愛迷エレジー
人間って醜いんだよ。特に私は醜いの。
綺麗な恋なんてないの。そんなのありはしないの。
そんなこと知ってるの。でも―――――逃がしてなんてあげないから。
「ねぇ聞いてる?」
「あ、悪りぃ。」
「さっきからなんか変だよ。どうかしたの。あっ胸でも痛いの?」
「は?」
「だってさっきから胸の辺りつかんで泣きそうになってるんだもん。」
出来るだけ心配そうな顔を造って彼の顔をのぞく。
きっと私の瞳の中には泣きそうな顔をして胸のあたりをつかむ彼が映っているんだろう。
彼はびっくりしたような顔をして胸のあたりをみると制服がばっちりと皺になっていた。
知ってるんだよ。彼の頭の中に心に誰がいるかなんて事。そんなこと知ってるんだよ。
「いや、ちょっとな。」
言葉の語尾を濁すようにそういうともう彼は何も言わなかった。
けれど今彼の頭の中にうかんでいるのはあの娘なんだろう。私じゃないあの娘。
「ねぇ、」
「ん?」
歩くのをやめて彼の方を向く。
「私の彼氏だよね。」
誰になんていうまでもない。それは彼に対する問い。
「私のこと好きだよね。」
「当たり前だろ。」
ぽんと頭の上に手を置かれる。けれど私の顔をちゃんと見てくれないの。
知ってるよ。彼の頭に心に誰がいるかなんて事。そんなこと、とうの昔に知ってるんだよ。
だってあの娘を見ている彼を好きになったの。あんな風に優しく微笑むのはあの娘の前だけ。
だけど、だけどね。だからこそ私は。
―――――彼方のこと逃がしてなんてあげないから。
そして私は今日も気づかない振りをするのです。




