ステータスと鬼教官
遅くなりました。投稿します。
夜明けの空をゆっくり、一定の高度で北東に進む白い魔導船。
あの日から一ヶ月の月日が流れ、ある程度の訓練を終えた白夜達は、王都から馬車で十日も掛かる距離にあるカムラン渓谷付近に作られた街――カムランの街へ魔導船に乗って向かっていた。
そして今現在、白夜はその魔導船にある貨物室で荷物の整備を手伝いをしていた。
本来なら、オルレアン王国から支援されない自分は魔導船に乗せて貰えない筈だった。だが、ダリア達の口利きのお陰で作業員の一人として魔導船に乗せて貰えることになったのだ。
貨物室の一角。両手に持った木箱を床に置いて、白夜は一息つく。
「ふうっ、これで最後っとゼル爺! 終わったよ!」
「おう坊主、お疲れさん! もうやることはねえ。適当に休んでろ! お前ら、後少しで目的地に到着するぞ!」
急げぇー! とゼル爺と呼ばれた人物がそう叫んだ。
「「「うーっす!」」」
「はい! 皆さんもお疲れ様です!」
「「「おう! お疲れ」」」
一緒に貨物室で荷卸しの作業をしていた作業員達から返事が返ってくる。
白夜は作業の邪魔にならないように部屋の端ある木箱に座ると、休みながら時間を潰しにこの一ヶ月――経験した訓練を思い起こす。
◇ ◆ ◇
城内にある訓練場、全身鎧を装備した白夜に、紺色のジャージ姿のダリアが腕を組みながら口を開く。他の皆は同じ訓練場の一角で、ジャンとジルバート――二人の指導のもと訓練を始めていた。
「では、今から身体の基礎を作る特訓を開始するが、その前にハクヤ殿、〝状態確認〟と唱えくれ」
「今から? この鎧を脱いでからじゃあダメかな? 汗かいて中が凄く蒸し暑いだけど……」
この全身鎧の内部は、わりと熱がこもりやすく装備いるだけでも暑い。すでに中にいる僕は全身汗まみれになっていた。
「すぐに済むから唱える!」
「わ、分かったよ! ――『状態確認』!」
僕がそう唱えると、視界にゲームステータスみたいな画面が表示される。
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名前 :天城・白夜 性別:男
クラス :無能者
ワンド :[世界・無能者]
ソード :
カップ :[全種類]
コイン :[無職]
筋力 : I (S) ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
耐久 : I (S) ★★★☆☆☆☆☆☆☆
敏捷 : I (S) ★★☆☆☆☆☆☆☆☆
器用 : I (S) ★★☆☆☆☆☆☆☆☆
魔力 : I (S) ★★☆☆☆☆☆☆☆☆
幸運 : F (S) ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
属性 : 火 水 風 土 雷 氷 光 闇 木 鋼 時 空
スキル :【習得】【予感】
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マジマジと画面を眺めていると、様子を見ていたダリアが説明し始める。
「ふむ、今視界に見えているが【ステータス】と言うもので、クラスを獲得すると誰もが使える能力値を確認できる特殊能力だ」
「この画面が【ステータス】っていうモノなの?」
「そうだ、そして先ほどハクヤ殿が唱えたのが〝スキルトリガー〟。魔法やスキル、戦技を発動させる条件だ」
「へぇ、でもダリア。それって唱えないと使えないの?」
僕の質問に、ちょっといじけながらダリアは答えてくれた。
「ミルトスにはこんな諺がある。〝言葉は力で在り、名は意味を表す〟……要は言葉にした方が簡単にできる、と言う意味だ。まあ、実際はよく分かっていないのだがな」
どうやら〝スキル〟の発動する原理は、ミルトスの住人でも知らないそうだ。
そんな僕の考えを察したのか、ダリアは「誤解しないくれ」と言うと、
