銃作り開始の話
「ええっ!?私に科学を学べって言うんですか!?まぁそりゃあ、イリアス君が教えてくれるのは嬉しいんですけど…」
俺の知り合いで一番頭がいいのはカノンちゃんだろうな。だけど、急にこんなこと言ってずいぶんと驚かせちまったな。。俺たちと違って、お国の事情を何も知らないんだから無理もないか。
「なぁミロクちゃん、学園長には他言無用って言われたけど… どこまでなら話していいんだ?」
「あたしに聞かれてもねー。その子がどの程度信頼できるかによるんじゃない?あくまで混乱を避けるってのが目的だし。」
そこで俺は、知ってる情報のほとんどを教えてあげた。生徒会のこと、魔獣が増えてること、王国管理局から依頼が来たこと。だけど、俺の家族のことは伏せておいた。俺が感情的になってしまったばっかりに、あの生徒会長にさえ申し訳ないと思わせてしまったんだ。カノンちゃんは優しい。だから俺なんかのために悲しい気持ちにさせるわけにはいかない。
「なるほどー。学園の外ではそんなことになってたんですねー。わかりました。これ以上の被害を防ぐためにも、協力します。」
「ありがとう。俺ができるだけカバーするつもりだから、わからないことがあったらなんでも聞いてくれ。」
寮を出て、俺たち3人は秘密の部屋、科学室へと向かった。あいかわらず完璧にも程があるくらい隠されてんな。
「ねぇイリアス君、あたし科学室行ったことないんだけど、大丈夫かな?」
「何がそんなに心配なんだ?」
「"不審者だ!とっ捕まえて実験台にしてやる!"みたいな展開にならないかなーって。」
ミロクちゃんはちょっと抜けてるところがあるから、道具を壊したりしないように見張っておかねば…
俺はバッグから鍵である魔導書を取り出した。確かこう押し付ければ… ほら開いた。
「おおー!すごい、噂には聞いてましたけど、本当にあったんですね!でもこれってどういう原理なんです?」
「俺もよく知らないんだよな、そこら辺。今度学園長にでも聞いてみるか。」
中に入ると前と同じように、よくわからない機械でごちゃごちゃしていた。前世の俺はこういう機械系じゃなくて、薬なんかを作ったりしてたみたいだから、本当に武器が作れるのか不安になってきた…
「ガウス博士!いるんだろ!?」
俺がそう呼びかけると、奥の方から試験管を片手に白い服の老人が出てきた。
「おや、君は確か… ああ、そうそう!イリアス君だね。今日は何の用だね?」
「学園長に頼まれて来たんだ。なんでも、銃を作ってほしいんだと。」
「ほう、銃か。ひとえに銃と言っても様々な種類があるが、どうするね?」
「非力な者でも使えるやつって言ってたから、自動小銃なんかがいいと思うけどな。」
「了解した。君にも手伝ってもらうよ。して、そちらのお二方は?」
「あたしはミロク、生徒会の方からの立会人みたいなもんかな。頭がいいわけじゃないからあんまり手伝えることはないと思うけど、よろしく!」
「あたしはカノンです。えーっと… イリアス君のお弟子さん、ですかね。」
「カノンちゃんには俺の助手をやってもらう。後衛を育てろってのも学園長の命令だからな。」
「ほうほう、あいわかった。して、研究の方は今日から始めるのかね?」
それを言われて初めて気がついた。いつまでに完成させればいいんだ?期限については何も言ってなかったよな…
「そうだな。早いに越したことはないだろうし、今日から始めたいな。」
さて、何から始めればいいものか。
「イリアス君、あたしたちは何をすればいいのさ?」
「銃を作るためにはまず… 火薬、ガンパウダーを作らなきゃならない。」
「それには何が必要なんですか?」
「えーっとだな、木炭、硫黄、硝石。とりあえずこれで黒色火薬でも作ってみよう。」
「炭はともかく、硫黄と硝石って何なんだ?」
「硫黄は火山にある黄色い石で、温泉なんかに混じってるな。硝石は乾燥地帯の土壌に含まれてて、塩と一緒に食材に擦り込むことで保存料として使われてる。」
「おお… さすがに詳しいね…」
「でも、どうやって入手すればいいんでしょうか?」
「硫黄は火山、硝石は砂漠にあるんだが、問題はどうやってそこまで行くか、だな。」
3人でうーん、と考え込んでいると、傍で別の作業をしていたガウス博士が話しかけてきた。
「売店なら取り寄せてくれるはずだぞ。その二つなら特段採取が難しいものでもないしな。」
「なるほど、それだ!じゃあミロクちゃん、売店のアリサさんのところに行って注文してきてくれるか?」
「あいあいさー!硫黄と硝石って伝えればいいんだね?わかったよ!」
やたら元気よく飛び出して行ったな、ミロクちゃん。材料が揃うまでは特にすることもないが、どうしようかな。
「イリアス君、ちょっといいですか?」
「お、なんだ?」
「火山や砂漠なんてジプレクス王国にはないですし、その材料が届くのはまだまだ先だと思うんです。だから今のうちにいろいろ教えてくれませんか?」
「基礎的なことをその都度教えていくのも面倒だしな。最初にまとめて覚えてもらうか。」
俺がカノンちゃんとの勉強会を始めてものの数分でミロクちゃんが帰ってきた。
「ただいまー!アリサさんに頼んできたよ!二、三週間で届くってさ!」
「めちゃくちゃ早いご帰還だな。そんなに俺と勉強したかったのか。」
「勉強だけは勘弁して!こんなことなら走って帰ってこなければ良かった…」
銃作り初日は材料の目処が立っただけで終わったが、ゼロから作ることを考えれば上出来だろう。




