56.お話しは内緒?
「ワイバーン、みんながたおしてくれたけど、みんなボロボロ~」
『まぁな、それは仕方がない。お前の父親や他の者達に直して貰えばいい』
「うん!!」
『ん? そろそろお前の父親が到着するな。我々もそろそろ下へ降りよう。そして父親に話しをして、モルー達を確認しなければ』
「あ!! ブルーノおじいちゃんが、いたでつぶされちゃったの。グーちゃん、たすけて」
『ああ、それならば大丈夫だ。一緒にいたブラックタイガーがもう助け出して、少し離れたところにいる。怪我もしていないようだ』
「そか!!」
『よし、それじゃあ下へ降りるぞ』
ゆっくりと下へ降りていくグーちゃん。降りながら僕はグーちゃんにお話ししました。みんなの言葉が、綺麗に聞こえるようになったよって。そうしたら急にグーちゃんが止まって。なんかとっても慌てて、僕に聞いてきたよ。
『聞こえるとはどのくらいだ!! そうだな、今から我の言ったことを。そのまま同じように言ってみろ! グーちゃん、一緒、楽しい!!』
「うんとねぇ、グーちゃん、いっしょ、たのしい!!」
『他の魔獣達は、まぁまぁ楽しい!!』
「ぼく、みんなたのしいよ?」
まぁまぁってちょっとってことなんでしょう? パパ達が言ってたもん。僕はちょっとじゃなくて、グーちゃんも他に魔獣さん達と遊ぶのも、いっぱいいっぱい楽しいよ。
そう言っらたら、グーちゃんがなんか『チッ』ってした後に、ボソッと何か言いました。
『まぁそれは、後でもっと別の方法でアピールしよう』
「グーちゃん、なんていったのぉ?」
『いや、なんでもない。そうか、しっかりと話ができるようになったか。しかしなぁ、嬉しいが困った。父親に会う前にブルーノに話した方が良いな』
その後とってもニコニコのグーちゃんは、急いで下へ降りていって、シマウ達の小屋があった場所から、ちょっとだけ離れた場所に降りたよ。そこにブルーノおじいちゃんとクタさんがいたの。
「坊っちゃま!!」
「ブルーノおじいちゃん!!」
ブルーノおじいちゃんが僕をギュッと抱きしめてくれました。嬉しかったけど、でもお兄ちゃんモルーとちーちゃんがいるって言ったら、すぐに離れてくれたよ。それにね嬉しかったのに、その後はすぐに怒られちゃいました。
なんで何も言わないで、勝手にどこかに行っちゃったのかって。1人で行ってあのままワイバーンに攻撃されたらどうするんですかって。
ちゃんと言ってくれれば、クタさんが行ったし、他のシマウの誰かが行ってくれたかも。これからは絶対に絶対に、1人で動かないでくださいって。他にもとってもとっても怒られちゃいました。
「ごめんなさい……」
「分かってくれたのなら良いのですよ。ですが、本当にこれからは気をつけてくださいね」
「うん……」
僕はしょんぼり。僕ね、頑張って走ったんだ。それでお兄ちゃんモルー達を守れたけど、どこにも行かないお約束破っちゃった……。
『話しはそれくらいに。アルフもしっかり分かったようだからな。それにアルフのおかげでモルー達は救われた。そこは褒めてやれ』
「分かっている。坊っちゃま、よくぞモルー達を守ってくれましたね。危険でも勇気を持って行動できる、動けることは大切なことです。本当に頑張りましたな」
「僕頑張った?」
「ええ、頑張りました」
ブルーノおじいちゃんがニコニコ笑って、僕の頭を撫でてくれて。僕は今度は嬉しくなってニコニコです。
『よし、これの話しは一旦終わりに。それよりも問題が発生した。いや、我らにとっては、とても良いことなんだが』
「何だ、ハッキリとしないな。何が起きたんだ? まさかまだ敵がいるのか?」
『いや、敵はもういない。そうではなく我らには良いことだと言ったろう』
「良いこと? この現状でか?」
『実はアルフが、しっかりと我々の言葉を理解できるようになった。鳴き声と混ざることなく、しっかりと聞こえていると。今も我と普通に会話をしたのだ』
「本当か!! まだこんなに幼いのに、そこまでの力が」
『だが、他に漏れるのは困るだろう。それに今の段階で両親に教えるのも』
「……そうだな。まずはしっかり旦那様方と話しをしてからの方が良いだろうな」
『今こちらに父親が向かってきている。もうすぐ着くが、アルフに言葉のことを話さないよう、お前から伝えてくれ』
「分かった」
グーちゃんとブルーノおじいちゃんの、お話しが終わるのを待っていた僕。お話はすぐに終わったんだけど、今度はまた僕とお話しだったよ。
僕、魔獣さんの言葉が、鳴き声が混ざってるんじゃなくて、普通に聞こえるようになったでしょう? そのことをまだ誰にもお話ししちゃダメって言われました。
えとね、パパとママにもお話ししちゃダメなんだって。僕、パパとママにお話ししたかったんだぁ。でもダメみたい。
ブルーノおじいちゃんも魔獣さん達とお話しできるでしょう? でもみんなに内緒。パパ達もブルーノおじいちゃんがお話しできることを知りません。時々お話しできる人はいるんだけど、話せない人の方が多いから、話せるって分かるとみんなとってもビックリしちゃうの。
だからもしかしたら、パパ達もビックリして、尻餅をついちゃうかもしれないんだって。それでお怪我しちゃったら大変。だからお怪我をしないように、僕が話せるよってお話しする前に、準備があるんだって。その準備が終わるまで僕は内緒じゃないとダメみたい。
お怪我したら大変。すぐに治してもらえるけど、でもお怪我しない方が良いもんね。
「では、準備が終わるまで待っていてもらえますかな」
「うん!! ないしょ、ぼくないしょ!!」
「そうです、内緒です」
「ふふふ、ないしょ」
ないしょ、ちょっと楽しいかも。でも準備が終わってパパ達にお話ししたら、パパ達ビックリ、それで喜んでくれるかなぁ。
「では、向こうへ行って、モルー達を確認しましょうか。あの道具小屋の方へ行きましょう」
「うん!!」
僕はボロボロになっていない、道具がしまってある小屋の方へ走ります。
『尻餅と怪我と準備か。アルフには分かりやすくて良かっただろう。良い説明じゃないか』
「そうだろう。後は、旦那様方にはお話しするが、どうやって外部に漏らさないようにするかだな。大きくなれば自分で対処できるだろうが、まだまだ坊っちゃまはお小さい」
『ふん、それは我々がいるから問題はないだろう』
「今回のようなこともあるんだぞ。対策を考えておいて悪いことはない」
『むっ、それはまぁ』
「おじいちゃん! グーちゃん! クタさん!!」
『今行く!!』
「今行きますよ!!」