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2.お芝居

 公園のような場所に連れてこられた。ジンゴと言う人物は荷馬車を見ておくために、その場にのこされ、僕は女性と歩くことに。


「あの…」


「どうした?」


「名前をしらないのですけれど」


 そう、僕はまだこの人の名前を知らない。


「それが出るってことはやっぱりここの人じゃない」


「はぁ」


 会話はそれっきり。しばらく歩く。すると連れてこられたのは割と披露目にはもってこいの広い公園みたいな場所。でも遊具はあんまりない。あるのはベンチ位なものと、僅かに滑り台的なものが有る。


「さてと」


 女性はベンチに腰を下ろすと僕の方をまっすぐ見つめて来た。


「‥‥君、カケルはどこからどうきた?」


「アッと…」


 取り合えず話すことに。僕は昨日、いつも通り自分の部屋で過ごしていて、そこから寝ようと横になった瞬間、ここに居たことを。


「なるほど、はあ。そうすると、カケル自身もよくわからないよってこと?」


「そうですね」


「ふぅん」


 女性は僕の顔、それから手、足に目を移していく。


「…この国では、というか、この日ノ本では階級によって身に着けているものがあって、それがこれ」


 女性は手を少しだけ上に挙げると、そこにはホログラムみたいな綺麗な模様が付いていた。浮いている。実際に書かれたものではない。


「カケルにはそういうのが一切ない。ということはどこからか出て来た人。それかもしくは…」


「もしくは?」


「何かしらの芸事で各地を回っている人。になる。のだけれど、そういうのがやってくるときは必ず連絡がくる。カケルが来るとは私も知らない」


「なるほど」


 女性はポケットから煙草を取り出すと火を付けた。


「…なにかできるか?」


「なにか?」


「そうだ。何か」


 何かって急に言われましても…。僕はとりあえず、自分の体を触ったり、何かないかとポケットの中を見てみるも、さっきの通り、メモ帳くらいしか入っていない。


「…それには何が書いてあるんだ?」


「これですか?」


 どうやらこのメモ帳が気になったらしい。そこで僕はなんか自身はそこまでなかったけれど、あることを女性に告げる。


「…物語を書いてあります」


「物語?」


「そうです」


 僕自身が作り上げた物語。何となく気になったこととか、そういう風景を言葉にしてみた物語。


 それを取り合えず読むことにした。何もないよりはいいだろう。ということで。


 お話の内容は、言葉を知らなかった若者が、あるきっかけで言葉を学ぶことになり、その結果、ある乙女に見出されて、今の自分の世界から別の世界を知る。というもの。


 僕は声優でもなければ、声に自信があるほうではない。でも、とりあえずやらなければ。何とかしなければ。という気持ちで読み上げていく。


 物語はそこまで長くない。物の数分で終わってしまう。


けれど、物語を聞く女性はかなり真剣な表情をして聞いてくれていた。


話し終わると僕は女性の方を見つめた。


「…なるほど、カケルはそういうことができるのか」


「はい…」


 煙草を咥えて、しばらく女性は考える。


「私は、こういうのをあまりよくは知らないのだけれど、でも、あんまり無い物語だな。この国には」


「な、なるほど」


 どうなのだろうか。良かったのだろうか、それだけが気になっていく。


「ふぅん」


 女性は少しだけ気を外に向け、そしてその後、自分の方を見つめた。


「私は。といったから、もしかしたら他の人になら分かるかもしれないな」


「…ジンゴさんって方ですか?」


「…あれは、そうじゃない。もっとなんというか、感覚がある奴だ」


 なるほど。まあともかく良かったのかもしれない。助かった。メモ帳だけここにあったから。


「少し待ってなさい」


 そういうと女性はまたポケットから有るモノを取り出した。…懐かしい。二つ折りの携帯電話だ。


 でも、僕が使っていた時のモノよりもぐっと洗練されているデザインでなんかかっこよかった。


 女性はある人物に電話をかけるといい、少しだけ遠くへ。僕はその場に少し佇むことになった。周囲はとても静かで風が草をなびかせる音しか聞こえてこない。


 わずかばかりに女性の声がその風に乗ってやってくるのを感じる。


「…カケル。行くとこはないんだよね」


「はい」


 電話が終わったのか女性は僕にそう語り掛けて来た。すると一言、ここで待つのもなんだから、とりあえず私の家にこい。


とのことだった。

 僕と女性は荷馬車に戻るとジンゴがそこで待っていて、彼に色々話をすると、彼は多分賛成しなかったのだろう。僕の方を見ては少しだけ言葉を多くして話している。


「大丈夫だ。私が保障する。ジンゴには何もないから」


 そういって彼を納得させると女性はまた1つ言った。


「荷馬車には1人しか乗れない。というか、2人以上乗るには公共のモノか、それ以上の関係性出ないといけない」


「…どういうことです?」


「まあいい。とりあえず歩くぞ。そんなに遠くない」


 そうして僕はまた女性に付いて行くことになって、その後ろをジンゴが付いて行くという形に成った。


 しばらく歩く。色んなモノが見えてくるのかと思いきや、そこまで景色に替わりはなく、なんというか完全に田舎に来た気持ち。


「…カケルは、この先どうしたいんだ?」


 歩いているとそんなことを女性が聞いて来た。


「…そうですね。とりあえずあなたの名前を、知りたいです」


 そういうと女性は少し笑った。


「そうだな。じゃあ私の家についたら教えよう」


 3人は家を目指して歩くことになった。

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