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とりあえず異世界転生  作者: とりてん


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16/16

16.報復と出会い

シャァァァーーーーーッ!、今日も一日、ご安全に!

ベッドから飛び起きる。

今日はバチっと目が覚めた。こういう場合はだいたい緊張して熟睡出来てないんだがまぁええやろ。

ルーティーンをこなし、最近気紛れでやっている適当な魔法を飛ばしマイルームを出る準備をする。魔法についても時間があるときに考えないとな。

そんなことを考えながらマイルームから出る。

外はまだ薄暗いが人は活動を始めているので私も見習う。

広場に行きパンだけ5つほど買って正門の方に向かう。

何事もなく門をくぐり町の外に出る。

ありがとうアンシーの町、走ればそんなに時間のかからない距離なので魚が食べたくなったらまた来るよ。

心の中で別れを言い私は歩き始める。

人の目がなくなったら透過魔法をかけて走るかなと思いながらしばらく歩くが布で顔の半分を覆った3人がなかなか離れない。

まぁ街道に沿って歩いているのでそう言うこともあるよねと思っていたがいい加減面倒になってきたので街道を逸れて草原の方に入る。

これで追い抜いてくれるかと思ったが3人もこちらに続いて草原に入ってくる。

もしかして、尾行されている?

尾行される理由で思い当たるのは魔法がバレたかセイさんが退職するきっかけを作ったことかババァにやり返したことか、うーん、まぁ考えても仕方ないな直接聞いたが早い。

私は振り返って3人に近づき尋ねる。

「すみません、進む道が同じようですのでよろしければお先にどうぞ。」

尾行されているのは私の勘違いかもしれないので丁寧な態度を心がける。

私の言葉を聞いた3人は鼻で笑う。

「はっ、バカが。尾けてたに決まってんだろ。」

よかったー、勘違いじゃなかったー。

私をバカにした男が続ける。

「もう少し奥に行ってからにしたかったが痛めつけてから移動させればいいか、お前ら、やるぞ。」

男が合図すると残りの2人が動き出す。

こいつがリーダーっぽいな。てかこの光景、最近見た気がする。

私は一旦走って奥に逃げながら聞いてみる。

「なぜ私を狙うのですか?」

男達は追ってきながらリーダーが答える。

「お前はある人を怒らせたんだよ。」

はて、怒ったら他人を使ってリンチか?、ダセェな…、本人が来いよ。

私は3人を置いて行かないように速度を調整しながら話しを続ける。

「ある人って誰ですか?、怒ったらあなた達を寄越して自分は椅子に座ってふんぞり返ってるんですか?」

私の挑発にリーダーの後ろにいた小柄な奴が反応する。

「お前がボスの母親に鍋ごとスープを掛けたんだろうがっ!、そのせいでボスが怒って俺達は制裁を受けたんだぞ!」

知らんがな。

「その件でしたらスープを掛けられたから掛け返しただけですよ。というか親が大事なら子供がちゃんと面倒見とけと伝えてもらえます?」

小柄な奴が何か言い返そうとしてリーダーに遮られる。

「理由なんてどうだっていい、お前は始末されて首はボスに届けられるだけだ。言いたいことがあるならそこで言え。」

あれ、こういう場合って痛めつけるだけじゃないの?、殺されちゃうの?

しばらく追いかけられて森に近い人気のないところまで来たので足を止める。

「最後にお聞きしますが人を痛めつけたり、ましてや始末するなんてやめませんか?、ボスとかいう他人に使われて悪いことをする必要はないと思いますよ。」

「命乞いならもっとうまくやるんだな。」

リーダーがそう一蹴しもう逃げられないように3人で私を囲む。

まぁ説得力は皆無だわな、しゃあなし。

「じゃあ冥土の土産に教えてほしいのですがこんな恐ろしいことを命令するボスとは誰なんですか?」

「ようやく誰を怒らせたのか知りたくなったか、命令したのはマウル商会のバータイルさんだよ。賢くなれてよかったな、それじゃあ死にな。」

3人が刃物を手にじりじりと近づいてくる。

はぁ、悲しいな。なんで悪いことをするんだろう。仕方なく?、やらないとやられるから?、まぁ各々事情があるよね。うんうん、ならば私にも事情がある。譲れない思いがぶつかった場合はどちらかが折れるまでぶつかり続けるしかない。それが折れるすなわち死であってもね。

私が考えていると諦めたと思ったのか小柄な男ともう1人が飛び掛かってくる。

私は即座に首を落とす。

残ったリーダーは何が起こったのか理解しようと近づく足を止めた。

慎重だな。

動きが止まったので声をかける。

「逃げます?」

まぁ見られたからには逃す気はないけど。

「舐めるな、ボスの命令は絶対だ。それに部下をやられて逃げるほど落ちぶれちゃいない。」

忠誠心は尊敬するが悪いことをしてる時点で落ちぶれている気がするが、…そもそも悪いことの認識が違うのか?、だとしたらどうしようもないが。

リーダーは手に持ったナイフを投げて低い姿勢で突進してくる。

覚悟を決めたかな?

