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【第一章完結】ナルシズム!!  作者: おしるこ星人
第一章 赤い拳? 俺の美学でねじ伏せる!!
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01. 美、降臨


【前書き】


世界は、いつだって醜さで満ちている。

暴力、怠惰、無関心――


人間が積み上げてきた“汚れ”は、

朝の光すら曇らせる。


だが、その曇りを切り裂く存在が一人だけいる。


鳴紫恋(なるしれん)。


自らの美を絶対と信じ、

その美学をもって世界の乱れを正す。


この物語は、屋上から舞い降りる絶対美の執行者が、

世界という小さな箱庭(がくえん)で美学を突き通す物語。



朝の光は、まるで俺を照らすためだけに存在しているかのようだった。


スマホの画面を鏡代わりに覗き込み、前髪の角度を微調整する。


完璧。


今日の俺も世界基準で美しい。


ここは旧校舎の屋上。

五階建てでそれほど高さはないが、校門と通学路がよく見える。


俺は毎朝ここで“治安維持”をしている。

もちろん有志だ。いや、勇志か。


美しいこの俺、鳴紫恋(なるしれん)が見守ることで、この学園の朝は保たれるのだ。


そんな俺の優雅な時間を、耳障りな声が遮った。


「おーい、ちょっと待てって。

 そんな急ぐなよ、可愛い子ちゃん?」


どうやら校門の少し手前、三人組の不良が一人の女子生徒を囲んでいるようだった。


小柄な彼女の長髪の黒髪が乱れ、片方のリボンがほどけている。


手から落ちた教科書がアスファルトに散らばり、ページが風にめくられていた。


リーゼント頭が彼女の腕を強く掴み、

もう一人の小柄な奴は彼女のカバンを足で踏みつけている。


残る金髪はにやつきながら、彼女の顔を覗き込んだ。


「朝からこんな可愛い子に会えるとか運命じゃね?

 ちょっと遊ぼうぜ!」


「いいじゃん、話すだけ。な?怖くねぇって」


「ほら、笑ってみ?その方が絶対可愛いって」


彼女は必死に腕を引こうとするが、力が入らないようだった。


「や、やめてください……返してください……」


震える声は掠(かす)れ、風の音に消える。

何を話しているのか俺にはほとんど聞こえない。

しかし、不快だ。


「返してほしいならさぁ、ちゃんとお願いしてみろよ」


「そうそう、どこ行くかはお前の態度次第なんだよ。

 わかる?」


「……景観が悪い」


俺は小さくため息をついた。


周囲の生徒たちは、ちらりと視線を向けるだけで足を速める。


誰も助けようとはしない。

まぁ、それが当たり前だし、それが正しい。


――普通の人間ならな。


「……だっせぇ」


思わず、呟きが漏れた。


ため息をつき、フェンスにもたれながら俺は声を張り上げる。


「おい、そこの安っぽいドラマ三人組。

 俺の視界で何してんだよ」


その一言で、校門前の空気がピタリと止まった。


不良たちの肩が同時に跳ねる。


「……は?」


「誰だよ今の」


「上……?」


三人がゆっくりと顔を上げ、屋上に立つ俺を見つけた。


驚きと苛立ちが混ざった、濁った視線が一斉に俺へと集まる。


「……は?何であいつ、屋上から叫んでんの?」


「お前、朝から暇すぎだろ。鳥かよ」


「てか、何でそんなとこにいんだよ。

 学園の見張り番でもやってんの?」


三人はまだ余裕の笑みを浮かべている。

完全に面白いオモチャを見つけたという顔だ。


ゆっくりと俺は前髪を上げる。


「美しい俺の朝を汚すなって言ってるんだ。

 理解できるか?」


一瞬、三人の表情が固まった。

理解不能という顔が見てとれて、実に滑稽だ。


「……は?美しい?自分で言っちゃうタイプ?」


「やべぇ、こいつ本物だわ。キャラ濃すぎ」


「おい、動画撮っとく?ネタになるぞこれ」


リーダー格が舌打ちしながら前に出る。


「降りてこいよ。ぶっ飛ばしてやるからよ」


俺は肩をすくめた。


「オーケー。どうせ降りるつもりだったし……

 ほら、朝のストレッチも兼ねてな」


不良たちが「は?」と眉をひそめる中、フェンスに片手をかけ、軽く体を預けた。


次の瞬間、五階の高さからまるで重力を無視するようにひらりと風に乗るように飛び降りる。


着地の音は驚くほど静かで、静寂だった。


アスファルトに触れた足元から、ほんのわずかに砂埃が舞う。


「……は?」


「今、飛んだ……よな?」


「え、普通死ぬだろあれ……」


不良たちの余裕が一瞬揺らいだ。

その隙に、彼女の怯えた瞳はこちらへ向けられる。


「……た、助け……て……」


掠(かす)れた声が、風に溶けるように届く。


必死に絞り出したその一言は、俺の足を進ませるには十分だった。


だが、不良たちは鼻で笑う。


「は?助け?大げさだろ」


「遊んでるだけだって。

 ちょっと話そうって言っただけじゃん」


「そうそう、ビビりすぎなんだよ。なぁ?」


彼女は首を横に振り、涙をこらえるように唇を噛んでいる。


その姿が、俺の胸の奥にある美学を静かに刺激する。


ゆっくりと視線を不良たちへ向ける。


「……なるほど。お前たちは遊びのつもりか」


ポケットに手を突っ込みながら一歩、また一歩と近づき、口元に笑みを浮かべた。


「--なら、俺の美学に反する遊びは、排除しないとな!」




【後書き】


お読みいただきありがとうございます!


読んでくださったあなたはヒーローです。


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