「実際、修練次第でできる者もいる。大事なのはスキルや魔法、戦技を明確に理解しイメージすることらしい。ただ、そんな芸当ができるのは相当な熟練者か、【無詠唱】もしくは【無拍子】といったスキルを持つクラスぐらいだな」
「そうなんだ。ちなみにダリアはできるの?」
「私は………まだまだ未熟者だからな」
ダリアのそんな顔を見る限り、彼女自身にはできない程の高等技術みたいだ。
「次に戦技について――〝戦技〟は魔力を用いた強力な技だな。熟練者になると属性が付与した上位技が使えるんだ。またクラスやスキルによって威力に補正が掛かる。……だが、これはまだ必要ない技術だ」
「え、どうして?」
「基礎となる身体、そして必要な知識と技術。基礎が出来ていない中途半端な状態で教えても大怪我の元になるだけだ」
確か、と僕は頷く。スポーツでも身体の基礎作りが大切だ。
例えば、柔道の技でも初めに習うのは自分自身の安全を確保する受け身らしい。
僕が基礎に対する理解を示すと、ダリアが言う。
「だから、身体が出来上がったらいずれ教える。
先に【ステータス】の意味を説明させてくれ―― 『状態確認』」
そこに【ステータス】が表示されているのか、ダリアは虚空を指でなぞるように動かしていた。
「まずは、基礎パラメータから[筋力][耐久][敏捷][器用][魔力][幸運]の六項目。そこからS、A、B、C、D、E、F、G、H、Iの順に十段階と〝☆〟で自身の能力の高低を示すんだ。〝★〟の数が多い程、全体の能力が強化される」
なんかゲームの設定を聞いてる気分だな。
そう思いながら僕は黙って説明に耳を傾ける。
「そして、この〝★〟が十個に達すると基礎パラメータが一段階上がる。だが、一段階上がるごとに能力値が上がり難くなるんだ。星の隣に有る〝()〟の意味は………」
説明している途中で、ダリアは苦虫を噛みつぶした顔をした。
「どうしたのダリア!? 急に嫌そう顔を作って?」
「ああ、すまない。これの意味は能力値の限界を示し……同時に天職階位主義という思想が生まれた原因なんだ」
心配して声をかける僕に、申し訳なさそうにダリアに謝られる。
「そ、それは確かに嫌な顔になるね」
その思想に毛嫌いしている彼女にとって、ごく自然な反応なんだろう。
「でもダリア。僕はその限界値が(S)だけど、これって下級クラスでも普通のことなの?」
「それは〝世界〟のクラスが特別なんだろう。普通下級クラスでは(S)なんてあり得ない。限界値は天職階位が高い上位クラスほど上がっていくものだ。《魔導剣士》の私ですら最高が[筋力](A)なんだが……まあ、話を戻そう」
あまり触れて欲しくない様子だった。なので僕は別の話題を振った。
「この基礎パラメータの具体的な意味は?」
「[筋力]は力や攻撃力を示し、パラメータが高いほど威力や力が上がるんだ。次に[耐久]は防御力や体力を示す。[敏捷][器用][幸運]は大体文字通りの意味だ。残りは――」
「[魔力]だね!」
突然、大きな声上げ、僕は目をキラキラさせる。
……ふふふ、魔力と言ったらファンタジーの代名詞たるアレのことだ。
ワクワクと答えを想像していた僕に、「フフっ」とダリアは軽く微笑んだ。
「ハクヤ殿も皆と同じだな。ではご期待に答えよう、[魔力]とは魔法に対する強さと魔力の保有量を表している。[魔力]と[器用]が高い者程、魔法を色々と使いこなせる」
「どんな風に魔法を使えるの」
「う~む? 私は魔法はあまり得意では無いからなぁ……あ!」
その質問に悩むダリアは何かを思い出し、口にする。
「確か〈絶影〉や〈常闇の魔女〉の二つ名を持つ闇魔法使いの冒険者が手足の様に魔法を使いこなすと噂で聞いた事がある」
「闇魔法……そう言えばダリア、その魔法ってどんな種類や属性があるの?」
「うん……そうだな。魔法は攻撃系や防御系、他にも様々な種類がある。そして属性は火、水、風、土、雷、氷、光、闇、木、鋼、時、空の十二属性だ。
他に無属性という属性に当てはまらない魔法もある。属性魔法は適性属性がないとその属性の魔法が使えないんだ」