私は飛んできたナイフを体をずらして避ける。魔法範囲内に入るのを待っているとリーダーは範囲のギリギリで手に持った砂を投げてくる。

ナイフを避けた一瞬視界を外した時に砂を掴んだのか、そのための低い姿勢、すごいな。

1人で納得していると投げた砂で私の視界を奪ったリーダーが一瞬で後ろに回り投げたのとは別のナイフを首に突き刺す。

ナイフは私の首の後ろに突き刺さっているが刃先はリーダーの首の前から出てきており血が首を滴り落ちる。

「なんっ…、だ…、」

首に刺さったナイフのせいでうまくしゃべれずにリーダーは地面に崩れる。

私のナイフの刺ささる位置とリーダーの同じ位置を繋げてみたがうまくいったようだ。名付けて”自らの行いが返ってくる魔法”。…まんまだな。

死体をどうするか考えて、そういえば夜に襲ってきた野盗の死体もあったなと思い出してまとめて処分することにする。ここに放置しておけばスライムが片付けてくれるかとも考えたがその前に見つかる危険性もあるのでアイテムボックス内で焼却して骨を土に埋める。

南無南無、来世ではまっとうに生きろよ。

私の行動が異世界に染まってきた気もするが元々頭がおかしくて異世界に合っていただけかもしれないので深く考えないようにする。

町を出て早速トラブルに見舞われたが気を取り直してオツサの街に帰る。

…いや待てよ、私を狙った不届きものにお返しをしなくては。元々2日は予備にしていたので時間はある。

目的が決まったので回れ右してアンシーの町に戻る。

町への入退場時はギルドカードを見せているので記録されているかもしれない。なので今回は透過してこっそり入ろうと思う。警報とかがあったらそん時はそん時で考えよう。

走って町に戻りそのまま門を通過する。特に何もなかった。

さて急いで戻ってきたはいいがまずはマウル商会とやらがどこにあるのか、バータイルとかいう奴がどこにいるのか情報を得なければ。だが人に聞くのはまずいのでどうすべきか…。

考えていると思いつく。

唯一面識のある関係者はあのババァだ。私の行動がボスとやらに伝わったという事はババァが伝えたか近くに関係者がいると考えられる。なら私が顔を見せるかちょっかいを出せば行動を起こすからそれを見張っていればボスへと導いてくれるんじゃないか。

うん、それで行こう。

早速昨日絡まれたところに向かうと変わらずババァはそこにおり汚い恰好で得体の知らない鍋をかき混ぜていた。

私は透過魔法を解いてババァの前に姿を現す。

私の姿を認識したババァは唾を飛ばしながら喚く。

「あんた!、よくもあたしの前に顔を出せたね!。息子に言ったからあんたが殺されるのも時間の問題だよ!、許してほしかったら土下座して懇願しな!」

物騒なババァだな、というか息子の悪行は親公認かよ。

私は呆れながらもその息子をおびき出す為に行動する。

「土下座なんかする訳ねぇだろ、考えてから口を開けババァ。だが面倒なのはいやだから早々に町を出るわ、じゃあな。」

そう言って再び鍋を収納、からのババァの頭の上で取り出し中身をぶちまける。

「ぎゃぁぁぁーー!」

ババァの転げまわる姿を尻目に建物の陰に隠れ透過魔法を発動して様子を見る。するとババァの悲鳴を聞いた男が数人集まってきて倒れているババァに瓶の中身を掛ける。

ババァは起き上がりすぐに騒ぎ始める。

「あいつが!、あいつがまた来やがった!。それなのにお前達はいったい何してたんだい!。使えないなら息子に言って魚の餌にしてやるよ!」

周りの男達はうんざりしながらも逆らえないようだ。

「あいつはすぐに町を出るって言ってたわ!、お前達はすぐに門まで行ってあいつを探すんだよ!。ぐずぐずするなっ!、早くいけっ!」

ババァが叫ぶと男達は急いで門に向かう。

私がそのまま様子を見ているとババァはどこかに移動を始める。付いて行くと

立派な建物に入っていくので私もそれに続く。

建物の外観は立派だったが中もすごく、高価そうな調度品がずらりと並んでいた。

はぁー、金持ってんなー。

典型的な悪い金持ちに嫌悪感を感じながら中を進んでいく。少しするとババァが建物の奥の部屋に入っていくので続いて入るとそこには小太りの中年、もしくは老け顔の青年がいた。

