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折れた翼の英雄譚  作者: 猫の人
3章 英雄の台頭(王国歴145~148年)
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裏切者(後)

 部下に裏切られたイルムだが、彼は、別に動けないわけではない。

 本来であれば強力な眠り薬としびれ薬を打ち込まれていたはずであるが、そのあたりは元々効かないし、針も刺さっていない。

 二人は気が付かなかったが、物理防御力アップ系のパッシブスキルにより、イルムには弱い攻撃がほぼ通らないのだ。


 じっとしている理由は簡単で、このまま連れ去ろうとするようであれば、敵への引き渡し先まで連れて行ってもらおうと思ったからだ。

 どうせならと、裏切者二人が何を言おうが反論できなくなるまで悪行を積み重ねさせようとしている。

 敵兵と合流し、報酬(・・)を受け取ってしまえば良いとさえ考えている。


 なお、イルムたちがいなくなることで彼らの持ち場から敵が侵入するかもしれない事については、味方がフォローしているようなので問題ない。

 騎士団長のフォローで、連れ去られてもいいように人が動いている。



 そうして、 二人の荷運び(・・・)は雑であったが、イルムは夜番の持ち場から無事連れ去られるのであった。





「この男がそうなのか?」

「ええ。約束の相手ですよ」

「本当だろうな?」

「それはもう、存分に確かめてもらえればいいわ」


 イルムが運ばれた先は、ダーレンの方角から反対方向に1㎞ほど行った場所にある、小さな森だった。

 森は獣の生息地であり、近隣の村にとっては肉と木材の供給減であり、非常に重要で無くすわけにはいかない場所だ。街や村が近いからこそ、こういった場所はある。


 そんな森だからこそ、人目につかない恰好の取引場所として使われるのだ。



 夜間用の迷彩服として、黒装束を纏った騎士らしき男が二人。

 騎士であろうと判断できるのは、軍馬を連れてきているからだ。高級な品である馬に乗れる者は少なく、馬飼(うまかい)か、騎士などぐらいである。馬は金持ち貴族でも乗れない者が珍しくないのだ。

 よって、この場にいるのはイルムと裏切者二人、そしてミルグランデの騎士二人の、計五人のみ(・・)となる。


「私たちが抜けたことで警備に穴ができた。

 隊長は連れてきた。

 約束は、果たしたわよ」


 言われたことはやった。

 裏切者二人は、囚われの恋人を返して欲しいと訴えるが。


「あのなぁ。ここまで連れて来れるわけないだろうが。

 考えてもみろ。この場に奴らを連れてきたとして、どうするつもりだ? サーベリオン家を裏切った手前、家には帰れんだろうが。

 奴らはちゃんと生かしてある。五体満足でな。だからちゃんと会わせてやるさ。お前らが、こっちに来ればな」


 騎士の片方が、今はそんな事できない、やる意味が無いと断ずる。

 イルムが聞く限り、男の主張に間違いはなく、矛盾なども無い。まっとうな意見だ。

 確かに、この場に連れてくれば恋人共々処刑される未来しかないので連れて来ないのは正解だ。


 だが、若い娘二人に正論は通用しなかったようだ。


「ちょっと! こっちは危ない橋を渡ってここまで来たのよ! 話が違うじゃない!!」

「そうよ! 返してよ! 私の彼を返してよ!!」


 もう会えるとばかり思っていた若い娘たちは、期待の分だけ怒りをまき散らそうとする。それも、大声で。



 騎士たちはそんな彼女たちにウンザリとした顔をすると、腰に下げていた剣に手をかけた。


「やれやれ。見つかると面倒だというのに」

「仕方がない。穏当に話を進めたかったのだが」


 騎士たちが剣を抜くと、ようやく娘二人は冷静さを取り戻し、声を出すのを止めた。


 だが、もう遅い。


「悪く思うなよ」


 男の剣が一閃し、娘の一人が腰のやや上で両断された。

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