エピローグ
空が落ちるとは、まさにこのことを指すのかと思われた。
日本時間2035年11月17日、午前0時2分から1時7分までの約1時間。
世界中の人々が地球の終わりを想起するほどの、大量の流星が地球に降り注ぐ。
空を覆いつくす星の輝きに、暗闇は行き場を失い、月明かりさえもその光に姿をくらました。
誰が見ても天変地異のそれであり、たった数個の星が大気圏を越えてさえしまえば被害は免れないといったような、人類史でも類を見ない天災であったとされる。
しかし、一縷の望みすら消え失せたと思わせるほどの大規模な流星群は、一つの欠片すら地球に到着することはなく、その姿を焼失させた。
たった1時間の中で生み出された流星の数は、肉眼で観測できる限りでも数千から万単位に到達していたと予想され、観測した人々の脳裏に大きく焼き付くこととなる。
そしてその翌日から、その流星群には不思議な噂が囁かれた。
それはその星が流れている間に願い事をした人は、たちまちその願いを成就させたというもの。
お金が欲しい、世界で活躍するスポーツ選手になりたい、あの人と仲良くなりたい、恋人と結婚したい、健康な体を手に入れたい。
多種多様な願いが星の恩恵に預かったと言伝され、願いを叶え終えたものから現在まで影響を及ぼしている事象も各地で発見された。
新聞、テレビのニュース、SNSから国境を越えたその先までその噂は広まっていき、噂はたちまち『真実』へとなっていく。
人類観測史上最も大規模な天災と思われた流星群は、ただの一つも被害を起こさず、人々の願いを叶えたというその真実のみを残し、たった数日で崇拝され、渇望され、その星に人々は夢を見た。
星は、人々に希望をもたらした。
──そんな流星が訪れる数分前、彼は一人野原の中心で空を眺めていた。
背は低く、中学生ほどの風貌に、子どものとは思えない眼差しを携えて。
嵐のように降り注ぐ流星のその前に、刹那の瞬間だけ現れたひと際輝く『それ』を、彼は確かに捉えていた。