2人は話し始める。

「ちょっと!、またあいつがいたわよ!。対処するって言ったのにどうなってるの!」

「母さん…、いきなり来ないでくれって言っただろ。それに部下を町の出口で見張らせているから大丈夫だよ。」

こいつが息子か。

「そんなこと言ってまたあいつが私に鍋をぶちまけたんだよ!、あんたが不甲斐ないからこんなことになるんだ!」

「いつも言っているけど屋台で変なものを売るのはやめてくれよ、母さんが騒ぎを起こすたびに衛兵に金を掴ませるのも大変なんだ。」

「変なものとは何よ!、あれはあの人が好きだった料理なのよ!。あそこで待っていればあの人が帰ってくるんだよ!」

「親父が消えたのはもう何年も前じゃないか、いい加減現実を見てくれよ…」

「うるさいっ!、あんたは言うとおりにすればいいの!。誰があんたをここまで育てたと思っているの!」

母親に怒鳴られ苦い顔で黙る息子。

話しを聞いていると息子が不憫に思えてきた。だがしかし、こいつは私に刺客を送り込んできたのだ。心を鬼にしなければ。

とりあえず部屋の中はこの2人だけなので姿を現して話しかける。

「話終わった?」

いきなり現れた私に2人は驚く。

「親のいいなりってのは可哀そうだけど私を殺すために部下を送ったことについては許さん。なんか言い訳あるか?」

息子の方に尋ねるよう視線を向ける。

「お前が母さんにスープをぶっかけた野郎か、どうやって入ったかは知らないがわざわざ殺されに来るとはバカな奴だ。」

息子はゆっくり下がり机で何かを操作する。

言い訳はないってことでいいかな?

外からこちらに向かう足音が聞こえすぐに部屋に入ってくる。

「ボス!」

入ってきたのは屈強な男が6人。

加勢が来て気が大きくなったのか息子が勝ち誇った顔で言い放つ。

「何しに来たかは知らねぇがお前はもう終わりだ、おいお前ら、こいつが俺の母親にふざけたことをした奴だ、とりあえず死なない程度に甚振れ。だが殺すなよ、止めは俺が刺すからな。」

屈強な男達はニヤニヤしながら私を囲む。

最後に一応聞いとくか。

「私はまずは話をしようと思ったんだがそちらは話をする気はないってことでいい?」

「あんたはあたしを怒らせたんだから死ぬしかないんだよっ!」

息子の方に聞いたのだが母親の方が答える。

「息子の方も同じ考えってことでいい?。悪党には悪党の美学があると思うけど母親のいいなりで悪党やってるってことでいいの?」

再度確認する。

「うるせぇ!、さっきからふざけたことを言いやがって、主導権を握っているのはお前じゃねぇ!、俺だ!。おいてめぇら!、さっさとやれっ!」

息子が怒鳴ると屈強な男達が一斉に殴りかかってくる。

襲ってくる奴らは武器こそ持っていないがあの太い腕で殴られたら痛いじゃすまなさそうだ。なので避ける。避けながら男達に聞く。

「あなた達も悪いことに加担しないで今からでも真っ当に生きてみませんか?。漁業でも木こりでもその肉体を活かせる場はたくさんあると思いますよ。」

私の言葉に何も反応せず男達はただただ拳を振り回す。

「バカが!、そいつらは素行が悪くて冒険者資格をはく奪されたチンピラだ。真っ当に生きられないから俺が雇ってやってるんだ。おい!、遊んでないでさっさとしろ!」

はぁ、もういいかな。面倒になってきた。

屈強な男達の首を落とす。

今まで動いていた生き物が一瞬で屍となったことに息子と母親は驚愕する。

「私は話し合おうとしましたが無理みたいなので諦めます。」

私は2人に近づく。

「ま、待て!、話をしよう、金は、金は必要ないか?、そういえばこいつといざこざがあったよな。痛めつけるなり何なり好きにしていいぞ。なっ?、一旦落ち着いてお互いの言い分を聞こうじゃないか。」

「あんた!、母親を差し出すのかい!?。違うんだよ、私は愚痴は言ったけど命令したのは全部この子なんだよ。私は何も悪くないよ。」

私は毎度思うのだが、なんでこういう悪党は人の提案は聞かないで自分が不利になったら提案してくるのだろう?、そしてなぜ自分の提案が受け入れられる可能性があると思うのだろう?。うーん、過去の成功例でもあるのか?

私が提案について迷っていると思ったのか息子の方が続ける。

「俺は商会の長だし裏の方にもちょっとは顔が利く、ここで恩を売っておいて損はないぞ。なっ?、賢い選択をしようぜ。」

なんで最後馴れ馴れしいんだよ。

こいつの提案は無視して聞きたいことを聞く。

「聞きたいんだがお前の母親にスープぶっかけた後なんで私を殺せなんて命令したんだ?、いつもそうしてんの?」

「い、いや、部下が勝手に判断したんだ、もしくはこいつが俺の名を使って命令したとか…。」

「嘘よ!、この子は私が言えばみんな殺してくれるの!。今までも!、そしてこれからもよぉぉ!」

ババァはどこから取り出したのかナイフを手にこちらに突進してくる。

ナイフは私の腹に刺さったが血が流れたのはババァの方、魔法で刺さる位置を相手の位置と繋げたのだ。

「あ、あぁ…。なんで…。」

ババァは自分から流れる血を見てナイフを落とし力なく後ろに倒れる。

「母さん!」

息子が抱える。

「母さん!、母さん!。大丈夫だよ、すぐにポーションを持ってくるからね。」

なんだ、憎まれ口を叩こうともやっぱり親が大事なんじゃん。

母親が弱々しく呟く。

「あんたは…、あんたは失敗だったねぇ…。どこで間違えちゃったのかねぇ…」

その言葉を聞いて息子の表情がなくなる。

「は?、なんだよそれ、俺が失敗作とでも言いたいのかよ。いままで親だからと思って言うことを聞いてきたのにお前は失敗作と思って見下してたのかよ。」

ん?、どうした?