このくらい魔法の基礎だからな、と得意気な顔をするダリア。
「まあ、大体この程度か、取り敢えずハクヤ殿。【ステータス】を教えてくれ、分からない事は後で教える」
そう言われ自分の【ステータス】を伝えると、ダリアはその内容に驚く。
「ほう! 全属性に[幸運]がFなのか、随分と高いな!」
「え、そうなの?」
「ああ、[幸運]の能力値は本人の資質に依るからな。初期値で[幸運]Fなんて余程の豪運の持ち主にしかあり得ないぞ。それに属性の方も凄いな、知っていたが改めて見るととんでもないことだぞ」
「そんなにも珍しいの?」
「ああ、属性は大体一つか三つくらいで、稀に六つの属性を持つ者がいるという話だ」
「全属性持ちって凄い貴重な存在なんだね」
「まあ、他は………これからの訓練で出来る限り上げていこう!」
「お、おおー!」
気合いを入れるダリアに、僕は素朴な質問する。
「……でも、訓練したら【ステータス】が上がるの?」
「確かに、【ステータス】を上げるには魔物や魔獣を倒し〝アニマ〟を吸収した方が効率は良い」
〝アニマ〟……確かラテン語で生命や魂って意味だけど。ダリアが口にしたアニマとは、多分RPGでよくある経験値の事を言っている気がする。
「だが、訓練でも多少は上がる。それに得た知識や経験は馬鹿には出来ないぞハクヤ殿」
【ステータス】を眺める僕に、ダリアなりに励ましてくれたのだろう。
「はは、ありがとう。……でも僕って結構運が良いんだ」
「………まあ、確かにハクヤ殿が今まで体験したことを思えば納得できるか」
ウンウンと頷くダリアの言葉に。
……この二日間で結構な修羅場をくぐり抜けたな、僕………。
僕は感慨深く思うと、
「そう言えば【ステータス】にLvとかはないの?」
「ん? Lv? ハクヤ殿、Lvとは?」
初めて聞いたとばかりにダリアは不思議そうな表情を浮かべる。
「ええと、レベルって意味だけど……」
「【ステータス】関連でレベルと言えばスキルレベルのことだが? すまない、Lvという言葉に聞き覚えがないがそれは【ステータス】に関係しているものなのか?」
どうやら恩恵には〝Lv〟と言う概念はないらしい。
「いや、何でもないよ。気にしないで」
「……ふむ。ハクヤ殿がそう言うなら」
「それとスキル欄に【習得】と【予感】の二つしかないだけど、これってどういう事なの?」
【ステータス】を眺め、ジャンに聞いていた内容が違うと僕は指摘した。
すると、ダリアは必死に何かを思い出そうとする。
「えっと……多分、条件を満たしていないんだろう! 【ステータス】に記載されているクラスのスキルは条件を満たすことでスキルが解放されることがあるんだ。ハクヤ殿、私に〝鑑定〟と唱えた後、【ステータス】を見てくれ」
「え!? うん! 分かった――『鑑定』」
ダリアを見つめてながらそう唱えると、僕の目の前に文字が表示される。
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名前:ダリア・オルレアン 性別:女
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「うわ!? なんかダリアの名前と性別が出たけど!」
「【鑑定】は【ステータス】の一部を視るスキルなんだ、ハクヤ殿。次に自分の【ステータス】を見てくれ」
何かの確信をしているダリアに促され、僕は【ステータス】を覗く。
「あ! スキルの一覧に【鑑定】の文字が出てる! あれ? ダリアは視えないの?」
「【ステータス】は基本、自分以外は視えないものだ。もし、他人の【ステータス】を視るとしたら【解析】と【鑑定】系スキルか、それ専用の魔道具を使わないと普通は無理なんだ」
「……へえ、この世界にはそんな魔法の道具があるだ」
僕が感心していると、ダリアは気になることがあるのか。数秒、考えた後。
「……ハクヤ殿。すまないが少し試したいことがある。【魔導剣】と唱えた後、先程のように【ステータス】を視てくれ」
「うん! 分かったよ……ルーンフォース!」
