遮断と収納は同じ遮断の能力がある人には探知できるはず。ゲームでは、ヒロイン以外使えなかったから、彼女は使い放題だったはず。
現在、おにいが使える。確か、影の人たちにもいたよね。遮断だけだったかな?
私も使えるようにならなきゃ、だね。頑張ろうっと。
でも、この作業、本当に疲れる。もう、寝よう。私は意識をそのまま失い、深い眠りに。
それから、三ヶ月はあっという間に過ぎた。
私は益々、前世のことを、特にゲームに関することを思い出しにくくなっていった。7つあったサブ画面を5つまでしか思い出せなかった。そして、今日、とうとう祖父母と初顔合わせの日となった。ここ一週間、前世の記憶はまるで封印されたみたいに、あるのは分かっているのに鍵のついた扉に阻まれて、手の届かないものになってしまった。なぜなんだろう。前世の記憶は年とともに失われてしまうのかもしれない。でも、ここ三ヶ月、なんか一気に消滅したみたいなんだけど。
まあ、兎に角、祖父母と仲良く慣れるといいなあ。
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”キャッシー、こちらがそなたの祖父母にあたる。
うわあ~、どちらも素敵!しかも、若い。全然、祖父母に見えない。これが普通なのか。美男美女。美しい!まあ、そうだよね、50歳くらいだもの。全然若いよね。しかも、40前にしか見えないし。お祖母様なんて、30代前半にしか見えないよ。
つい、ぼ〜と見惚れてしまった。挨拶しなきゃ。
”...(はじめまして、は流石にだめかな、お久しぶりもダメだし)。お会いできるのを楽しみにしていました。キャサリンです。”
とても、楽しい家族団らんだった。祖父母はとても気安く、緊張は直ぐ溶け、一緒の時間はあっという間に過ぎた。
なんだろう、外見は西洋人なんだけど、気質が日本人ポイ。彼らのことは祖父と祖母で行こう。
この二人の登場によって、新たな岐路にさしかかった。この二人はあらゆる意味でのキーパーソンだったから。
新たなキーパーソンが登場して、ゲームの内容からかなりずれてしまった感が半端ない現状。このキーパーソンの役割とは?




