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誘拐されたおっさん2

 俺は王女の側近ベルトランに誘拐され、牢屋の中で収容されている魔人たちを目の前に立ちすくんでいた。


「この者たちは全員、いずれ処刑されてしまう魔人もどきだ。こいつらを貴様の能力で浄化してみろ」


 その檻の中にいたのは禍々しい雰囲気を漂わせている灰色の肌と虚ろな眼をした集団だった。


「こいつらは元々犯罪者だ。牢屋に入れられ飢えて魔人に変異した。ゲイブランドの魔人共とは違い自制も効かない。こうなっては処刑するしかない」


 檻では老若男女が口からよだれを滴らせながらこちらを威嚇している。


「これは国王が決めたことなのか?」


「ああ、そもそもの始まりは呪いが王国にばら撒かれたときだ。王都ではまだ被害が無かったが事態を重くみた陛下は貧しい者を王都の外に追い出した」


 俺の言葉に苦々しく返答するベルトラン。


「これは陛下と宰相の決めたことだ。貧しい者たちは食料不足でこのように魔人もどきになりやすいので処分する。これこそ不都合な王国の現実だ」


 なるほど、こうやってセデリア王国は貧困層や魔人になった人間の管理をしている訳か。どおりで食料が少ないと言いつつ街中では飢えている人間を見ないはずだ。


「しかし本来は貴様も路頭に迷い、灰魔の呪いによってこのように魔人になっていたかもしれないんだ」


 ベルトランは檻の中の魔人化した人間を見てため息をつく。


「もし貴様の【業務用スーパー】とやらで魔獣だけでなく魔人も浄化できるのであれば話は変わる。だからそのスキルをこの魔人相手に試して欲しい」


 相手が魔人だとしても俺のスキルは変わらないような気がする。屋敷を襲った魔獣と同じく、魔人になってしまった人間もこのスキルで元に戻せるはずだ。


 俺は【業務用スーパー】を発動して手軽に食べることのできるパンを取り出した。


 檻の中にパンを投げてやると魔人たちはそれを一目散に食べ始めた。これは屋敷の周りにいた魔獣たちと同じ反応だ。


 そして食べ始めると予想通り徐々に灰色の肌が元に戻り完全に元の人間に戻った。檻の中にいる元に戻った人間たちは何が起こったか分からず茫然としている。


「なんだこれは・・・」


 ベルトランは目の前の魔人もどきが人間に戻ったことに驚愕していた。


 元の牢屋に戻るとベルトランは誰にも聞かれていないか周りを見渡してさっきよりも小さな声で質問した。


 「その能力は異常だ。それを使って貴様は何を考えている?」


 今までただ自分の気の向くままに生活してきただけなんだけどな。こんなスキルがあったとしても俺は本当に何も考えていない。それを再度伝える羽目になった。


 強いて言えばセデリア王国はゲイブランド魔人国と争いをしているらしいが早く終わって欲しい。


 もしあの屋敷が戦争なんかに巻き込まれたら目も当てられない。早く魔獣や魔人がいなくなり戦争がない世界になって欲しい。


 「俺はただ平和な世の中になって欲しいだけだ。出来るならこの世の中から魔獣や魔人がいなくなって欲しい」


 その言葉にベルトランは驚愕した。 


 「この国の将来を見据えていると言うのか・・・」


 どうやらベルトランは人の話を聞かないタイプらしい。


 残念だが俺は王国の将来など見据えてない。あの屋敷に魔獣が近寄らなくなり、なおかつ国同士の争いに巻き込まれなければ他はどうでもいいのだ。


 それからベルトランは次から次へと質問をした。野菜畑のことや異種族のこと、クラリスやドロシーとなぜ一緒に暮らしているのか等。


 野菜畑はバランスの良い食事のためにやっているだけだ。それはイリスやクラリスやドロシーのためでもある。


 この世界に栄養の概念がまだ浸透していないのがものすごい不安だ。俺が料理を食べさせながら栄養などをあの小娘たちに教えなければならない。


 何故か騎士団や魔術師団の連中にも飯を食わせてやっているが、それも料理が好きで何となくやっているたけだ。


 異種族の件も飯を食わせていたら勝手に魔獣が浄化して懐かれ、結果として一緒に暮らす羽目になった。大したことではない。


「では最後に国王陛下やアナスタシア王女殿下をどう思うか聞きたい」


 ベルトランは神妙な面持ちで聞いてくるが俺は残念ながら国や政治のことにはあまり首を突っ込みたくはなかった。

 

 自分のスローライフ計画で精いっぱいというのもあるが、前世の記憶から何となくそういったものに関わるとろくなことがないと本能的に察していた。


 ただ部外者として思うことはある。それはあの国王よりアナスタシア王女のほうが能力がありそうだということだ。


 一連の質問に答えるとベルトランの顔は驚いたり謎の笑みを浮かべたりしていた。冷静そうに見えて感情の起伏が激しい人物のようだ。


「もしかしたら貴方が私たちの救世主かもしれない」


 牢屋から解放されたとき去り際にベルトランはそう言った。


 よく意味は分からなかったが何かの助けになったのであれば幸いだ。こちらとしては急に人を誘拐するような奴とは二度と関わりたくないけどな。


 しかし、このベルトランとの会話がきっかけでアナスタシア王女に俺のスキルや生活全てがバレてしまうことになった。

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