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トーチ・リリィの行方  作者: 鈴木 澪人


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緊急任務

「もう、声も思い出せないのか・・・」


心の中で呟いているつもりがうっかり声に出してしまった。


隣で小さく笑う同僚がいた。


「ターヴィ、大丈夫か?」


笑いながらも心配してくれるのが彼らしい。


「ごめん。大丈夫だ。早くここの任務を終わらせよう」


話すたびに白い息が口元を覆う布から漏れてくる。


「まったく、とんだ貧乏くじを引いたもんだよな。ここら辺ってボス級が出るんだろ?」


昨日確認した資料を思い出しながら静かに頷いた。


「そうだな。本当はアミントレ組の担当だったんだけどな」


「あ〜奥さんが出産したからな〜。仕方ないか」


「俺たち寂しい独身貴族だもんな」


「ターヴィは生粋の貴族だろ」


先に自分の担当を終えたアハトが手持ちの端末でデータを打ち込み始めた。


「自分の事を俺って言ってる時点で貴族失格だよ」


そんなもんかねぇ〜とアハトは一度手元を止めてターヴィの作業風景を見学する。


自分よりも複雑な作業を綺麗な所作で要領よくこなしているターヴィを見て

これで貴族じゃないって言ってたらアミントレとか暴れだしそうだなっと暴れているアミントレを想像してアハトは笑いを噛み殺した。


「アハト副隊長、余裕がおありかもしれませんが今回は危険度が高い任務です。最後まで気を緩めぬよう」


油断しているアハトを意識高い系貴族風に注意したターヴィは、自分の作業を終えアハトと同じく端末にデータを打ち込んでいく。


「これは、ターヴィ隊隊長殿申し訳ございません。ついでに、データの送信も完了したことを報告いたします」


アハトは【ACCEPT】と表示された画面をターヴィに見せた。

ターヴィは自分の手の甲側の手首に刻印されているバーコードをその端末に翳す。

相方の確認も終了した後、作戦本部に送信されるシステムだ。

「じゃあ、俺の方もよろしく」


ターヴィも同じ画面をアハトに見せると同様に自分のバーコードを端末に翳した。

すると、二人がつけていた耳の後ろの骨伝導型イヤフォンから撤退の音声が聞こえる。


「それでは我らの恋しい基地に戻りますか」


アハトは軽口をたたきながら立ち上がった。


「恋しいのは基地じゃなくて恋人だろ」


「アハッ、バレちゃいました。まあもうすぐ恋人じゃなくて妻になるんですけどね~」


「お先に独身貴族を卒業してごめんなさいね~。でも、ターヴィ隊の事は嫌いにならないでっ!」


どこかで聞いたことのあるフレーズでターヴィをからかうと


「この前、女の子がいっぱいいるお店に隊全員で遊びに行ったことを告げ口してやろうか」


ニヤリと笑いながらターヴィも反撃した。


「わっ、わっ。あれは俺の独身最後のお遊びって話だったじゃないですか!」


ターヴィに駆け寄りながらアハトが止めてくれ~と詰め寄っていると


『こちら、D25作戦本部 ただいまより転送準備にとりかかります。安全装置を確認のうえ準備が出来次第コマンドを送ってください』


「ほら~、心配で奥さんがオペレーターをしてるじゃないか」


「えっ、マジ?マナ今日は非番じゃなかったけ?」


アハトは恋人のマナの声を聞いて慌てていた。


「アハト・・・。今日の任務自体を秘密にしてたのか?」


ターヴィは帰還の準備をしながらジト目でアハトをみた。


「急な緊急依頼だったので話す時間がなかっただけです・・・」


ターヴィは溜息を付きながら


「任務の内容は守秘義務だが、任務があることは伝えろと日ごろから言っているだろ。

 何があるか分からないんだからな。残された・・・」


「あ〜隊長のお説教は基地で聞きますから!とりあえずこちらは帰還準備完了です。」


アハトが急いで帰還コマンドを端末に打ち込んだ。

システム的にすぐにターヴィも端末にコマンドを打ち込まないといけないので無意識に自分も帰還コマンドを打った。


『こちら、D25作戦本部 メンバーの帰還コマンドを確認しました。30秒前からカウントダウンを始めます。』


オペレーターのマナのカウントダウンが始まった。


「あ~、マナにもお説教くらうわ~」


アハトが頭を抱えながら唸った。


「まあ、注意してくれる人がいるだけありがたいと思え」


ターヴィは笑いながらアハトの肩を叩いた。


マナは意外としつこく怒るんですよぉ〜。とアハトがボヤいていると

さっき設置したばかりの装置が反応した。


