地下の祭壇
礼拝堂の地下、最奥に位置する一室。そこは「処置室」というにはあまりに清潔で、祭壇のように静謐な空間だった。
「……怖がらなくていい。これは救済なのだよ。お前のその清らかな肉体が、偉大なる御方の礎となるのだ」
老神官の声は、祈りを捧げる時のように穏やかだった。
この場所の僕は、大理石の台の上に全裸で横たえられ、四肢を皮帯で固定されていた。体温を奪う石の冷たさと、微かに漂う消毒液の匂いが、死の予感を際立たせる。
「まずは……腎臓を一つ、いただこうか。お前の組織は、驚くほど拒絶反応が少ない。まるで世界そのものが、お前を『誰にでも分け与えられる部品』として設計したかのようだ」
麻酔はない。老神官の指先から放たれる微弱な魔力が、一時的に筋肉を弛緩させるだけだ。
研ぎ澄まされたメスの刃が、僕の脇腹に当てられた。
「……っ!!」
焼けるような、それでいて凍りつくような鋭い痛みが走る。
皮膚が裂け、脂肪層が分けられ、筋肉の隙間に老神官の冷たい指が入り込む。彼が僕の体内をかき回すたびに、内臓が擦れる不快な感触と、経験したことのない喪失感が脳を支配した。
「ああ、美しい。この瑞々しさ、この拍動……。これを保存魔法で包み、陛下、あるいはあの方へ……。クク、素晴らしい献上品になる」
生きたまま自分の体から臓器が引き抜かれ、銀の盆の上に置かれる。その瞬間、僕の意識は寒気のような絶望に包まれた。
けれど、老神官の「収穫」はそれだけでは終わらない。
「次は眼球だ。視神経の繋がり方も見ておきたい。安心しなさい、まだお前にはもう一つ、予備があるだろう?」
視界が影に覆われ、冷たい器具が僕のまぶたをこじ開ける。
この「収穫」が終わる頃、台の上の僕は、中身のほとんどを奪われた抜け殻のようになっていた。
それでも老神官は、慈悲深い笑みを絶やさず、血に汚れた僕の髪を優しく撫で続けた。




