第1話 終わらぬ悪夢
前回のあらすじ
記憶もなく、知らないところで目覚めたメアリー。彼女が、「とにかくこの場所から出なきゃ。」と移動をしていると、突如、壁を破壊して、クマのように大きなピエロ、『アングリ―』が現れ彼女を襲う。
メアリーと一緒に逃げている長身のピエロの「お箸を持つ方が逃げ道」という言葉に騙されたのか、メアリーは罠にかかり、アングリーに殺されてしまった。
「やめて!!」
メアリーがそう叫んで起きる。
「あ、あれ?」
メアリーは最初に起きた時のような場所にいた。
「体に痛みは…、ない…。」
先程まで感じていた痛みは、まるで夢のように無くなっていた。
彼女は立ち上がり、近くの壁にかけられてた鏡で、全身を確認する。
するとそこには、いつものメアリーがいた。
血のような深紅のロングヘア―に、黒い目。所々赤く塗られた白いドレスを着た可憐な彼女だ。
「気味の悪い顔…。もっと赤ければ、綺麗に見えるのに。」
鏡を見てそうつぶやく彼女。
メアリーは、彼女にとって気味の悪い顔を見ないようにするために、その場を離れる。
「誰かが手当てでもしてくれたのだろうか…。とにかく、こんなところ、すぐにでも逃げ出さなきゃ!」
そう思って彼女は、前回入っていった暗い廊下への入り口を探す。
しかし、部屋を一通り回っても、その入り口は見つからなかった。
「あれ?おかしいなぁ。手当てしてくれた人が、また壁を付けたのかな?」
メアリーは再び、壁を叩いて入り口を探す。
そして、入口を見つけた彼女はそこから、再び暗い廊下へと出る。
アングリーがいた大きな部屋へとたどりつく。
そこにたどり着くと、再び不思議な光景に出会う。
「あれ?良く見えないけど、穴がふさがっている?」
アングリーが破壊したはずの壁がふさがっていたのだ。
もし、最初の部屋の壁を直した人が、そこの壁も直していたとしたら、その人はとにかく、壊れた壁が許せないのだろうか。
そんなことを考えて、彼女は先を急ぐ。
すると再び───
ドカンと音がして、アングリーが壁を破り現れた。
メアリーは、「また!?」と驚きの声を上げつつ、彼から逃げ出す。
「どうしてまた?あの化け物が現れたの!?」
そんな疑問を抱く彼女の隣に、再びあの男が現れた。
「か、彼は『アングリー』。『喜怒哀楽団』の『憤怒』担当者だよ。」
あの、長身の男がいたのだ。
「!? お前!!」
メアリーは突然、彼の胸ぐらを掴んだ。
「私を騙したわね!! この先の分かれ道を『お箸を持つ方』なんて、言うなんて!! それに騙されて、私がどれだけひどい目にあったか!」
彼女にそう責められ、彼は驚いたように返す。
「な、何を言ってるんだ?僕と君は初対面でしょう?
けれど、まぁ、確かに、この先の分かれ道が『お箸を持つ方』なのは合っているぞ。」
彼の言葉に、メアリーはさらに憤怒する。
「はぁ!? まだそんなこと言うの?右には落とし穴と、罠しかなかったわよ!!」
しかし、長身の男は困ったように答える。
「そりゃそうでしょう。右はお茶碗を持つ方だ。僕が言っていたのなら、『お箸を持つのは』左の方だ。」
その答えに、メアリーは「えっ?」と驚く。
考えてみればそうだ。話している相手が必ず右利きであるとは限らないのだ。
「もう、手を放してもらってもよろしいですか?これじゃあ、走りづらくてしょうがない。」
長身の男にそう言われたメアリーは、手を放す。
「彼から逃げる道が知りたいのなら、僕に付いてくればいい。いちいち突っかからなくてもいいんだよ?」
彼はそう言って、先に行く。
メアリーは彼の後を付いていった。
そして、分かれ道を左に行くと、そこには小さなタンスのような扉があった。
「ここなら小さいから、アングリーは追ってこれない。さぁ、こっちにおいで。」
男は、そのタンスのような物へと入っていった。
メアリーも後を追うようにそこへ入る。
そしてそれは、長い長い廊下となっていたのだった。
次回予告
長身のピエロと共に逃げることに成功したメアリー。しかし、億秒過ぎた彼女は、「先に様子を見てくる」という、ピエロを追いかけることが出来ず…。
次回 第2話 臆病者