「ち、違うわ…。私の育て方が悪かったの…」

息子の顔が無表情から怒りに変わる。

「育て方を間違って失敗作が生まれたって言いてぇんだろ!。なんだよ!、自分の思った通りに育たなければ失敗かよ!、それを言われた子どもはどう思うかは考えないのかよ!」

息子は更にヒートアップする。

「お前の言うことを聞いて!、商会まで作って!、部下を従えた俺を失敗作だと!。ふざけるなよ!、お前の育て方は関係ねぇ、俺の、実力だ!」

息子は床に落ちたナイフを拾う。

「もう…お前は、必要ない…!。」

そう言って母親の喉にナイフを突き立てる。

母親は目を見開き声にならない声で息子に何かを訴えるが手から力が抜けやがて動かなくなる。

わぁーお、怒涛の展開。悪党でも親殺しなんて見せられると気分は悪いね。まぁでも親子は長い時間一緒にいることを強制されるから関係が悪いと地獄だよな。自分が子どもで親が親の家庭なんて1つしかないし平均とか普通とか他の家庭と比べるとか意味ないしね。

息子の動きに注意していると徐に立ち上がりこちらを睨む。

「そもそもお前は何なんだ…、今までうまくいっていた…、逆らう奴は黙らせて、始末するのだって問題なかった…、なのに…、なのに!」

ナイフを手に近づいてくる。

うーん、そもそも悪いことがうまくいくっていう感覚が理解できない。罪悪感とか恐怖に蝕まれないのか?、そんなことより何も考えないで今日もいい天気だなーって平穏を感じた方が私はいいと思うのだが。やっぱり根本的な考え方の違いだよな…。

息子はナイフをゆっくりと振り上げ私に突き刺そうとする。

この人は何を見てたんだろう?、屈強な男達も母親もやられたのにナイフ一本で襲ってくるなんて。自暴自棄?、それとも奥の手が?

考えても分からないしやられる気もないので首を落とす。

はぁ、終わり終わり。異世界で目覚めてから簡単に人を殺し過ぎだとも思うがやり返さないと気が済まない性分だと改めて認識する。今はやり返す力もあるしな。

とりあえずこの惨劇をどうするか考える。

…森に埋めるのが妥当かな。

死体と床や家具に着いた血も残らずアイテムボックスに収納し焼却して骨にする。

やることは終わったので透過魔法をかけて町を出る。

森に向かって歩きながら考える。

はぁ、魔物に襲われるから命が軽い世界だと思っていたが人が人を殺すのも普通なのかね…。ババァとのいざこざで部下に殺しを命令し、話そうとしたら襲われる。…いや、あの人達がそういう人間だっただけかなぁ。

森に着いたので適当に穴を掘って骨を埋める。

気分が落ち込んでいるのか昂っているのか分からない複雑な心境なため、何かないかと森の中を進むことにする。

魔物を倒せば気分が晴れるか?、…いや、そんなことはないだろう。はぁ、もうよく分かんねぇな。

もやもやした気持ちのまましばらく歩くと開けた場所に出る。そこは森に囲まれているにも関わらず地面に緑はなく目の前には岩の壁が聳え立っている。

分かる、私には分かるぞ。この壁には何かが隠されている。この壁を50回叩けば道が開くはず。ゲームでさんざん見たから間違いない。

岩の壁に近づくと感知魔法で岩の中に空間があるのが分かる。

マジか、本当にあるんだ。

冗談で思ったことが事実で驚いたが切り替えて中に入ってみることにする。

透過魔法で岩をすり抜け中に入る。中は真っ暗なので前方空中に火を灯して進む。火は透過していないのでバレるだろうがそこはしょうがない。いやだって火を透過させたら光はどうなるのとか魔法範囲で区切ったら周りを照らすためなのに意味ねぇじゃん、ブックオフなのに本ねぇじゃんとか考えて魔法のイメージが湧かなかったのでやめた。雑念も入ってたし。

なので周りから見れば火だけが浮かんでいるように見えるので逃げるなり戦うなり対処は出来る。それに何もない空間が明るくなるより火の玉が浮いてたほうがなんだ人魂かってなるくね?。ならねぇな。

そういう訳で洞窟を進んでいく。こういう怪しいところにはお宝の1つや2つあるもんだろう。金目の物を期待しながら歩いていると開けた空間に出た。そこにはどこかで見た暗い色のマントの人物が2人おり、壁際を向いたテーブルに座って伏せた後姿が見えた。

あのマントは確か夜に人を襲う野盗だったかな。ここはアジトか何かなのだろうか。

ギルドで見た情報を思い出しているとふと疑問に思う、私は火で周りを照らしているのに反応がない、というかピクリとも動かない。なぜだ?

