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再会。  作者: 式部雪花々
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-3-

「・・・美。」




・・・ん・・・




「・・・愛美。」




・・・誰?




「愛美ってば!」


聞き覚えのある声の主は返事をしない私のおでこをパチンと叩いた。




「・・・っ!?」


驚いてハッと顔をあげた瞬間、見覚えのある景色と


見覚えのある顔が視界に入ってきた。




「愛美・・・?」


見覚えのある顔・・・会社の同僚・塚田智子が私の顔を覗き込んでいる。




智子・・・私が見えるの?




「愛美、大丈夫?」


智子は私の目の前で掌を左右に振っている。




完璧、私が見えてるリアクションだよね?




「・・・智子?」


私は智子を呼んでみた。


「ん?」


返事をしたって事は私の声が聞こえているの?




「私が・・・見えるの?」




「はぁ?」


智子は素っ頓狂な声をあげた。




「愛美・・・ふざけてんの?」




「・・・。」




「もしかして今、寝てた?」


智子は少し呆れた顔をしている。




寝てた・・・?




「・・・愛美?」




「・・・私・・・今、どうしてた・・・?」




「どうしてたって・・・私と話してたかと思ったら急に反応しなくなって、


 俯いてずっと下を向いてたよ?」




「・・・どれくらい?」




「んー・・・10分弱くらい?」




じゃ・・・あれは、夢・・・?




白昼夢・・・?




「私・・・死んでないよね?」


「へ?」


「智子・・・私のお葬式行った?」


「・・・な、愛美・・・?」




私は自分の掌と足をじっと見つめた。




体が・・・ちゃんとある・・・。




「愛美・・・疲れてるんじゃない?」




・・・疲れてる?




「ここんとこずっと遅くまで残業続いてたでしょ?」




確かにずっと残業続きだった。




・・・夢だったのかな?




「今日は早く帰ったほうがいいよ?」


智子はそう言うと私の顔を心配そうに覗き込んだ。




「う、うん・・・。」




時計を見ると、昼休憩が終わる5分前だった。


私と智子はいつも会社の屋上でお弁当を食べている。


だけど今日は・・・お弁当を食べた後あたりから記憶がない。




やっぱり・・・あれは夢だった・・・?






部署に戻って、自分の席に座ると携帯が鳴った。


康成さんからのメールだ。




−−−−−


話したいことがあるから今日、会社が終わったら


いつもの店で待ってて。


−−−−−




私はそのメールを見て少し震えた。




夢の中と一緒だ・・・。




夢の中で康成さんに呼び出された時と同じメールの内容。




そして・・・今日は6月7日。


私の誕生日の一週間前・・・。






夕方、定時を1時間ほど過ぎた頃。


康成さんはいつも少し残業をする。


だから会社帰りに待ち合わせする時は私も少しだけ残業をしている。


そして会社から少し離れた喫茶店で待ち合わせ。






私が喫茶店に入ると珍しく康成さんの方が先に来ていた。


「ごめん、待った?」


私がそう言うと彼は無言で首を横に振った。




彼の目の前に座り、口から出る言葉を予想しながら待った。


康成さんはあの夢の中と同じ顔をしている。




そして・・・




「俺と別れてくれ。」




・・・やっぱり。


予想通りの言葉に私は驚きもしなかった。


夢の中とは言え、一度聞いてるしね。




・・・けど、ここからの私は夢の中とは違う。




「子供でも出来た?」


少し冗談っぽく笑いながら言った私に、康成さんは驚きを隠せないでいた。




「相手は・・・佐伯さん・・・でしょ?」


追い討ちをかけるようにちょっと真顔で言ってみた。




「・・・知ってたのか・・・?」


康成さんは少し震えた声で呟いた。




あっさりと認めた彼に私は夢の中で思ったことを実行した。




パンッ・・・!


乾いた音が響いた。




そしてその後すぐに


パシャッ!


水の音。




私は彼の左頬に思いっきり平手打ちをお見舞いして


水をぶっかけてやった。




「さよなら。」


喫茶店の中のお客さんが注目する中、私は彼の前から姿を消した。




あんな男こっちから願い下げよ・・・!






喫茶店を出た後、私は真っ直ぐアパートに帰る気にもなれず、


ただ歩いていた。


だけど、夢の中のようにふらふらじゃない。


意識だってちゃんとある。




横断歩道の手前で信号待ちをしている一台の黒い車の横を


通り過ぎようとした時、運転席から一人の男性が降りてきた。




・・・ん?




「ナルッ!?」


その男性は私を見るなり、小さく叫ぶように言った。




「・・・っ!?」




私の事を“ナル”と呼ぶのは一人しかいない・・・。




嘘・・・。




広瀬先輩・・・?




目の前まで近づいてきた男性の顔を恐る恐る見上げた。




夢の中の広瀬先輩と同じ顔・・・。




「広瀬先輩・・・?」




「やっぱり・・・ナルだ。」


私が広瀬先輩と呼びかけると、先輩は嬉しそうな笑みを浮かべた。




「ホ、ホントに広瀬先輩・・・?」


「うん!俺だよ。」


その言葉に私も思わず笑みがこぼれた。




先輩とは夢の中でしか会えないと思っていたのに。




会えた・・・




先輩と会えた・・・!




「・・・先輩っ!」


思わず私は広瀬先輩に抱きついた。




「・・・えっ・・・ちょ・・・ナルッ!?」


先輩はちょっと戸惑っている。




だけど・・・そんな事はお構いなし。




だって・・・だって笑って再会できたんだから・・・。

最後までお読み頂きありがとうございました。

続編も予定していますので、また続編でお会いできればと思っております。


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