母親と父親と医者に赤ちゃん演技がばれた。
「おいおい、先生。どういうことだよ。わしは何だか鳥肌が、さぶいぼが出て来たぞい」
「落ち着いて下さい。バデスさん」
「これが落ち着いてられるかってんだい。先生。わしは今までこんな赤ちゃんを見たことがないぞい。先生は見たことあるんかい?」
「いえ、私も見たことありません。こんな生まれたばかりで言葉を、しかも突っ込みまで入れる赤ちゃんは。しかし、どうか落ち着いて下さい。そして恐怖を感じないで下さい」
「それが出来れば苦労はせんわい。誰だって自分の知識や常識を大きくぶち破る存在に出会ったら恐怖を感じざるを得ないわい」
「それは確かにそうです。私だって、今この赤ちゃんにある意味恐怖を感じています。しかし、私にはこの赤ちゃんが恐ろしい存在だとはどうしても思えないのです」
「それはどうしてじゃい?」
「それは、目です。この赤ん坊の目が、とてもピュアで澄み切っているからです。と、同時にこの赤ん坊は私達に対して、不信感、あるいは私達がこの子に感じているような恐怖をこの子もまた私達に感じているように感じられるのです」
「どういうことだい?」
「それは分かりません。しかし、この子もまた、私達が何者かということを探っているように思えるのです」
「つまりそれは、こういうことかい? 宇宙人が、俺達を監視する目的で赤ん坊として生まれたと、そういうことかい?」
「違います。この子はたぶん、自分が生まれたこの世界が不思議でしょうがないのです。私達がこの子に不思議を感じているように。つまり、この子はある種の迷子のような者ではないでしょうか」
「迷子?」
「ええ、今までこの子がいた世界から、今までいた世界とは全く違うこの世界に何らかの原因で送られてしまった、ということです」
「そうなのか? 坊や」
父親が俺に聞いた。
くそうっ、ここで、ばぶーなんて誤魔化した所で、すぐに嘘は見破られてしまうな。それに俺がさっき、ばぶーなんて、赤ちゃんぶったことが、逆に、演技したことによって、更なる恐怖をこの三人に生んでしまったことは否定できない。演技することによって、赤ちゃんになり切ろうとしたことで、この三人に、この赤ん坊は、俺達をだまそうとしているという、不安をかきたててしまったからだ。だから、もう演技するのはよそう。演技をすればするほど、泥沼にはまっていくからだ。ここは誠心誠意を持ってこの三人に話をつけよう。
俺はそう思った。




