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区役所勤めの魔王様  作者: はるくぼ
序章 異世界からの転職者

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第1話 魔王様、襲来

 この国一番の大きさを誇る区役所は、今日も朝から静かな緊張感に包まれていた。

 窓口では整理券を受け取った区民の対応に追われ、職員の佐藤は今日もため息をつく。

「はぁ…… 今日も忙しい一日になりそうだ」

 そんなときだった。


 ドーーーン!!


「っ!なんだ!?」

 突如として、静寂の広がる待合所に轟音と閃光が走った。

 目を向けると、区役所の入口の自動ドアは粉々に砕け散っており、煙と光の中から全身を黒鎧に包んだ人影があらわれる。


「む……?ここは……?

 我は勇者と相見えていたはずだが。」

 黒鎧の大男はあたりを見回している。そして――


「ふむ。どうやら我の統べる世界とは別の世界のようだ。魔力も感じぬ。

 ――む?王紋もか…?」

 どうやら男はこことは別の世界から来たようだった。



 異世界からの来訪者は、特段珍しいものではない。

 というのも、10年前に起きた転移装置の暴走により異世界とのつながりが生じて以降、こうした異世界から迷い込む事案は時折発生している。

 まぁ、たいてい害にならないような小動物や友好的な民族なのだが。


 異世界来訪者は過去にも対応したことがある。

 とりあえず佐藤は男に声をかけることにした。

「あのー、大丈夫ですか?何やら大きな音がしてましたが」

「む。なんだ貴様は。我を誰と心得る」

「あ、私、区民課職員の佐藤と申します。見たところ異世界から迷い込んだと見受けられますので声をかけさせていただいた次第です。当課ではあなたのような異世界からの来訪者の対応もしておりますので。」


 男はじっと佐藤を見つめる。

「ほう……異世界とな。やはりここは我の世界とは違うようだな。」

「えぇ、ですので帰還をご希望される場合は――」

「ふ、なるほどな」

 男は佐藤の発言は遮り、あたりを見回す。

「そうかそうか。これもなにかの運命というものであろう。

 あの憎き勇者もこの世界にはいないようだ。

 であれば、この世界を新たな支配権とするのもまた一興というもの。

 この、魔王ダルク=ゼルグのな!!」

「なっ……!魔王!?」


 魔王という存在は想定外だった。


 というのも、先程言ったとおり異世界からの来訪者は珍しくないものの、その多くは小動物やこの世界に友好的な存在ばかりであったからだ。

 それがいきなり敵対的な存在、それも魔王クラスがくるとなると驚くのも当然だろう。


 区民たちの動揺も大きい。

「魔王?」

「支配するとか言ってなかった?」

「おい、どうすんだよこれ」


 こっちが聞きたい。

 魔王の対応マニュアルなんてないぞ...。

 なにもできずに呆然としていると、

「おい、佐藤と言ったな。

 真っ先に我の助けになると申し出た貴様は、我のこの世界の支配における第一の尖兵として重用してやろう。

 手始めにこの地域の首領のもとへ案内せよ。」


 できるか!!得体のしれないやつを区長のもとへ案内できるわけないだろ!

 そう言いたいのは山々だが、面と向かって言えるわけがない。


「い、いえ。区長はお忙しい方なので案内したとしてもお会いできるかどうかは...」

「ほう、このあたりの首領は()()()()という名なのか。変わった名だな。」


 あ、たぶん間違ってますねそれ。

 まぁ異世界に区という括りがあるのかも不明だし上手く通じないのは仕方ないだろう。

 そんなことより今は目の前の魔王の要望にどう対応するかだがーー



「おや、一体これは何事でしょうか。」


 頭を抱える佐藤に、救いの手が差し伸べられた。


ここまでお読みいただきありがとうございます!


よろしければ高評価・ブックマークのほど、よろしくおねがいします


今後の活動の励みにさせていただきます

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