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紅魔の館の拾われ執事  作者: 夜に生きる中途半端
壱章~十六夜咲夜の消失~
73/75

オワリハジマリ編3/?

一気に書けたので一気に投稿してみました!。私史上最速の間隔での投稿です(多分……)

「超出づれぇ……」

 扉の向こうからはお嬢様と紫の怒鳴り声が漏れて聞こえる。二人とも深窓の令嬢といったタイプでは無いだろうし、仮にお嬢様の生い立ちがそうでも今では見る影も無いな。

 紅茶を差し出すだけのお仕事だというのに、妙に憂鬱だ。一体どんな論戦が繰り広げられているのか──それとも愚にもつかない罵倒合戦か。どちらにせよ雰囲気は最低で、涼しい顔をして紅茶を勧めるには向いていないだろう。それにどうにも嫌な予感が消えてくれない、直感とでもいうのか。それにしてはしつこく思考に絡み付いて離れない、俺の語彙力では形容出来ない感覚だった。直感、虫の知らせ、警告、無意識……どれも少しずれている。

 「でもまぁ仕事を投げ出すだけの理由にはー、なっちゃくれんわな……」

 意を決して扉を開ける、平静を装っていたつもりだが自信は無い。振り向いたお嬢様と目が合う。

 「あの……紅茶……」

 何故お嬢様はあんな目をしているのだろう。化け物でも見るような、居てはならない存在を認めてしまったような──上手く表現出来ないのがもどかしい。少なくとも好意的なものではないのは確かだ。

 「ありがとう、それ、置いといてくれる?」

 紫の声色は明るい。目を向けて後悔した、顔はちっとも明るくない。どうすればここまで殺気だった目付きで、冷酷なまでの真顔で、そんな声が出せる。女性なのはこの際関係ないし、紫が人間でないことも一向に関係ないと思う。

 「あ……え……?」

 空気が絶望的に重い、向けられた敵意が強すぎる。心拍が加速し、身体から血の気が引いてはかっと熱くなった。気持ち悪い──逃げたい、立場も仕事も放り出して。不幸な事に両足は既に根を張った、身体だって強張って動かない。

 「どうしたの?気分が優れないのかしら」

 戯言だ、本当は分かっているくせに──この妖怪め。

 遂に思考も思うように働かなくなってきた、今すべきは罵倒じゃない。考える、ワイダニット?フーダニット?いや、意味無い。意味、分かんない。

 「まぁ落ち着きなさいよ、取り敢えずこっちに来て、ね?」

 正直神経が参ってしまった、崩壊寸前だ。どうにでもなれ。指示に従ってテーブルの側に寄る、我に返ってみれば俺は紅茶を持ってきたのであった。紅茶のプレートを今の今まで取り落とさなかったのは執事長の意地だったのだろうか、そう言って良いのだろうか。

 「では、私はこれで──」

 「待ちなさい」

 紅茶を置いて逃げ出そうとしたが腕を掴まれ不可能となってしまった、だからといってここで腹を括れる程思い切りも良くない。端的に言えばしどろもどろだ。

 「さっきまで貴方の話をしていたのよ」

 「なんで私の事を話していて怒鳴る必要がありましょうか」

 「貴方の処遇で意見が別れたからよ」

 「処遇?私には関係があ──」

 「ある、何故なら私が貴方を殺すから」

 何だって?殺す?こんな物騒な単語が何で出てくるんだ、おかしいだろ。

 「何それ……」

 すがる様にしてお嬢様を見た、実際この妖怪相手に藁にすがっても仕方がないし、今この場で頼れるのはお嬢様だけだった。頼みの綱とでも言おうか。しかし肝心の頼みの綱本人の表情は浮かないもので、勝手なもの言いだが頼りがいが無かった。

 「ねぇ、やっぱ止めない……?」

 頑張って絞り出したのであろう、揺れる声での抗議はとても弱々しい。

 「止めない、今更何を言ってるの?協力者」

 紫は協力者の部分を嫌に強調して言い放った。

 「いや、その……契約は」

 「あ?」

紫は上品な見た目にそぐわない凄みのある声で、お嬢様を圧した。ほぼほぼ脅しといっても良いだろう。

閲覧ありがとうございました。

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