前編
ご覧いただきありがとうございます!
今作は、夢を追って上京した彼氏と、地元に残った彼女の遠距離恋愛を描いた作品(前編)です。
遠く離れた場所で暮らすふたりの、甘く切ない心の葛藤を感じていただけたら嬉しいです。
※本作はnoteにて先行公開した作品です。
「もしもし」
「もしもし、久しぶりになっちゃったね。元気にしている?」
「うん。大丈夫だよ。」
「声、元気がないけど?」
「そんなことないよ。」
「だって、新、鼻声じゃん。いつもの声となんか違うよ。」
「ちょっと風邪引いたかな。」
そんな、いつもと変わらないやり取りをしていた。
彼氏の新は高校卒業をきっかけに地元の島根から東京へ引っ越した。
脚本家になるために上京した。
「どう?脚本家になれそう?」
「いやいや、まだまだ勉強中だから。」
「そっか……。」
「新も早く売れて島根帰ってきて!」
「売れたら売れたで帰って来られなくなるよ。」
「そっか……。」
私は地元の農協に就職し、今は銀行業務をしている。と言っても窓口業務だけど。
父親が農協で課長をしていて、その姿を見て入社した。
「紬は仕事どう?」
「うん。特に変わりないよ。」
「お父さんも元気?」
「うん。元気。」
新とは小学校からの同級生だった。
新はサッカーに熱中していてそんな姿に憧れを持ったのが好きになったきっかけだった。
そこから中学生になり、私から告白をした。
新は始めこそびっくりしていたが、一日考えて付き合うことを了承してくれた。
中学3年生で付き合い始めて同じ高校に通いたいと思い、私は進路を急に変えた。
初めは両親や先生も心配していたが、何とか勉強を頑張って同じ農業系の高校に入ることが出来た。
新は実家の農家を継ぐと思っていたが、秘めていた夢があったらしい。
生粋のドラマ好きで東京に行って脚本家になりたいと打ち明けられたのは、高校2年生の冬だった。
『もしダメだったら、実家の農家を継ぐことを両親とも約束をした。』
と、言われた。
私は、その時、
『新なら脚本家になれるよ。ダメだったことを考えるのは新の悪い癖だよ。』
と叱り飛ばした。
しかし、そのことは私にとってとても寂しかった。
私も東京の大学へ進学し新と上京することも考えたが、私の両親は反対した。
そして、おとなしく地元の農協へ入社した。
電話を切った翌日。
いつも元気な新が風邪を引いたことが信じられなかった。
新は小中高と皆勤賞だったからだ。
(もしかしたら無理しているのかな……。)
私は窓口業務をしながら気がかりになった。
木曜日になり、新に電話をかけた。
「もしもし。」
「紬、どうした?」
「いや、一昨日言っていた風邪治ったかなって思って。」
「うん。熱も下がってきたし大丈夫だよ。」
「え?熱あったの?いつから?」
「一昨日、紬と電話した後、熱計ったら、あって。」
「そうなんだ。」
今日も明らかに新は鼻声だった。
私はいても経ってもいられなくなった。
翌日、定時で退勤し、すぐに土曜日の新幹線のチケットを取った。
幸い、長期連休や夏休みシーズンではなかったので岡山駅から東京駅までの自由席が予約出来た。
そして、土曜日の朝、出発した。
島根から岡山までは特急に乗っても3時間くらいかかる。
山々を越えて岡山まで出てきた。
そして、岡山から東京へ向かった。
(続く)
最後までお読みいただきありがとうございました!
新のアパートへ向かった紬の恋の行方は、後編へと続きます。
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【注釈・補足】
※本作はnoteにて公開した原稿をベースに投稿しております。
※本作は欅阪46の楽曲『青空が違う』の世界観からインスピレーションを受けて執筆したフィクションです。
(とても素敵な曲ですので、気になった方はぜひ検索して聴いてみてください!)