ダリアに促され、僕は上機嫌でスキルを唱えた。……しかし、
「………何も起きない」
唱えた筈のスキルが発動せず、その力の片鱗すら現れる気配が無かった。
僕は再び【ステータス】を確認するが、【魔導剣】の文字がどこにも存在しなかった。すると――
「……やはり下級クラスでは英雄級クラスのスキルは発動しないか」
ダリアは気まずそうな表情でそう言う。そのダリアの言葉を耳にして僕は「やっぱり無理だったんだ」とさっきまでの上機嫌がウソみたいに落ち込んでしまう。
「いやハクヤ殿!? そんなにも落ち込まずとも良いではないか! これで他のスキルを習得する条件が分かったのだから! それに実は言うと【ステータス】については未だに謎めいた事があって私達にもよく分っていないんだ!」
鎧兜で覆われ、表情は見えない筈だが、ダリアはその暗い雰囲気を察して、あたふたしながら慰めてくれる。
……確かにダリアの言う通りだ。
自身のクラスの力について判ったんだから落ち込む必要なんてないのだ。
そんなダリアを見て僕はそう思い苦笑し、気分転換に周りを見回す。すると、偶々目に入ったジルバートに、好奇心を抱き、【鑑定】を使用してみた。
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名前:ジルバート・ローズベルト 性別:漢女
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「…………………」
うん、見なかったことにしよう。
……今の未熟な僕には、世界の深淵を覗くなんて早すぎる。それにそんな余裕もないよ!
ハハハ、と苦笑いしつつ、ダリアに向き合う。
「……ごめん、ダリア。心配かけてもう大丈夫だから」
「おお、気を取り戻してくれたハクヤ殿!」
声をかけられたダリアは嬉しそうに、そして申し訳なさそうに頭を下げた。
「いや、こちらこそすまないハクヤ殿。君が気にしていた事をずけずけと、その……お詫びにもならないが何か私に聞きたいことがあった遠慮なく言ってくれ」
「ダリア………あ、ならあの時、ダリアの手に魔導具を現れたのはどういう原理なの?」
こういう場合、許すと言うよりも相手の誠意に乗った方が気持ちが楽になるからね、お互いに。
「うん? ああ、これのことか――『魔導武装』」
ダリアが突き出した右手が発光する。そしてそこには抜き身の長剣――《ゲオルギウス》を召喚された。
「うん、それ! ダリア、一体それはどういう現象なの?」
「別にそう大したことではないぞハクヤ殿。これは自分の魔導具に〝銘入り〟されれば誰にだって出来る事だからな」
……え? 銘入り? ダリアが持ってる魔導具の名前が《ゲオルギウス》じゃないの?
と、元の世界の知識を照らし合わせた僕はダリアに訊ねる。
「ねえ、ダリア。それってどういう意味? 《ゲオルギウス》が〝銘〟じゃないの?」
「ふむ、つまりだなハクヤ殿……」
《ゲオルギウス》を地面に突き立てたダリアは先程の言葉の意味について語った。
それによると、〝銘入り〟とは魔導具の所有者――〝ユーザー〟として登録されるという意味らしい。
この銘入りされると、魔導具に備わる能力や〝魔導武装〟と呼ばれる所有者の手元に召喚する機能が使用可能になるそうだ。また、その際に魔導技の効果や使用手段など様々なことが理解るらしい。
ちなみに、この銘入り――登録をリセットするには所有者であるユーザーが死亡するか、《技士》系統のスキルで登録をリセットするしかないそうだ。
ダリアからそう説明され、僕が抱いた感想は――
「へえ、凄く便利な機能だね」
「ハハハッ! 確かに便利なのは事実だ。だが、いつ魔導具に銘が刻まれるかは未だに解明されていない。だからそれまで自分の魔導具を使い続けないといけないのが欠点だな」
ダリアが笑いながらそう言った。
「それでも良いよダリア。……僕にはその魔導具すら……」
ヘルムごしに顔を俯かせる。
