第2話 魔王様、就職する
「おや、一体これは何事でしょうか」
自称魔王の背後から柔和な声がかけられる。
顔を上げると、そこには先程魔王が求めた人物がいた。
「なんだ貴様は。我の背後に立つでない。」
「おやおや、お元気な方ですね。
佐藤くん、これは一体何事でしょうか?」
「...........あっ!おはようございます、区長。実はですね――」
佐藤は、魔王の背後に立つ区長に事の経緯を説明した。いや、しようとした。
「ほう、貴様がクチョウか。ちょうどよい、我の世界征服の礎としてまずは貴様を葬らせてもらおうか。」
佐藤の挨拶を聞いた魔王に遮られたのだ。
しかし、区長はそんな魔王をスルーして、
「佐藤くん、どうぞ続けてください。」
と続きを促してきた。
まじか...無視したぞこの人・・・と唖然としつつも、佐藤は区長に事情を説明した。
「なるほどなるほど。それは朝からご苦労でしたね。
あとはこちらで引き取るので、佐藤くんは他の職員と協力して入口の片付けをお願いできますか?
このままでは訪れる区民の皆様が入れないですから。」
「は、はい。承知しました。」
こうして、魔王は区長に連行されていった。
「なんか、朝からどっと疲れたな」
佐藤は区長に言われたとおり、他の職員に声をかけ入口の片付けを開始した。
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「すみません、住民票を2部いただきたいのですが」
「住民票を2部ですね。本籍の表示はどうされますか?」
夕方にもなると、区役所はいつもどおりになっていた。
佐藤もいつもどおり窓口業務をこなし、閉館の時間を迎えた。
「はぁ、やっと終わった。今日は朝から濃い一日だったな」
窓口の整頓をし、PCのシャットダウンも終えて帰宅の準備に取り掛かったとき、
「みなさん、ちょっとだけよろしいですか。」
区長が訪れてきた。
区長は毎日忙しそうにしており、いち部署に訪れるようなことは滅多になかったので職員の間にざわつきが生まれた。
(あんなことがあったからだろうか)
区長のもとに集まると、区長の背後から見覚えのある背格好の男が現れた。
「突然ですが、本日から区民課に職員が増員されます。
では、ご挨拶をお願いします。」
「う、うむ。我はダルク=ゼルグというものだ。
この区民課の臨時職員として採用されることとなった。よろしく頼む。」
それは、今日大騒ぎを引き起こした例の魔王だった。
(おいおい、まじか)
どうやら、区長に連れられたあと、色々あって雇い入れることになったようだ。
ふと、区長と目が合う。
まずい!と思って目線を外したが、時すでに遅し。
「ダルクくんには、窓口業務を担当してもらいます。
佐藤くんは今朝の件で面識があるようですし、ダルクくんに業務の手ほどきをお願いします。」
「は、はい。承知しました。こちらこそよろしくおねがいします。(やっぱりこうなったか)」
区長と目があった時点で予感はしていたが、教育係に任命されたようだ。
魔王の教育係なんてこれからどうしていけばいいんだ、と内心頭を抱えていると、
「佐藤殿が手ほどきをしてくださるのか。よろしく頼む。」
と魔王からも挨拶をされた。
(なんか魔王、めっちゃ丸くなってない?)
なんとなく、どうにかなりそうな予感がした。
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