9-1 襲撃
小鳥のさえずりが聞こえてきて僕は起きた。珍しくディグニはまだ寝ていた。
そうこうしていると、部屋の扉をノックされる。扉越しにペルの声が聞こえる。
「ディグニ様、ビス様。」
僕は扉を開けて挨拶をする。
「おはよう。ペル。どうかしたの?」
「おはようございます。ビス様。そろそろ朝食の時間ですので、呼びに来ました。」
ペルはここでも使用人の仕事をしているらしい。
「うん。わかった。ディグニを起こしてすぐ行くよ。」
「ディグニ様はまだお休みでしたか。相当お疲れだったのでしょう。
ディグニ様はまだ寝かせておきましょう、ね。」
たしかに、ディグニはモーヴェ王国を出てからずっと気を張っていたように感じた。
「そうだね。じゃあ、少し準備してからすぐいくよ。」
「承知しました。食堂でお待ちしております。」
食堂にいくと、ディグニ以外全員集まっていた。ペルは昨日の言った通り、立っている。
「おはよう、ビス君。」
「おはよう。ツァール。」
そのやり取りを不思議に思ったのか、不機嫌そうにシェーンが話しかけてきた。
「あら、なんだか仲良さそうね。なにかあったの?」
ツァールの方に目を向けると、人差し指を口に当てていた。
「ううん。何にもないよ。」
「ふーん。怪しいの。」
不満そうにそう言い放った。
「はははっ。男同士の秘密ってやつか。」
なんでそういうところは勘がいいんだよ。
ディグニは僕たちが朝食を食べ終わる頃にやってきた。
「ビス。なんで起こしてくれなかったんだよ。」
「だって、疲れてるみたいだから。」
ペルが近づいてくる。
「私が言ったんです。もう少し寝ていてもらおうと。」
「あ、いや、怒っているわけじゃないぞ。ただ、部屋にビスがいなかったから驚いただけで。」
なんとなくそれはわかっていた。
僕たちは、ディグニを残して食堂を出た。
シェーンに声をかけられた。
「ビス、一緒に図書室行かない?
こっちにはモーヴェにない本がいっぱいあるってツァール兄様に聞いたの。
べつに行きたくないならいいんだけど。」
そんな表情をされたら断れないじゃないか。
僕はちょっと城の中を回ってみようかなんて考えていたが、
図書室に行くのも悪くないと思い返事をする。
「うん。いいよ。行こう。」
シェーンと一緒に図書室に向かう。
「そういえば、昨日買ってきた本はどうしたの?」
「ん?ああ、昨日のあれね。全部読んだわよ。まだ読み足りないのよね。」
あれだけの本を⁉驚きしかなかった。
「そ、そうなんだ。なんか目当ての本があるの?」
「ううん。そういうわけじゃないんだけど。何読もうかしらね。」
図書室に着くと驚きの光景が広がっていた。
モーヴェ王国の図書室よりも本が多く並んでいたのである。
「思っていたよりもすごいわね。どれを読むか迷っちゃうわ。
うーん決めるのに時間を割くのはもったいないし、
あっちの方から見ていきましょう。」
そういってシェーンは本棚の方に向かっていった。
本棚に着くと、シェーンは徐に本をとる。
「魔法に関する本が多いわね。それも、どれも高度なの。」
シェーンが手に取った本を覗き込むと難しい文字が並んでいた。
「”イゾラント・コスト”。・・・裏切った者を罰する魔法ですって。
発動したら裏切った者は消滅するみたい。」
なんとも怖い魔法だ。
「ああ、私が魔法使えたらビスにかけてたのになぁ。」
ものすごく怖いことを言う。
「や、やめてよ。」
「冗談よ。それにあなたは・・・」
シェーンはこっちをじっと見てくる。
「僕が何?」
「な、何でもないわよ。ほら、あなたも何か本をとって読んだら。」
そう言われて僕は、本棚を見渡した。
どれでもいいやと思って僕は本棚に手を伸ばす。
とったのは”アナスタシス・フルム”という本だった。
その本は一人の少年が大切な人をなくし悲しみに暮れていた。
ある日、少年はある噂を耳にする。この世に復活の魔法が存在すると。
少年は大切な人を蘇らせたくて復活の魔法を探す旅に出る。
この世界では、魔法は本に記録されている。
そしてその本を読めば誰でも使えるようになれる。
ただ、そんな簡単な話ではなかった。
その本はダンジョンに隠されていて、難しい魔法ほど、
ダンジョンは強いモンスターが出てくるようになる。
少年は何度も挫かれるが、その度に起き上がる。
仲間もでき、ともに様々なダンジョンを攻略していく。
そして遂に復活の魔法が書かれた本の情報を手に入れ、そのダンジョンに向かう。
しかしそこは地獄であった。屍が無数に転がっている。
ダンジョンの難易度も格段に違う。逃げ帰ることもできない。
もし、背中を向けようものなら、一瞬でやられる緊迫した状況に陥っていた。
それでも少年と仲間たちはその本を手に入れる。
そして少年は大切な人に魔法をかける。
“アナスタシス・フルム”
次のページを開こうとしたら、遠くバァン、バァンと爆発音がなる。
驚いて僕とシェーンは外に出た。町のあちこちで火事が起きていた。