この国から支援されない身である僕にとって魔導具とは一度は手に入れたい夢のような存在だった。
そんな僕を眺めながら、ダリアは心苦しく思いつつ、
「……まあ、別に我が国の支援がなくとも魔導具を手に入れる方法なら他にも有るからな」
ポッツリと呟く。「えっ」と声を漏らし僕は顔を上げると。
「なあにハクヤ殿。気にすることはない。それにハクヤ殿なら今後、確実に魔導具を手に入るだろうから安心すると良い。それよりも他に聞きたいことは有るだろうか?」
そう意味深な言葉を残し、ダリアは笑みを浮かべる。
「ええっと………特にもうないかな」
「そうか、では訓練をは………」
ダリアがそう言おうとした時だった。
あ、とダリアは何かに気付き口を開く。
「すまないハクヤ殿! 一つ、スキル発動について言い忘れていたことがある! 恐らくハクヤ殿のクラス――《無能者》にしかない問題だ」
「言い忘れたこと? それに僕のクラスしかない問題?」
「ああ、スキルを唱える時は必ず一つずつ唱えるか。もしくはタイミングをずらして発動させるんだ。そうでないと互いのスキルが干渉して打ち消してしまうんだ」
「う~んと、つまりスキルの同時発動は出来ないってこと?」
「ああ、そうだ。一応、発動中のスキルに上乗せは出来る。だが、どうしてもスキルの同時発動だけは出来ない。だから、スキルを唱える時は気を付けてくれ……」
そう言ったダリアは「さて、もう説明する事はないな」と囁く。すると、いきなりダリアの威圧感が増し、鎧兜を纏う僕を睨みつけた。
「……では、今から訓練を始めるぞハクヤ殿。今日の訓練内容は………実戦で生き残る為の基礎作り! ただひたすらその格好で走って避けろ。ただそれだけだ」
「え、ええっとダリアそれはどう………」
戸惑う僕が訊ねようとした瞬間。
「何をしている! とっとと走れぇッ!! ――『魔導剣』!」
【魔導剣】が発動し、ダリアの身体に吹き荒れる緑光の風がエンチャントされる。
ヤバイ! と【予感】が報せ、僕はガシャガシャと金属が擦れるうるさい音を立てながら急いで駆けた。
「風よ・我が元に集え――『ウィンドボール』!」
ダリアの周囲に野球ボールぐらいの風の玉が大量に出現した。そして、ダリアはその無数の風球を《ゲオルギウス》を使い、千本ノックのように僕に向かって打ちまくる。
「わっ!? ちょっ! ぎゃぁ!? グエェ!?」
咄嗟に【予感】が発動し、僕は一発目は避けた。だが、その次にきた風の剛速球に当たりバランス崩し、飛んできた三球目で地面に倒れた。
そこにダリアの怒声が飛んできた。
「誰が倒れて良いと言った! 立って走れぇぇぇッ!!」
「む、無理です! こんなの死んじゃうよダリア!?」
「バカもんがァァーーーーッ!! 貴様のその鎧はなんのための鎧だぁ! 死なん為の鎧だろうがぁぁ! 理解したなら早く走れぇぇぇぇッ!! そんな弱音が吐けなくなるまで走って避け続けろォォォォォッッ!!!」
「わぁあああぁぁぁーーーーッ!?!?」
倒れた僕に数十発もの風の砲弾を食らい吹き飛んだ。そして、痛みに耐えつつ僕は地面を転がりながら急いで立ち上り風の弾幕から必死に逃げた。
その途中、何発か当たった時、受けるダメージが軽減されるのを感じた。おそらく新しいスキルを獲得したんだろう。
◇ ◆ ◇
――そして、五分後。
「………………………」
訓練場の一角。ボコボコに凹んだ全身鎧、その中身――白夜は気絶していた。すると、そこに《ゲオルギウス》を肩に担いだダリアが近づき、
「立つんだハクヤ殿! まだ君は立てる筈だ! あの時、ビックフットで魅せた君の勇気と根性をもう一度、私に魅せてくれハクヤどのぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「無理に決まってるでしょう姫様!?」
何処かの眼帯を着けた人物のセリフを叫ぶダリアに、駆け寄ってきたジャンがツッコんだ。そしてジャンはすぐに気絶した白夜に回復魔法を施す。
「おい! ジャン何を勝手にか――」
