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トーチ・リリィの行方  作者: 鈴木 澪人


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3/10

回想 後編

中編の上を先に投稿しています。もし読まれていない場合はそちらからお読みください。

あと、お察しの通りちょっと胸糞回です。


引き続きダーヴィ視点のお話しです。(中編の上にも書かなくちゃ)

 それから8年、私は軍の学園を卒業し一兵卒として活動を始めた。

まあ、何年か下積みを終えればすぐに下士官にはなれるのでそこまで焦ってはいなかった。

リエルを迎え入れる頃には士官にはなっていたいと考えていたが。


リエルには休暇ができると会いに行っていた。

その時々の流行りの者を周囲に聞きながらこまめにプレゼントしていた。

おかげで同僚にはよくからかわれていた。



  その日はリエルの誕生日の前日だった。当日は仕事が入っていたので会えないと思い前日に会いに行くと伝えていた。


「ターヴィお兄様!」


リエルは嬉しそうにこちらを見て私に微笑みかけてくる。


「私ね。もうすぐ退院できそうなの!」


リエルは嬉しそうに私に報告してくれた。実は、リエルの父君からすでに報告は受けていたので驚いたふりをした。


「そんなんだね!私がリエルの誕生日に驚かせようと思ったのにリエルにサプライズをもらってしまったね」


リエルの完治が医者に認められるまでそのガラスに覆われた部屋からは出ることが出来なかった。私が昇進するにつれ部屋も大きくなっていったがベランダから外に出ることができるのは一週間に数回だけらしい。


「私ね、ターヴィお兄様といっぱいお話ししたいわ」


「もう少しで退院できるのだからがんばろう。私もがんばるよ」


いつも世話をしてくれている弟の方に持ってきた花束を委ねると小さく頭をさげてそのままリエルのいる部屋に入っていきそっとその花束を渡した。

リエルは嬉しそうにその花の香りを堪能すると、その使用人に花瓶に生けるようにお願いしていた。


「このまま退院できずに、おばあちゃんになってしまったらターヴィお兄様に嫌われちゃうって思っていたのよ!」


「そうなる前に、私がこの部屋に力づくでも入室させてもらうよ」


私がそっと、ドアノブを触ると


「ダメダメ、お兄様にこんな思いをして欲しくないの。」


リエルはベッドから立ち上がりそちらがわのドアノブをそっと握った。


「私ねこの歳まで生きられるって思ってなかったの。本当にダーヴィお兄様のおかげ。」


リエルはガラス越しの私の頬をそっと触る仕草をして


「これからはずっと一緒に・・・」


リエルがその言葉の続きを伝えようとすると


「リエルお嬢様、ベッドに戻りましょう。まだ体力がついていません」


花を生け終えた使用人がリエルの手をそっと握りベッドへ誘導していった。


「君、いつもリエルの世話をありがとう」


私は感謝の言葉を述べるとその使用人は頭を下げながら


「私の生涯はリオル様に捧げていますので」と言った。


「これからもよろしく頼むよ」


「はい」


私は彼に感謝の言葉を伝えそのまま病室から退室した。




「で、今日は愛しい婚約者かっこもうすぐ妻になる人のお誕生日なのにこんな作戦会議を開こうとしてやがるんですか?」


腐れ縁で私と同じ隊に入っていたアハトは呆れながら話しかけてきた。


上官(隊長)の招集命令を断れる軍部があるのなら、私はそこへ転職したい」


リエルに少し会いたくなっていた私は思わず本音を漏らすと


「次期隊長が、恋人に会いたいって言ってますよ〜!隊長!今日の作戦会議を明日に延期するのは駄目ですか~?」


アハトはいつものようにデリカシーのない発言を隊長にしていた。


「おっ、いつもはお堅いターヴィ君も恋人の事となるとプライベートを優先したくなるんだな。ん?お前の恋人病気が完治して退院予定なのか!じゃあ、仕方ないか!今日の会議は明日の10時に変更だ。はい、解散・解散!」