確認するために近づき顔を覗き込む。

その人物は白目を剥いており一目で死んでいることが分かった。もう1人も確認するが同じく死んでいた。

私は今日だけで何人の死体を見ればいいんだ…。

辟易しながらも死体をスキャンして死因を調べる。

スキャンの結果、頭部への強い衝撃による頸椎断裂と出た。争った形跡も見られないので座っている2人の後ろから攻撃して即死させたのだろう。

人間か魔物か、どちらの仕業かは知らないが恐ろしい奴もいたもんだ。

え?、お前も首落として即死させてんだろって?。確かにー↑。Foo↑!。

1人でツッコミを入れながら奥に進む。死体を前にしてもこの態度、頭イカれてんだろうな。

進むとまた開けた空間に出る。今度は地面に何人かの死体が転がっており、それを食べる虫のような後姿が明かりに反応してこちらを向く。

こちらを向いたそれは人ほどの大きさで長い触角、曲がった背、太く大きな脚で立ち、残りの腕で死体を掴んでムシャムシャと食べていた。

Oh…、グロテスク…。

そいつはこちらを見たがすぐに元の方を向いて食事に戻ったので先に情報を調べてみる。

該当する魔物は…、これか?

暗馬虫。暗いところを好み、その長い触角で周りを判断しているようだが詳しくは分かっていない。一説には触角に魔力を纏わせて伸ばし広範囲の情報を得ていると言われている。注意点は脚による攻撃と暗闇での奇襲。脚による攻撃は生身では一撃で骨が砕けるほどであり、暗闇での奇襲はこの魔物は夜に活発になり、明かりを狙って自分の得意な環境にしてから闇に紛れて襲ってくる。また、自分の気に入った場所は先客がいても排除して奪い取る行動が見られるので洞窟などで野宿する場合は注意が必要である。

ほーん、闇に紛れる野盗が同じく闇に紛れる魔物にやられたと、実におもしろい。

私は透過魔法を解除し周りを照らしていた火を光源に切り替える。光源は洞窟の中を照らし空間全体が見やすくなる。

自分のいる空間がいきなり明るくなり急に姿を現した私に驚いた暗馬虫は持っていた死体をこちらに投げる。

私は横に避け両手で手招きしながら挑発する。

「Hey!、今日は色々あって心が不安定なんだよ、悪いけど付き合ってくれや。」

言葉は伝わっていないだろうが顎をギギギと鳴らしてこちらを見る目に殺意のようなものが宿っているので挑発は成功だろう。

いいね、魔物はこうでなくちゃ。

この状況に少し興奮しながら相手を観察する。情報にもあったようにあの太い脚での攻撃は痛そうだ。洞窟に入ってすぐに見つけた2人の死体はあの脚で首を折られたのだろう。

相手を観察していたがふと思いつく。

…そうだ、今回はちょっと違うことをしよう。敢えて縛りプレイでこちらは脚しか使わない、相手の得意で戦うのも一興だろう。

これで死んだらそん時はそん時だ。

今の私は自暴自棄になっているのかもしれないと冷静に思いながら戦いに集中する。

相手もこちらの様子を伺っていたが私に動きがないことに痺れを切らして地面を蹴る。

一瞬で私の後ろの壁に飛び複数の足で引っ付く。そしてその跳躍を何度も繰り返しこちらを翻弄してくる。

空間が明るいのでスピードで惑わして奇襲するようだ。賢いな。

こういう場合はどうせ追いつけないのでどっしり待つ。すると今まで感知魔法では私の軸からズレた反応だったのが一直線に向かってくる反応となり背後から近づいてくるのが分かった。

まぁ死角を狙うよね。

私はギリギリで避け、すれ違い様に腹部に蹴りをお見舞いする。

暗馬虫はギュイッっと声のようなものを発し私から距離を取る。

攻撃を加えた箇所を見てみると亀裂が入っており体液が流れていたのでダメージは入っているようだ。

次はどう来るか相手を見ていると動きが鈍くなっているのが分かったので今度はこちらから攻める。

走って近づき蹴りを繰り出す。武術の経験はないのでゲームのキャラクターがやっていた動きを思い出しながら攻撃する。

この体がハイスペックなのか魔力で強化しているからなのか、はたまたそのどちらもなのかは不明だが思った通りに体が動く。

百裂脚、ジェノサイドカッター、鳳凰脚、覚えている有名な技を繰り出すと暗馬虫の体にめり込み、腕はちぎれ、脚は逆に曲がる。

気づくと魔物はうめき声を漏らしながら地面に伏している。

やっぱ必殺技って強いな。

そんな感想を思い浮かべながら頭を潰す。

接近戦で体液がかかったので魔法できれいにする。

体を動かして少しはスッキリしたか?