「はぁ~いダリアちゃん。少し向こうでワタシとお・は・な・し・しましょうね」
「なぁ!? ちょっと待てジル!?」
その行為に対して文句を言おうとするダリアを、いつの間にか現れたジルバートに襟首を捕まれ、人気のない訓練場の一角に連行される。
やがて、ジャンに回復魔法を掛けて貰った白夜は目を覚ます。
「カハッ!? ……あれ、僕は一体ぃ――ってジャン!?」
「お、ハクヤ! 目が覚めたんです、良かった!」
今、鎧を外しますから、とテキパキとボコボコに凹んだ全身鎧を外すジャン。
そして鎧を脱ぎ終えた白夜はお礼を言う。
「ありがとうジャン……でも、どうして此処に? みんなと訓練してたんじゃ?」
「ああ、それはですね……」
と、ジャンは此方にきた経緯を説明してくれた。
どうやらジャンとジルバートは皆に訓練を指導しつつも、自分達の訓練――主に訓練時に鬼教官化するダリアを監視していたらしい。
なんでも、ダリアは騎士総団長としてのカリスマや実力がある半面。訓練教官としての才能がないそうだ。
何故、そう判断されたのか、理由は簡単だ。彼女が行う訓練は頭がおかしいと云われる程にスパルタ過ぎて、何百人の見習い騎士達を潰したからである。
と、そんな感じの説明を終えたジャンが、鎧を全て外した白夜の顔を真剣な表情で見つめる。
「ええ、ですのでハクヤ。……このまま姫様と訓練しても潰されるだけですから皆さんと一緒に……」
「心配してくれてありがとうジャン。……でも、僕はこのままダリアと訓練を続けるよ」
心配するジャンの言葉を遮り、白夜は苦笑しながら言った。
「なぁ、正気ですかハクヤ!? 姫様のあの訓練とは名ばかり拷問を続けるとか、目を覚ますんですハクヤ!」
白夜の言葉に、驚愕するジャンはやめときないと説得しようとする。
「いいですかハクヤ。姫様は見た目は美人ですが中身は脳筋ですよ! 正直、あの性格さえなければ~な、と思うほど脳筋姫なんです!!」
「聞こえているぞジャンァァァ! 貴様はいつも私をそんな風に見てたんだなコラァッ!!」
「あら~ダメよ姫様。お説教は終わっていないわよ」
まるで鬼の形相というべき顔をするダリア。そんなダリアをジルバートがとおせんぼする如く捕まえた。
「邪魔だぞジル! 「ひ・め・さ・ま」……チッ、くそ。覚えてよジャン!」
「もうそんなじゃお料――――」
「待てジル! そのくらい――――」
そんな二人を白夜は眺めつつ、ジャンに向き合う。
「……ありがとうジャン、でも僕はもう決めたんだ。強くなって、そしてみんなと同じ場所に行こうってだから」
「しかし、ハクヤ………」
自分の心の中にある想いを、意思を、決意をジャンに伝える白夜。
ジャンはそんな自分をジッと見つめた。まるでどのくらい覚悟があるか、試しているかのように。
――やがて、
「はぁ~、分かりました。全くハクヤは手間の掛からない子供だ思っていましたが」
根負けしたジャンはため息をついて立ち上り、苦笑する。
「いつの間にか、こんなに成長するとは……ハクヤ。少し待って下さい姫様とジルバートに相談して来ますから」
「え、うん」
そう言うとジャンはダリア達がいる方へ歩いていくと。
「それで姫様、今後の訓練について相だ――」「誰が脳筋姫だッ!!」「グボハッ!?」
ジャンは青筋を浮かべたダリアに見事な右ストレートを貰い倒れた。
ダリアはそのままジャンにマウントを取ろうとするが、素早くジルバートに「どうどう姫様、なんでも暴力で解決しようとしないの」と羽交い締めされて止められる。
やがて倒れていたジャンは立ち上がり、ジルバートに羽交い締めされるダリア。
そんな状態で三人は話し合いを始め――数十分掛けて話し合いを終えた。
それから、顔に青アザを作ったジャンは白夜の元に帰って来ると、先程の話し合いの結果。自分達が分担して魔法や武器の扱い、必要な一般知識や技術などを教えることになった、と伝え白夜と共に皆がいる場所に向かった。
最後までお読み下さりありがとうございます。
投稿ペースが遅くすみません。




