抑制されたその感情の名前は、
少年BSIDE
あの娘にはこんなこと思ったことない。彼女なはずなのに。
どうしていまさら気づいてしまうんだ。今更どうしようもないのに。
今、耳に届いた言葉に愕然とする。
がんがんと頭にリフレインするあいつを引きずっていく男の声。
抵抗もしないでどこか幸せそうに半ば引きずられるようにについていくあいつ。
なんでこんなにも痛いんだろう。苦しいんだろう。
あいつに彼氏がいるというだけなのに。ただそれだけなのに。なんでこんなに痛いんだろう。
「ねぇ聞いてる?」
「あ、悪りぃ。」
「さっきからなんか変だよ。どうかしたの。あっ胸でも痛いの?」
「は?」
「だってさっきから胸の辺りつかんで泣きそうになってるんだもん。」
心配そうな顔をして俺の顔をのぞく彼女。
彼女の瞳の中には泣きそうな顔をして胸のあたりをつかむ俺が映っている。
びっくりして胸のあたりをみると制服がばっちりと皺になっていた。
「いや、ちょっとな。」
言葉の語尾を濁すようにそういうともう彼女何も言わなかった。心配してくれたのに悪いなとも思う。
けれど今俺の頭の中にうかんでくるのは不器用に笑うあいつの笑顔、で。
「ねぇ、」
「ん?」
とつぜん彼女が歩行をやめて俺の方を向く。
「私の彼氏だよね。」
誰がなんて聞くまでもない。それは俺に対する問い。ちゃんと答えてやればいい。笑って当たり前だと。
「私のこと好きだよね。」
「当たり前だろ。」
ぽんと艶を帯びたさらさらの髪の毛に手を置く。心からの言葉のはずなのにどうして俺は
―――――――――彼女と目があわせられないのだろう
補足:「抵抗もしないでどこか幸せそうに半ば引きずられるようにについていくあいつ。」というのは少女Aが今まで見たこともない少年Bの表情を見れたので嬉しくて嬉しそうにしています。分かりにくくてすみません。