46.なんか変なキーランさん
「アルフ坊っちゃま、初めまして、キーランと申します。この素晴らしい魔獣園で働けて、とても幸せでございます! なにしろここには傷ついた魔獣達が集まり。そん怪我を《《美しく》》治療し、そして自然へと帰す!! こんなに素晴らしい場所がこの世にある……」
「おい、キーラン、その辺でやめないか。余計な事は良いんだ。今は坊っちゃまにご挨拶をする時。お前のことは今はどうでも良い」
「これはこれは失礼いたしました。まさかアルフ坊っちゃまにお会いできるとは思っておらず。こんなにうれ……」
「キーラン!!」
「も、もし訳ありません!」
キーランさんがお話しする前に、僕にご挨拶してくれたんだ。初めましてこんにちは、じゃなくて、なんかとっても長い、お話しのご挨拶で。僕はぼけっとキーランさんを見ちゃいました。
そうしたらブルーノおじいちゃんに怒られて、それですぐに失礼しましたって。でもまた話しそうになって。今度はなんかいつもよりも低い声のブルーノおじいちゃんに怒られて、やっと止まったんだ。なんかとっても焦ってたよ?
「まったくお前は。いいか、お前が水を撒いた場所を、しっかりとお伝えするんだ」
「はい! お任せください! 少しの残しもなく全てお伝えします!!」
なんかキーランさん、変? 何が変なんだろう? う~ん。
『ピピピッ! ピピピピピッ!?』
「わわっ! たいへん!!」
キーランさんの話しが、なんか変に感じがして、それを考えていたら、パパ達が歩き始めちゃっていました。待って待って!! リアが教えてくれたの。アルフ! 付いて行かなくて良いの!? って。リア、ありがとう!!
「アルフ、何してるんだ。ちゃんと付いてこないとダメだろう」
追いついた僕はパパと手を繋いで、キーランさんについて行きます。最初にサーイさん達の小屋の少し前まで戻って。キーランさんはそこから特別な水を撒き始めたんだって。
それから道に沿って綺麗に水を撒いて行って、サーイさん達の小屋の周りは、2回特別な水を撒いて。
そうやって、どんどん特別な水を撒いて行ったキーランさん。他の魔獣さん達の小屋の周りや柵の周り、それから魔獣さん達の小屋を通り過ぎた、少し先まで特別なお水を撒いたキーランさん。
うんうん、ここまではサーイさん達のお話しと同じだね。ブルーノおじいちゃんも、ちゃんとあっているなって、うんうん頷いていたよ。パパ達もずいぶん丁寧に撒いたなって。
「それは勿論です!! 魔獣達のためなのですよ。しっかりと撒かせていただきました!! ちゃんと水の量が一定になるように……」
「キーラン!!」
「申し訳ありません!!」
キーランさんは話し始めると、お話しが長くなっちゃうんだ。さっきからずっとそうなの。それでいつも低い声のブルーノおじいちゃんに怒られるんだ。ダメだよ、お話しより今は、特別なお水を撒いた所を教えて!
でも、やっぱりキーランさんのお話しは、変な感じがするなぁ。何でだろう? 何が変なのか分かんないや。
『ピピピッ?』
「あのね、へんなの」
『ピピピッ?』
「うん、なんかぁ、キーライさんのおはなしへん。でも、なにがへんなのか、わかんないの」
『ピピピ……。ピピピ、ピピピ。ピピピピピ』
「みんなとおはなしちがう?」
『ピピピ!! ピピピピピピピ、ピピピッ、ピピピピピ!!』
「うんうん」
『ピピピ、ピピピ、ピッピピィ』
「あ、そうかも!! みんなよりおはなしがながくて、みんなよりもこえがおおきくて、それからうるさいからかも。きっとそれでへんにかんじるんだね」
「アルフ、何を話しているんだ。今はキーランの話しを聞いているんだぞ」
「あのね、リアがね」
リアが何考えてるの? って聞いてきたから、僕はなんか変って言って。なんか変? って聞かれたから、キーランさんの変なお話しのことをお話ししたんだ。そうしやたらリアが。
あたしはアルフの変はわからない。けどキーランさんは他の人とちょっと違う、って言ったんだ。みんなとお話しが違うって。
パパはいつもとっても元気にお話し、他の人達も元気にお話ししたり、普通にお話ししたり、時々怒ったり、ブツブツ文句を言ったり。でもキーランさんは、そんなパパ達とは違うって。
話し出すとお話しが長いし、怒られてもまたすぐにお話し。声が大きくて、パパ達とは違う元気じゃなくて、なんか煩い元気。何がうるさい煩いか分かんない煩い。それに時々女の人と話しをしていると、変なことを話していて、お話しができてない。
だから普通の人達と違う話し方と、話しをするから、それが変に感じるのかもって。リアは最後に、あんまり煩いのは嫌いだって言ったよ。
ね、リアの言う通りかも。みんなと違うお話しの仕方で、なんかワァワァだから、変に感じたのかも。
「……お前は小さな子供に会った瞬間にそう思われてるのか」
「ははは、まぁ、間違いではないけど、良い印象ではないな」
「え? どういう事でしょうか? 私の話は素晴らしいという話しでは……」
「……キーラン、後で話しをしよう。この事件が解決したら、私の所まで来なさい」
「はい?」
ブルーノおじいちゃんが、低い声から、今度はちょっと疲れている? 感じの声で、きキーランさんに、後でお話しって言っていました。キーランさんが不思議な顔をしながら、向こうを指差します。
「次はあちらです。向こうもしっかりと撒きました!!」
キーランさんが指差したのは壁でした。クタさんは壁の方も、特別なお水の匂いがして、芋虫さんのくさ~い泥の匂いが消えてるって、言っていたもんね。
みんなでぞろぞろ壁の方へ歩いて行きます。でも途中でキーランさんが忘れ物をしたって、道具がしまってある小屋へ行って、台を持ってきました。僕が1人で乗るのは無理な、ちょっと高い台です。
「これを使って、魔法も使い、しっかりと撒いたのです!!」
壁まで行くと台を置いたキーランさん。ひょいと台に乗りました。




