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人間嫌いの理由

「あー、緊張したー…」

だらんと四肢を投げ出して、ナナギが畳に寝転がる。

一悶着あった末、大歓迎とはいかないまでも村人は、ナナギ達を迎え入れてくれた。

用意されたのは、大人数用の和室。

部屋のレベルとしては、可もなく不可もなく、といったところだろうか。

少なくとも、石を投げつけられて追い出されるよりは余程ましだ。

まさにナップ様様である。

「でも、あんなに人間嫌いなんて、何があったんだろうね」

「さぁ? それはそれはよっぽどな理由があったのではなくて? 人畜無害なわたくし達に刃を向けたくらいですもの」

ふん、とリィーリアがレイの問いに鼻を鳴らす。

プライドのお高い彼女には、あの歓迎方法はお気に召さなかったらしい。

…誰だってそうだろうが。

「でも、彼は将来大物になりそうですね。あれだけの人数の大人を前に、あの啖呵はなかなかきれませんよ」

「確かに、すごかったね! 格好よかったよね、クリス、ねっ?」

何故かナナギはとても楽しそうだ。

「んー? ああ、まあ」

「クリスのためにだよ? クリスに石が当たったからあんなに怒ったんだよ」

成る程、楽しげな理由はそれか。

ナナギの意図することを察したクリスは、それはそれはにこやかに笑った後、その赤い頭にチョップをかました。

うひゃっ、と小さく悲鳴が上がる。

「もうっ、なにするのよ!」

「そりゃこっちのセリフだっつの。お前、オレの性別忘れたか?」

「く…っ。それは知ってますけど。でもクリス可愛…」

「それ以上言うと、次はデコピンな」

クリスの言葉と掲げられた細い指に、ぱっとナナギは額を隠す。

華奢な指から繰り出されるデコピンは、思いの外少し、いやかなり痛いのだ。

何度か餌食になっているナナギはそれを身をもって知っている。

「ごめんなさい」

「分かればよろしい」

うんうん、と満足そうに頷いてクリスは指を下げる。

ナナギがおそるおそる手を外したところで、クシナから声を掛けられた。

「ナナギ、クリス。ちょっと外に出てくるが、二人はどうする?」

「何しに行くんだー?」

「情報収集です。気になりませんか? 人間嫌いの理由」

ふ、と淡くシャオロンが微笑む。

人を惹きつける綺麗な笑みは、精霊にも有効らしく、クリスも好戦的な笑顔を返した。

「なるな、それは。オレも行く」

元気よく手を挙げて、クリスは立ち上がった。

立ち上がってそれから、まだ座ったままのナナギを見下ろす。

「お前は? どうすんの?」

「あたしは…えっと」

迷うように視線を彷徨わせ、ナナギは首を振った。

「ちょっと疲れたから、ここで待ってる」

「皆行くけど、いいのか?」

「うん。留守番しとくね」

心配そうなクシナに、ナナギは力強く頷く。

それでも、まだクシナは不安顔だ。

「でもナナギ一人残すのは…。俺も残ろうかな」

「いいよ、大丈夫だって」

「だけど…」

「こいつが大丈夫っつってんだから、いーじゃん。クシナは過保護すぎ」

食い下がるクシナを見かねてか、クリスが袖を引っ張る。

それもそうか、と納得しかけたクシナに駄目押しでナナギはにっこりと笑ってみせた。

「行ってらっしゃい。大人しくしとくから、本当に心配しないでね」

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