表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/107

XXX わたしのメイド、フィル!

 王宮ではメイド服まで豪華なのか、白い布地に綺麗な金色の糸で刺繍が縫い付けられている。

 ふわりとしたスカートは、ぱっと見ただけで高級品とわかった。頭には愛くるしいデザインのカチューシャがついている。


 メイド服だから当然女物の服で、それを着ているのも、どう見ても黒髪の可愛らしい少女だ。


 ただ、わたしはその子が女の子じゃないことを知ってる。


「ふぃ、フィル……!?」


 わたしの言葉に、メイド服を着たフィルが顔を真赤にした。

 どうしてフィルが女装しているんだろう?

 

 部屋の檻の前で、シアがしれっとした顔で言う。


「男性はクレア様との面会が認められないので、フィル様には女装してもらいました」


「な、なるほど……」


 わたしはつぶやいて、あらためてフィルをじっくりと眺めた。

 黒い綺麗な髪に可愛らしいリボンもつけていて、スカートの裾の下には、白くほっそりとした足が見えている。

 黒い宝石みたいな瞳は、とても恥ずかしそうに潤んでいた。


 フィルには悪いけど……かなり似合っている。

 思わず、檻をつかむ手に力が入る。


 監禁されていなければ、フィルを抱きしめたいところだけど、あいにく部屋の手前の檻が邪魔をしている。


 シアが言う。


「王太子殿下は、侍女一人のみなら、クレア様のおそばにいてもいいとおっしゃていました。そうでないと気が滅入るだろうから、と。つまり、同じ部屋で寝泊まりするということですね」


「なら、アリスが……」


「いえ、アリスさんには、クレア様の解放のために働いてもらわないといけません。本当だったら、ぜひ……ぜひ、私が一緒の部屋で寝起きしたいところなのですが……」


「シアも他に用があるのね?」


「はい。私も一緒になって監禁されてしまってはクレア様を助けることができませんから」


 たしかに、そうだ。

 王太子の監禁から、私を救ってくれそうなのは、シアとアリスぐらいだ。


「そこでフィル様の出番です。クレア様のそばに、フィル様は侍女として仕えていただきます」


「へ? でも……フィルって男の子……」


「だから、女装していただいているんです」


 フィルと二人きりで一緒の部屋……。

 悪くない。


 悪くないけど、監禁という状況でなければもっといいんだけれど。

 シアによれば、これはアリスの提案らしい。「フィル様が一緒にいるのが、クレア様にとっては一番いいでしょうから」というのがアリスの言葉で、シアもしぶしぶそれにうなずいたらしい。


 やがて王太子の部下らしき人がやってきた。その人が檻の鍵を開けてくれて、フィルはしれっとわたしのメイドということで、部屋の中に入った。


「いいなあ、クレア様と一緒の部屋……」


 シアは小さくつぶやきながら、王太子の部下とともに、名残おしそうに去って行った。


 残されたのは、わたしとフィルのみとなる。

 メイド服のフィルがおずおずとわたしを見上げる。


「あの……お姉ちゃん」


「なに?」


「ぼくのこの格好……変じゃない?」


 わたしはにっこりと微笑んだ。


「ぜんぜん! とてもよく似合ってる!」


「……あ、ありがとう」


「すごく可愛い!」


「ぼく、喜んでいいのかな……」


 フィルが複雑そうな表情をして、首をかしげる。

 わたしは、カチューシャのついたフィルの頭を軽く撫でた。


 フィルのメイド服姿なんて、なかなか見れない。


「フィルがわたしのメイド……。ね……メイドっぽいこと言ってほしいな」


 わたしがフィルの耳元でささやくと、フィルは顔をますます赤くした。

 そして、小さな声で言う。


「お……おかえりなさいませ、クレアさま」


「やっぱり……フィルって可愛い。まるで妹みたい」


 そう言うと、フィルは涙目で頬を膨らませた。


「ぼ、ぼくはクレアお姉ちゃんの弟だよ」


「うんうん。わかってる。だからね、お屋敷に戻ったら、わたしのドレスを着てみない?」


「わ、わかってない……」


「きっと似合うと思うの」


「そ、そうかなあ。……でも、クレアお姉ちゃんが見てみたいなら、一度ぐらい着てみる」


「楽しみにしてるね、フィル」


 わたしはもう一度、フィルの頭を撫でると、フィルはこくっとうなずいた。


 さて、屋敷に戻るには、王太子の監禁から逃れないといけない。

 問題は、どうしてわたしが監禁されているのか、だ。

監禁令嬢クレアとメイド少年フィルの生活の始まり。次回は土曜日ぐらいの更新です。


面白い、続きが気になる、という方は


・ブックマーク


・評価の「☆☆☆☆☆」ボタン


で応援いただきますとととても嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 男の娘キター!どさくさにお姉ちゃんのドレスを着る約束を取り付けるなんて、なんて卒がないんだ!!
[一言] 【覚醒】僕っ子男の娘弟メイドに萌える姉が何かに目覚めそう、って言うか目覚めた件【爆誕】 ……残念ながら手遅れです……
[一言] まさかの斜め上の蜜月生活(ノ∀`) 監禁からの大逆転!弟オトコの娘メイド御奉仕同棲 主人公このままで良いとか言い出しそう
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