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すれ違い

「スマホのストア開いて、救われた恋って検索して出てきたやつ」


 ゆき氏に言われるがまま、スマホを操作するとそれらしきアプリがでてきた。


「あっ、これ!これ入れて!」


 机をダンっと叩き立ち上がると、画面に勢いよく指をさし、血走る目で俺を見る。


「お、おう。」


 その気迫に圧され、インストールを押した。ゆき氏は満足気に腕を組み、ウンウンと頷く。


 俺はめんどくさくてため息が出た。


「はぁ」


「なんでそんなに大きいため息つくのさ!」


「めんどくさいから。」


「まったく、冷たいんだから。少しくらい付き合ってくれてもいいじゃん。」


「だから、今付き合ってるだろ。」


「まぁ、そうだね」


 そうこうしている間にインストールは済み、開くを押すと、先程ゆき氏のスマホで見たストーリーが流れてくる。


 俺は右上のスキップボタンを押すとピンク色のタイトルと学校の背景。

 STARTを押し、攻略キャラを選ぶ。


「誰にするのー?」


「誰でもいいんだけど」


「そんなこと言わずに、さぁさぁ」


「うーん、第一王子でいいか。」


「安直だなー、みこくん。」


 なんだよそのノリ。


というか


「ゆき氏も第一王子からやるって言ってただろ。」


「まぁねー、バレちった。」


 てへぺろとでも言いたげに右手を頭の上にコツンと当て左目をウインク。舌まで出してる。

ケーキ屋に居そうな顔。


「てへぺろじゃない。で?どうすんの?」


「キャラの下にある決定を押す!」


「はーい」


 言われた通り押してみると、第一王子ユウキ・リースのストーリが始まった。生い立ちだ。




 そこで出会った。俺の運命を変える人に……


 こんなにキレイな人、初めて見た。ツリ目で鋭い瞳は赤く染まり誰もが膝まづく美しさ。結ばずにおろしているオレンジ色の髪は腰までありさらさらとなびく。

 俺は喉をゴクリとならせた。


 2次元か。俺もこんな人と現実で会いたい。いつも、ゆき氏が言っていたことが分かった気がした。


「ゆき氏。俺、推しが決まった。」


「え、だれだれ?」


「セレーナ!」


 こんなに誰かを好きになることはなかった。2次元なら恋しても平気だよね。


 だが、ゆき氏の反応は悪かった。えっ、という顔で止まり嫌悪感を抱いている。

今までも喧嘩することはあってもここまで拒絶されることはなかった。俺は怒りを覚える。


「なに?いいたいことがあるわけ。ゆき氏の推しキャラに、俺が文句つけたことねぇじゃん。」


「そういうことじゃない。そのキャラは悪役令嬢でみんなのこと見下して、いじめることが好きなんだよ!」


「そんなの関係ない。人の推しを貶すなんて最低。ゆき氏に付き合った俺がバカだった。ゲームを入れたからセレーナと会えたけど、ゆき氏に悪口を言われるなら……くそっ。」


「みーちゃん?」


 こんなこと言おうとしたんじゃない俺はゆき氏と話せる、共通の話題がほしかっただけ。推しができたから、話せると思ったのに。


 俺は、教室を飛び出した。席から立てずにいるゆき氏を置いて、先生の「廊下を走るな!」という声も何もかもを無視して。


----------------


 私の親友の栗林 美琴(くりばやし みこ)。あだ名はみーちゃん。みーちゃんは俺っ娘で平等主義。耳にかけられるくらいのショートカットで、顔の横に鎖骨までの長さの触角がある。目と髪は両方黒色でキリっとしたツリ目が特徴なの。

 ポケットに手を突っ込む癖があるから、柄が悪いとか男っぽいって言われるけど、寝癖がしょっちゅうあるし猫っぽいからかわいい。それに、ストレートに物事を伝えられるからかっこいいよ!

 何もしてるように見えないのに頭がいい。テストの結果が掲示板に張られるんだけど、みーちゃんはいつも五本の指に入っちゃうから嫌だなー。まあ、私はやればできる子だから本気を出せばみーちゃんなんて軽々超えるもん。

 運動神経がいいのは正直憎いなー。そこもかっこいいんだけどね!


 今日も乙女ゲームの話を聞いてくれて、さらにやってくれる!

 まぁ、そう仕向けたのは私だが。


 無事インストールが済み、攻略キャラを選択するところまで来た。


 みーちゃんは第一王子を選び、適当にスマホをタップしていたけど、途中でその手が止まった。


 まるで恋する乙女のように頬を赤く染め、画面にひたすら集中する。初めて見た顔だった。

 

 第一王子のユウキ・リースに恋をしたんだ!私がそう思って、

ニヤついていると


「ゆき氏。俺、推しが決まった。」


 真剣な顔で私を見据える。聞くのが楽しみすぎて声がはずむ。


「え、だれだれ?」


「セレーナ!」


 予想外の答えが返ってきた。驚きとともに嫌悪感を抱く。

 そんな、私の表情にみーちゃんは怒りを露わにする。


「なに?いいたいことがあるわけ。ゆき氏の推しキャラに、俺が文句つけたことねぇじゃん。」


「そういうことじゃない。そのキャラは悪役令嬢でみんなのこと見下して、いじめることが好きなんだよ!」


 セレーナは悪役令嬢。いじめることが大好き。いじめる人は嫌いだ。いじめられるのはもう……


「そんなの関係ない。人の推しを貶すなんて最低。ゆき氏に付き合った俺がバカだった。ゲームを入れたからセレーナと会えたけど、ゆき氏に悪口を言われるなら……くそっ。」


「みーちゃん?」


 本気で怒ったみーちゃんは私をその瞳に入れてくれない。


 みーちゃんは教室を出ていく。私はしばらくの間、動けなかった。

 先生の「廊下を走るな!」という声でようやく我に返った。みーちゃんを追わなきゃ!


 自然と足が動く。せっかく推しを作ってくれたのに私の私情で怒るなんて……みーちゃんにちゃんと謝らないと。

 



 

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