自問してみるが答えは微妙だ。

気持ちを切り替えて探索に戻る。魔物はちゃっかりアイテムボックスに仕舞った。

開けた空間の奥には道が続いていたのでそちらを進む。火から光源に切り替えたので奥までよく見える。なのでどんどん進むとすぐに行き止まりに辿り着く。

そこは小さな空間だがテーブルに木箱、檻が見えた。

テーブルには周辺の地図にバツ印が付いたものが置いてあり襲撃場所についての情報が見て取れた。

木箱の中にはお金が入っていたが量は多くない。すでに使った後なのかそれとも野盗が金目の物を蓄えているというのは幻想だったのかは知らないが銀貨3枚と大銅貨2枚、それと銅貨が18枚だった。

まぁ大金っちゃあ大金か。

ありがたくお金をアイテムボックスに仕舞う。

最後に檻だが中を覗くと汚れた格好の小さな子どもが倒れているのが見えた。

私は急いで檻の鍵を魔法で切断し子どもの全身を魔法できれいにした後肩を軽く叩き声をかける。

すまん、汚いのはどうしても無理なんだ。

「大丈夫か?、聞こえるか?」

私の声に子どもはピクリと反応し起き上がってこちらを見る。

とりあえず起きれるほどなら大丈夫か?

心配して見ていると子どものお腹が鳴る。

アイテムボックスに食べ物はあったはずなので探してみるとアンシーの町で買った魚サンドがあった。

「食べるか?」

取り出して尋ねると子どもは大きく頷く。

魚サンドを渡すとすぐさま食べ始める。

余程お腹がすいてたんだろう、野盗は魔物にやられていたのでそれから食事をしてないとなると相当だろう。

コップはないのでお皿に魔法で水を出してそちらも渡す。

「水も飲みな、ゆっくりね。」

私の言葉に頷き食事を続ける。

言葉は通じるみたいなので一安心だ。

改めて子どもを見てみると年は小学生低学年くらい、髪の色は真っ白で犬耳が付いており、同じ色の尻尾がある。

はぁ、なんでこんな小さな子どもを檻に入れるかね。…いや、前世でも子どもの人身売買の話はあったか、平和ボケしてそんなものはないと思いたい人もいたけどね…。

そんなことを考えていると服の袖を引っ張られる。

見ると食べ終わった子どもがこちらを見ている。

「よし、それじゃあここを出るか。立てるか?」

聞くと子どもは首を横に振る。どうやらまだ力が入らないようだ。

「じゃあ君を抱えて移動するがいいか?」

確認は大事。私も許可なく触れられるのには抵抗がある。

子どもが頷いたので優しく抱えて来た道を戻る。

途中死体があるところは目を瞑るよう言うと素直に従ってくれた。いい子やな。

すぐに入ってきた場所まで戻ってきたので自分と子どもに透過魔法を掛けて岩を通り抜ける。

外に出ると辺りは暗くなり始めており夜の気配を感じられた。

今思った、ここまで適当に森を進んできたからオツサの街の方向が分からない。これはまたアンシーの町まで戻るしかないな。

何となく覚えている進んで来た道を戻ろうした時、抱えている子どもが震えているのに気づく。

「寒いか?、気づかなくてすまんね。」

自分のマントを子どもに着せる。

「今から町まで走るからもう少しだけ我慢してくれ。」

子どもが頷いたのを確認して透過魔法を掛けたまま走る。

正直なところ子どもって苦手なんだよね、どう対応すればいいか分からないし。でも大切な存在だとは思っている。思っているからこそ私みたいな人間が影響を与えたくないので関わりたくないのが本音だ。

しばらく走るとアンシーの町が見えてくる。

結局戻ってきたよ。依頼の期日には余裕があるといっても2回も戻ってくるとなると私は何をしているんだと思ってしまう。

門で入場の手続きをしていると門番に話しかけられる。

「その子どもはどうしたんだ?」

そうだ、この場合どうなるんだ?

「森の中で迷子になっているのを見つけました。こういった場合町に入るにはどうすればいいでしょうか?」

素直に聞く、それが一番。しれっと嘘もついているが。

「そうか、子どもの場合街に入るのに金はかからないが親か施設に引き取られるまでは君の責任となるから注意してくれよ。それと捜索願が出てないかの確認と近隣の町や村に情報を共有するから奥で話を聞かせてもらうよ。」

