閑話14 記憶の彼方
主人公視点ではありません
異世界に行くことになって身辺の整理が必要になった皆は各自行動している、
正人もそのために実家に帰っていた、お供にはつゆきが付いてきている、
家の中はあの時と変わっていない、
あの事故の時からこの家の時間は止まったままなのだ。
幾つかの思い出の品を収納BOXに入れていく、
ファンタジー世界によくある{無限収納}タイプだ、
これもヨウコの作った魔道具で得意の空間魔法を付与した一品だ。
そうしているうちに写真アルバムを手にした正人はその中の一冊を開く、
そこに写っているのは、年配の男性と一緒に写る少年の姿、
背景は艦橋だろうか、二人とも幸せそうな表情をしている。
正人は懐かしそうに眺めている、それをみていたはつゆきはあることに気が付いた。
「これ、私?」
後ろに写ってる艦橋から自分の艦上で写されたものであることに気が付いたのだ。
「ああ、祖父さんと観艦式のときに行ったときのだからな。」
そういえばと、はつゆきは思い出した、
観艦式で招待された人たちを乗せたことがあった。
そのときに正人と出会っていたのか、
偶然というのはあるのだなと思っていたら。
「偶然だと思うかい?」
正人の言葉にはつゆきは驚く、
正人が自分を召喚したのはその時自分があの場所に
いたからだと思っていた。
そして正人ははつゆきに昔語りをするのであった。
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祖父は軍艦乗りだった、大戦の時は駆逐艦に乗っていたそうだ、
大和が沖縄特攻に出た作戦にも参加して九死に一生を得たと聞いた。
軍が再建されたときにすぐにまた応募したくらい艦が好きだった。
観艦式の時には定年で退官していたが、
鍛えられた体は海の男らしく年を感じさせなかった。
「正人、今乗っているこの艦はな、はつゆき型護衛艦の一番艦はつゆきだ、
こいつが、進水した年に退官になったが、乗ってみたかった艦だったんだ、
とてもいい艦だったからな、もう少し若ければとおもったよ。」
「僕もこのふねはすきだよ、強そうだし。」
そして、艦橋の下の部分を手でぺちぺちとたたく。
「僕もお祖父ちゃんみたいに軍に入ってこんなふねに乗りたいな。」
祖父はうれしそうに、笑いながら言った。
「ああ、なれるさ、正人ならきっとな。」
その後も祖父に連れられて艦を見に行ったりした。
高校生になった時将来は、軍関係の学校に進み、
軍に入りたいといった時、祖父はひどく喜んでくれた。
あの日が来なければ、・・・・・・
魔力暴走が原因の事故で正人の家族は正人を残して全員が死んだ、
祖父もその中にいた、入院していた病院でそのことを知らされた時、
たちの悪い冗談だと思った、自分はたいしたけがもしておらず、
入院も検査だけのためだったからだ。
だが、重い事実を突きつけられ、呆然としてしまった。
葬式やその後の処理に追われていた正人に更なる追い討ちがかけられた、
当時付き合っていた女性からの別れ話である、
それも、事故の起こる相当前から別の男と付き合っていたと知った時、
正人は女性不信になっていた。
進学の時期が来ていたが、今の状態では志望の軍関係の学校は無理だろうと、
すすめてくれたのが東H市の学校である、
環境が変われば立ち直れるだろうとの暖かい心使いに感謝して、
正人は東H市にやってきた。
そして、一年が過ぎた頃正人はK市に来ていた、
K市の軍港に久々に艦を見に行ったのである。
艦たちを見ていると、祖父のことを思い出し、
目頭が熱くなる正人であった、
そこで、声をかけてきた人がいた、祖父の現役時代の部下で
葬儀の時にも駆けつけて来てくれた人だった、
自分ももうすぐ退官です、最後のご奉公はK市になりそうですと聞いていたのを思い出した。
その人の親切で案内などをしてもらっていると、
岸壁に一隻だけぽつんと停泊している艦があった、
そしてそれは正人の見覚えのある艦に見えた。
「あの艦は?艦番号がないですけど見覚えがあるんですが。」
「ああ、あれは(はつゆき)だよ、いい艦だったけどお役ご免になってね、番号も消されて備品をはずしてるところだよ、
あと半年もしないうちに解体されるんじゃないかな?」
「はつゆき・・・」
正人の中で観艦式のことが昨日のように思い出される、
好きだった艦、やさしかった祖父との思い出もなくなってしまう、
そうおもうと胸が痛んだ。
正人がネットで魔法のことを知る三ヵ月前のお話である。
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「・・・・・・」
昔語りがおわったころ、日は傾き始めていた、
語り終えると正人はアルバムを閉じてBOXに入れた。
すると背中に暖かくやわらかいものがあたり、
白い腕が首に回された、
はつゆきが背中から抱きついていた。
顔を耳に近づけ、ささやくように言う、
「正人に会えて良かった、どこにでもずっとついていく・・・愛してるから。」
「俺もだよ。」
窓からの日の光が一つになった影を長く伸ばしていた。
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