「あ~、お説教は延期っぽいですね~」

アハトがコマンド解除のボタンを押そうとした時


「うっ」と短い唸り声を上げてアハトがそのまま後ろに倒れた。


「アハトっ!」


ターヴィが振り返るとアハトの右わき腹にナイフのような形の何かが刺さっていた。

ターヴィは緊急シールドを張ると


「異常事態発生!アハトがやられた!救護班を転送先で待機させるように。私はこのまま対処する」


『こちら、D25作戦本部 ・・・カウント中止直ちにアハト副隊長を帰還させます。

 ・・・ばかっ。最後に気を抜きやがって』


最後にマナの普段の口調を聞いたターヴィは少し笑った後


「大丈夫だ。致命傷ではない。後は頼んだ」


『こちら、D25作戦本部 ターヴィ隊長の無事の帰還をお祈り申し上げます。』


その声と同時にアハトの体が消えた。残っているのは負傷した時の血液だけだった。

ターヴィはそれを素早く魔術で焼き尽くすと改めて敵の確認をした。


「さてと、俺一人でなんとかなる相手なのかなっと」


アハトが倒れてから追撃をしてこない時点でターヴィは嫌な予感がしていた。


「わざわざ、待っていただいて俺に用事があるのか?」


ボス級の魔物は魔族と呼ばれ言葉を操ることができる。そして、知能も高いと認知されていた。


ターヴィの言葉で、目の前に現れたのは一見人にしか見えない何かだった。

その造形は人が見ても美しいと感じることができる何かだった。


「これは、大変麗しい方が俺の相手ということか・・・」


すなわち強いと同義だった。


あ〜手持ちの武器で間に合うかなぁ〜。近接戦はいやだなぁ〜。

と小さくぼやきながらターヴィは魔術が刻印されている銃で相手を狙った。


そして、呪文を唱えてからトリガーを引くと光った弾丸が相手に向かって放たれた。

それは、相手の肩に当たり相手は思わずその穴の開いた肩を確認した。


 ヨシッ、貫通できたか!?


ターヴィは勝機を見出しそのままアハトが受けた鳩尾(二発目)左太もも(三発目)と打ち込んだ。

そのたびに相手は衝撃を受けてビクッビクッと震える。


 このままコア(心臓)を撃ちぬきたいが、コイツのコアの場所が分からん。

 とりあえず距離をあける為に何処かに転移しようか・・・。


ターヴィの思考はそこで止まった。


「いっいつの間に」


ターヴィの背後に立ったそれは首元に集約されている機械を首根っこを掴むように容易に壊していった。


 あっまずっ。これで人体()飛ばす(転送)ことができなくなったわ。詰んだかも。


そのまま機械を壊した指が今度はターヴィの首を掴みだした。

思いのほか指先は冷たいんだなと冷静に思った。


 はぁ〜握り潰される(首を)パターンか・・・。一気にやってくれないかな。


ターヴィはこの時点で生きる希望を捨てた。アハト(部下)が無事だったら上官としては上出来だと思った。そして、その時が来るのを目を閉じて待った。


恐怖の時間は短時間でも精神的にしんどい早くなってくれないかと瞑っていた目を開き相手に視線をやった。

しかし、相手はターヴィを見ずに首元にあるドックタグを見つめていた。

そして、それを一気に引き剥がした。


「イッた」 勢いよくタグを取ったので首元にうっすらと切り傷のような筋ができた。

相手は、ドックタグを魔法で浮かび上がらせるとそのままどこかへ消し去った。


 ああ、これで俺の死亡確認もできなくなったな・・・。


とぼんやり考えていると


「ヒッ」


首元にヌルっと何かが伝わった。ターヴィは精神的には見たくなかったが無意識に視線をやってしまった。すると、その美しい男性体が口元だけを上げてから


「色々思念がうるさいヤツだな」


低く艶やかな声でそう告げると舐められた所を思いっ切り噛みついた。


「あああっ」


恐怖と痛みでターヴィはそのまま気を失った。


美しい男性体は、ターヴィの体を巡っている血液を全て回収する(吸い取る)と球体にまとめ、そのまま()()で焼き尽くした。代わりに魔力が詰まった銀色の液体を噛みついた場所から流し込んだ。 

首元だけを持っていたターヴィは全身の力が抜けていたので、男性体はそっと姫抱きに抱きなおした。


そして、ターヴィの顔を見た後


「ようこそ、こちら側の世界へ。生きる気力のない者よ。」


そう言うとそのままターヴィを抱いて来た道に戻っていった。




 ターヴィ達が設置した機械は警報を解除し、通常運転を始めた。


失恋ものが書きたかったのですが。ん?あれ?


最後までお読みいただきありがとうございました。

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