この世界の事はまだまだ知らないので素直に従う。郷に入りては郷に従えってやつだ。

門番に奥に通されるとギルドカードを確認されたり、私や子どもに質問したりして話は終わった。

子どもは終始言葉を発しなかったが首の動きで質問に答えていた。

結果として捜索願は出ていなかったので周辺の町や村に情報共有して反応を待つらしい。

最後に門番の人が訪ねてくる。

「これで終わりだがその子はどうするかい?、施設の場所なら教えれるけど。」

私が施設の場所を聞こうとすると服の裾を掴まれる。

子どもは俯いているが掴む手には力が籠っている。まるで離れたくないと言っているかのようだ。

ここで気のせいだと払い除けてもいいがさすがの私でも良心が痛む。なのでしゃがんで目線を合わせ尋ねる。

「君はどうしたい?、施設で親を待ってもいいし、私と行動して連絡があれば送ることもできる。だが言っておくが私はいい人間ではない、それだけは理解して選んでくれ。」

子どもは私と目を合わせ絞り出すように答える。

「…一緒に、いたい…。」

あい、分かった。これも何かの縁ということにしときましょう。あと声から察するにこの子は女の子なんだね。扱いには気をつけよ。

「という訳で施設の場所は大丈夫です。この子関連の連絡はギルド経由でいけますか?」

「ああ、大丈夫だよ。」

門番の人にお礼を言って別れる。まずは宿を探すか。

広場で屋台を片づけている人に聞いてみると手頃な宿を教えてもらえたのでそこに向かう。そういえばこの子の名前を聞いてなかった、今後一緒に行動するなら知っておいた方がいいだろう。

「そういえば名前を言ってなかった、私はカルラ、冒険者をしている。よかったら名前を教えてもらってもいいか?」

「…ハク。」

本名はニギハヤミコハクヌシだったりする?、それともニギニギ・コハクンチョス?

「ハクね、よろしく。今から泊まるところに行くけど1人で眠れる?」

ハクは首を横に振り服の裾を掴む手に力が入る。

えぇ、私は寝るときは1人じゃないと寝れないタイプなんだがどうしよう。

いい考えが思いつかないまま宿に着く。部屋は開いているとのことだったのでとりあえずベッドが2つある部屋を借りる。

部屋は間隔をあけてベッドが置いてあるだけのシンプルなものだった。

「この部屋で1人ずつベッドで寝るのなら大丈夫?」

ハクは首を横に振る。

なんかめんどくせぇな、これが子育てってやつか?。なら私には一生無理だな。

「まぁ…とりあえず晩御飯にするか、ご飯は食べられそう?」

私が聞くとハクのお腹が鳴る。

「食べられそうだね、何か食べたいものはある?」

再度聞くと今度は言葉で返ってくる。

「…お肉。」

「分かった、じゃあお肉が食べられる店を探そうか。」

宿を出てお店を探す。私もこの町は詳しくないので当てもなく歩く。そうしているととある店の前でハクが足を止める。見た目は民家のようだが料理の絵の看板が出ているので飲食店のようだ。

「ここにする?」

私が聞くとハクは頷く。

お店が決まったので中に入るとそこは民家を改装したようだがおしゃれな雰囲気に包まれており、厨房からは美味しそうな匂いが漂ってくる。

「いらっしゃいませ。」

奇麗なお姉さんが出迎えてくれる。

「2人なんですが入れますか?」

「はい、大丈夫ですよ。こちらへどうぞ。」

案内されてテーブルに着く。ハクは向かいが空いているにもかかわらず隣に座る。

まぁ捕まってた訳だしね、今日くらいは大目に見ましょ。

ハクの前にメニューを広げる。

「メニューは読める?」

聞くと首を横に振る。

「オッケー、じゃあ肉料理となると…、ミズドリのパリパリ焼き、これは鳥肉の皮の食感が楽しめる料理かな。アクアオックスのステーキ、これは牛肉の味が一番楽しめる料理かな、…これは」

料理名から推測して説明していく。一通り説明するとハクは困り顔で悩んでいる。

「どした?、どの料理にするか迷ってる?」

聞くとハクはメニューの2つの料理を指さす。

「これとこれ、どっちも食べてみたい…。」

いいゾー、子どもが自分の意志を出すのは正しいことだゾー。

「じゃあどっちも注文しようか、2つとも食べれそう?」

ハクは首を横に振る。

「それじゃあ半分に分けて一緒に食べようか。」

私の提案にハクの顔がパッと明るくなり何度も頷く。

くっ、笑顔が眩しい。これでは情が湧いてしまう。

冷静に店員さんを呼び料理を注文する。

「このアクアオックスのステーキとレッドボアのスペアリブをください。あと取り皿をいただけるならお願いします。」

「かしこまりました。」

注文を受け笑顔で戻っていく店員さん。

はぁ、今日のいざこざからの店員さんの笑顔のギャップがすごいな。自分の行いに後悔はないが正しいとは思っていない。まぁこれも終わってから考えているからあんまり意味はないんだけれども…。