「ねっ、言ってみるもんでしょ?」


アハトは私の肩を組みながら自慢げに話しかけた。


「今日のところは認めよう・・・。だが、明日は仕事が倍になるから覚悟しとけよ」


と言ってアハトの腕をどかしながら職場を離れた。


「アハト、ありがとう」


じゃあ、またなのつもりの言葉を間違えてお礼を言ってしまったらしい。


「おっ、おう」



 私は、病院に寄る前に流行りのお菓子を買ってから病室に向かった。

少し面会時間が過ぎていたが私の顔をみて看護師たちが多めに見てくれた。


私は、歩いているつもりが少しずつ速足になって気が付けばリエルの病室の前に立っていた。息を整えてノックをし病室に入っていった。


ガラスの仕切りの部屋にはリエルの姿が見えず、少し探すとベランダに出ていた。

風が冷えるのではと思っていると


「リエルお嬢様、これをお掛けください」


といつものように使用人の男性がリエルに気を使っていた。


「ありがとう」


リエルはそのブランケットで体を包むとその上から男の使用人がそっと抱きしめた。


「マイルズ・・・」


「リエルお嬢様は病気が完治するとあのお方と結婚されるのですか」


二人の会話は病室の外のはずなのにきちんとマイクが音を拾っていた。


リエルは外を眺めながら


「そうよ。私はターヴィお兄様と結婚いたします。それは貴方が私専属になってからずっと聞いていた話ではないの?」


私の知っている弱弱しいリエルではなく、淑女としてその使用人に対応している彼女を見るのは初めてだった。


「それでも私は貴方をお慕いしております。この思いが実らなくても傍で仕えることをお許しください」


リエルをそっと抱きしめるそいつとそれを許しているリエルを見ていると私は胸から異物がこみあげてくる。


「思う事は・・・自由よ」


どうやらリエルはそいつの思いを拒絶するということはないらしい。

私は、持っていたお菓子を病室の机にそっと置くとそのまま部屋を出た。


 気が狂いそうな感情の自分と冷静にこれからの事を考える自分がせめぎあいながら気が付くと実家にたどり着いていた。


ずっと軍の寮に住んでいる為突然帰ってきた私をみて家族がとても驚いていた。



すぐに父親に呼ばれ私は部屋に向かった。


「どうしたんだ?何か仕事でトラブルでもあったのか?」


心配そうにこちらをみる父親に軍の病院の資料を請求しこの家に送るので受け取って欲しいと伝えた。


「ああ、分かったよ。その内容を私はみてもいいのか?」

「はい、大丈夫です。」


私は、それだけ伝えるとそのまま家を出た。

父親はせっかくなので夕食をと誘ってくれたがこの荒れ狂いそうな感情を家族に見せたくはなく丁寧に断った。



 次の日から一週間ぐらいは私の記憶が定かではなかった。

ただ、事務的に仕事を行い。病院の記録を申請し、任務をこなしていった。


病院の資料が届いたと家の方から連絡があったので私はそれを受け取りに行った。


二週間ぶりの私の姿を見た家族は、驚き声を掛けることを躊躇していた。


「よく帰って来たな。さっそくだが私の部屋へ」


父上の背中を見ながら後を付いていった。


「座りなさい」


私はソファーに座ると、目の前の机には病院の資料と封筒に入った手紙が置かれていた。

父親もソファーに座ると


「・・・病院の記録を見せてもらった。随分とあの二人は昔から親しい関係だったようだ。もちろん男女の関係はない。彼女が元気になったのはここ数カ月の間だからな」


それからも父親の説明は続いた。

彼は、マイルズ・タックラという昔からダレーマ家に仕えていた下級貴族らしい。

リエルとはいわゆる幼馴染の関係で彼女より二つ年上だそうだ。

マイルズはリエルを忘れることができず、献身的に看病や身の回りの世話をしているうちに純愛と呼べるものを育んだらしい。


 それらを指し示す写真がその病院からの資料にたくさん挟まれていたようだ。


それから父上はもう一つの手紙の方に視線を寄こすと


「これはダレーマ当主からの手紙だ。君が病室に来たことは記録から分かるからな」



手紙の内容は私への謝罪と二人への処罰の内容だった。


「マイルズは、厳しい戒律のある修道院へリエルとの結婚はターヴィに任せるとのことだった」


私がわざわざその手紙に目を通さなくてもいいように父上が予め確認してくれていたことに感謝をした。


「で、ターヴィはどうするんだ?」

「タックラとリエルの処罰は要らないとお伝えください。そして二人で仲睦まじく暮らすようにと」


「ターヴィ!!」


私の考えに納得のいかない父上は大きな声を出し私に考え直すように言った。


「おまえは、おまえ一人がそんなに苦労する必要はないだろう!もっとペナルティを与えるべきだ!」


父親は握りしめた拳を机に叩きつける。ドンっと鈍い音が部屋に広がった。


「父上、私は疲れてしまったのかもしれません。15歳の時に軍の学校に入り8年。がむしゃらに色々なものと戦ってきました。でも、負けたのです」


「ターヴィ」


「私は、『献身』に負けたのですよ。父上。敗者には何も残らないものです」


「ターヴィ・・・」


父親はそれ以上私になにも言わずに「分かった」とだけ述べた。


「それと、ダーレマ当主がお前に直接謝罪したいと言っていたが」


その言葉に私は首を静かに横に振った。


「分かった。こちらから断りを入れておこう」


「ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします」


私はソファーから立ち上がると深く頭を下げた。

すると、父親は私に近づきそっと抱きしめた。

いつの間にか父親の身長を超えていたが心の中にいる15歳の私は父親にしっかり抱きしめられている感覚がした。


「ダーヴィの人生をきちんと歩むように」


父親は砂を吐くように苦々しく私に言葉を送った。



 それから数か月後、下級貴族のマイルズ・ダックラと()()リエルの結婚が静かに行われたという知らせを父親から伝えられた。



 思いのほか早く上げれて良かったっす!!


最後までお読みいただきありがとうございました。

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