61.モルー達の小屋とオルドールおじさん師匠
「おお~、なおった!!」
『『『直った!!』』』
『わぁ、完璧に塞がってるね』
『あなない。ほかもない?』
「うん! オルドールおじさんが、ぜんぶみてくれたでしょ。ぼくもみんなもさがして。それであなもすきまもないから、も、だいじょぶ!」
『しょか!! おにいちゃ、もう、まいごならないねぇ』
『うん! そうだね!!』
今日はちゃんと直さないで、とりあえず塞いでおいた、お兄ちゃんモルー達が迷子になっちゃった穴を、ちゃんと直しにきたんだ。えとねぇ、オルドールおじさんと来ました。パパは今日は別の場所を直しに行ってるんだ。
最初にオルドールおじさんと一緒に、モルーの小屋の中にある荷物を全部、小屋の外に出しました。他にも小さな穴があって、また他のモルー達がお外に出ちゃうかもしれないから。ちゃんと全部調べて、穴や隙間があったら塞がないとって。
それでねぇ、1つの穴と1つの隙間を見つけたんだ。だから全部で穴が2つ。隙間が1つ。オルドールおじさんが穴を直している間、お兄ちゃんモルー達は、籠の中に入っていました。直している間にどこかに行っちゃったら大変。
僕はオルドールおじさんが、どうやって穴を塞ぐのか見ていました。お兄ちゃんモルー達も箱に手をかけて、首を伸ばして見ていたよ。僕ね、穴の所に小さな木の板を貼るんだと思ってたんだ。でもぜんぜん違いました。
ゴリゴリゴリッ!! バリバリバリッ!! オルドールおじさんは壁の途中からノコギリでゴリゴリッてして、それからバリバリッて、壁の下の部分を引っ張って取っちゃったの。僕もお兄ちゃんモルー達もビックリ。だって小屋を壊されちゃうって思ったから。
『お家壊さないで!?』
『小さな穴じゃなくて、大きな出入り口になっちゃったよ!!』
『おにいちゃ、またまいご!?』
僕はみんなが言ったことを、オルドールおじさんに伝えました。僕も小屋を壊しちゃうの? って聞いたんだ。
「アルフ、違うぞ。これは別に壊しているわけではない。穴だけを直すと、またすぐに穴が空いてしまうといけないから、全体的にしっかりと直すんだ」
それからもどんどん壁を切っちゃったオルドールおじさん。僕達はずっとドキドキ。だって僕が出たり入ったりできるくらい、大きく切っちゃったんだもん。
それでやっと止まったオルドールおじさん。今度は外に行って、大きな板を半分に切って。それからその板と、とっても硬いオーリオの木の板を、特別なのりでくっつけたんだ。それを持って小屋に戻ったオルドールおじさん。
大きく開けた穴の所に、板をしっかり置いてから、左手にいっぱい釘をを持って、右手にトンカチを持ったら。スパパパパッ!! オルドールおじさんの釘を打っている手が見えなくなって、またまた僕とモルーお兄ちゃんちゃん達はビックリ。
だって手が消えちゃったんだよ。肘から手がぜんぜん見えないの。でも見えないのは右手ばっかりじゃなくて、時々左手は瞬間移動してたんだ。横にシュッ!! って。一瞬消えてまた見えるの。
『おにいちゃ、てがなくなっちゃ?』
『うん、なくなっちゃった……。アルフもなくなっちゃったよね?』
「うん、なくなった」
「何だ? アルフどうしたんだ?」
「オルドールおじさん、て、なくなっちゃった」
「手が? 何を言って……。ああ、そういうことか。手はなくなっていないぞ、ほら」
オルドールおじさんが僕達の方を向いて立ったら、オルドールおじさんの手はいつも通りでした。右手も左手もどっちもだよ。お兄ちゃんモルーとちーちゃんが確認するって。僕の手に乗せてあげて、オルドールおじさんの所へ連れて行ってあげました。
『て、ある。てなくなってない。おにいちゃ、なくなってない』
『うん、ちゃんとあるね。じゃあ何でなくなったように見えたの?』
僕もすぐにオルドールおじさんに聞きました。そうしたらただ速く手を動かしていただけだって。手を速く? 僕もお兄ちゃんモルー達も、みんなで手を動かしてみました。でも、みんな手は見えたまんま。
「そんな遅くちゃ消えたようには見えない。もっともっと速く動かさないとな。こうだ」
オルドールおじさんが手を動かし始めます。こう、手を振る感じ。最初はゆっくりで、少しずつ速くなっていって、それから物凄く速くなって、もっともっと速くなったら、パッ!! 手が消えたの、でもよくみたら何か白い物は見えて。
「しろいのみえる」
「それが俺の手だ。俺が速く手を振っているから、しっかりと手が見えずに、白く見えているんだ」
『ちーちゃん、わかんない』
『白?』
『分かんないけど、でも速く振ると見えなくなる? なんかカッコいい!! 俺、頑張って振ってみる!!』
お兄ちゃんモルー達が一生懸命手を振り始めて、僕も一緒にブンブン手を振ったよ。でもぜんぜん手が消えたように見えませんでした。
「それじゃあダメだな。たくさん訓練をしないとダメだ」
「たくさんれんしゅう。なんにちれんしゅう?」
「何日じゃなくて、何年、何十年と練習しないとダメだ」
「ふぉ!! いっぱい!! おにいちゃん、いっぱいれんしゅうだって」
『いっぱい? でもいっぱい練習したらできる? ならいっぱい練習!!』
お兄ちゃんモルー達は、もっと手を振り始めて。
「さぁ、俺は小屋を直してしまうから、静かに待っていてくれ」
そう言って、また小屋を直し始めたオルドールおじさん。それから僕達はオルドールおじさんがトンカチを使っている時はオルドールおじさんを見て。小屋を切ったり、板を切ってくっ付けている時は、手を振る練習をしていました。
手が見えないくらい速く動かしているオルドールおじさん。だからすぐに板をくっ付け終わって、全部の穴と隙間も完璧になくなって。小屋が半分新しくなりました。
『小屋を直してくれてありがとう!!』
『これでもう心配しないで済む』
『でも、直してもらってありがとうだけど』
『うん、それよりも、オルドールおじさん。見えない動きカッコいい!!』
『オルドールおじさん、とっても凄い!!』
『僕達、これからいっぱい練習。オルドールおじさんは僕達の師匠!!』
『『『オルドールおじさん師匠!!』』』
僕がそのままオルドールおじさんに、お兄ちゃんモルー達のお話しを伝えたら、オルドールおじさんが、
「これが部下達だったら……」
って。お兄ちゃんモルー達にニコって笑ったあと、ちょっと疲れたお顔をしていました。