私が考えていると隣のハクが顔を覗き込んでくる。

「大丈夫…?」

子どもに心配させるとは、つくづく大人になり切れない人間だな私は。

気持ちを切り替えて顔も切り替える。

「大丈夫だよ、心配してくれてありがとね。」

笑顔を向けると安心したのかハクも笑顔になる。

うだうだ悩むのはよくないな、もっと能天気にいこ。

話題を変えるためにハクに話しかける。

「そういえば門番の人の質問にあんまり答えてなかったけどお父さんとお母さんがどこにいるかって分かる?、もちろん言いたくなければ言わなくていいけど。」

私の質問に少し考えてからハクは答える。

「…色んなところを移動してたから、どこって聞かれても分からないの。ごめんなさい…。」

「ハクは何も悪くないから謝る必要はないよ、教えてくれてありがとね。」

ハクと話していると料理が運ばれてくる。

「お待たせしました、アクアオックスのステーキとレッドボアのスペアリブになります。こちらは取り皿です、ごゆっくりどうぞ。」

テーブルに並べられたのはプルプルと瑞々しい大きなステーキとオレンジ色のソースがかかったこんがりと焼けたスペアリブ。それにパンとスープが2人分。

料理を前にしてハクは目を輝かせているので私は料理を半分に切り分け取り皿に取る。

「この量は食べられる?」

頷いたので料理をハクの前に並べる。

「それじゃあ食べようか。」

私がいただきますというとハクも真似する。

この子は賢いな、この年で空気を読んで真似するとは。

感心しているとハクはステーキにフォークをぶっ刺して齧り付く。

ワイルドなのは結構だがここはお店なので一応伝える。

「ハクさんや、ナイフとフォークはこうやって右手と左手に持って料理を食べるんだ。人によっては正しい持ち方じゃないと嫌な思いをするから私の真似をして覚えてみないかい?」

ハクは私の提案に素直に頷き改めてナイフとフォークを持って料理と対峙する。そして私の真似をして料理を口に運ぶ。一口食べた後は夢中で調理を食べ進めるがもうナイフとフォークの使い方は様になっている。

この子は賢いを通り越して天才か?

感心しながら私も料理を味わう。アクアオックスのステーキはプルプルとした見た目だが口に入れるとしっかりとした牛肉の食感と味を感じられ、脂はさらさらとしていて食べやすいのに食べ応えがある。

これは矛盾しているようですんなりと受け入れてしまう料理だ。異世界らしい料理と言えば分かりやすいかな。

続いてレッドボアのスペアリブ。レッドボアのステーキは以前熊猫亭で食べて美味しかったのでこちらも大いに期待できる。

骨の間で切り分けてソースを絡めて口に運ぶ。

肉は口の中でとろけて骨の周りの旨味と共に広がる。そこにオレンジソースの甘さが加わり上品な味わいとなる。

美味しいなぁ。やっぱり美味しいものを食べると幸せを感じるなぁ。

私も夢中で食べ進め2人とも同じくらいのタイミングで食べ終わる。

ハクはどうやら満足そうだ。

その後お会計をして店員さんにお礼を言って店を後にする。

宿に戻る途中ハクが眠そうだったのしゃがんで宿まで頑張れるか尋ねると私の背中をよじ登ってくる。

はぁー、世の子どもは檻から助けて飯を奢っただけでこんなにも不用心になるものかね。おじさん心配だよ。

そんなことを考えながら起こさないように静かに歩く。

宿に着きハクをベッドに降ろす。おんぶしてからずっと私の服を掴んでおり、今も話す気配はない。

「大丈夫だ、ここは安全だよ。」

私が優しく伝えるとようやく手が緩んだ。

さて、この状況で明日この子が目を覚ました時に私がいないと不安になるかもしれない。だが一緒のベッドで寝るのは私が嫌だ。うーん、ベッドを横に繋げればギリいけるか?

私の使うベッドを一度アイテムボックスに収納しハクが寝ているベッドの横にくっつくように取り出す。

まぁこれならいけるか。

私は全身を魔法できれいにして、同じようにハクにも魔法をかけてベッドに横になる。

ハクの寝顔を見ながら考える。

勢いで助けたがどうなることやら…、だが手を差し伸べたら最後までって誰かが言ってたしな、出来ることはやろうかな。

私は子どもを作って育てる人を尊敬している。なぜなら私には絶対に出来ないからだ。子どもの為に全てを犠牲にして、優先して、責任を取って、危険から守り、導く。人間が人間に考えれるだけでもこれだけの事をするなんて私には出来ない。逆を言えばこれほどの事をする覚悟がなければ子どもを持つ資格はないと思っている。もちろん子どもが出来てから考える、子どもと共に親も成長するというのも分かるが私には考えられないというだけだ。人を育てるのにお試しも練習もないのに皆親になるのはぶっつけ本番だ。知識で準備は出来るがマニュアル通りいかないのが人間というもの。そして何より大切な存在を失う恐怖に耐えられない。それが事件なのか事故なのか、はたまた巣立ちなのか、どれにせよ心が壊れる未来を想像して気が気じゃない。あとはそうだな、両親に抱き抱えられている子どもを見てかわいいと思うが、正直ペットの犬猫と変わらない。実際のお世話は大変だろうにそのワンシーンだけ見て憧れを抱くなんて到底できない。相手は命やぞ。

…とまぁ色々考えたが、すでに情が湧きつつあるんだよなぁ。

とりあえず両親と早く連絡がつくことを祈りつつ日々をこなすしかないな。

考えているうちに私にも眠気が襲ってくる。

もっと何も考えずに…、日々を…楽しく…。

私は眠りに落ちた。


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