ひとり
2度目のトリップは、とても穏やかに過ごせたのではないかと思う。
リューオーと長い時間いたのも、このときだけだ。
思えば貴重な時だったのかもしれない。
3度目は半年ほどいた。
昔の中華風といったところで、あたしは小料理店で働く給仕人になっていた。
その世界で、どういう風な人物の、どこの家族のもので、どんな暮らしをしていたのか。
トリップ直後、そんな夢を見ていたような記憶が、一気に駆け巡る。
いまだに夢の続きをしていると、そんな風に思っていた。
リューオーに再び逢ったのは、小料理店の客として入ってきたときだ。
1度目のときより年下のようで、同い年くらいだと思うような風貌だった。
後で聞いたことだけれど、リューオーはそのころ友人と旅をしていたとかで、昼食を済ましたら街を出るところだったらしい。
……どこで逢うか、わかったものじゃないですね。
その数日後に、また異世界トリップ。
今度はトイレの扉を開けたら、ようやく見慣れた居間ではなく砂漠。
そして何故か扉ごと取っ手を持ったまま、あたしはしばらく一人たたずむしかなかった。
持っていた扉を八つ当たるように投げ捨て(砂漠ど真ん中で何をどう使うというのだろう)、着の身着のまま歩いた。
激しい日光。
乾いた空気。
砂埃立つせいか、目が痛いのと喉がいがらっぽい。
大粒の汗が流れる。
水、日陰、涼しいところがほしいと求めても、あたりは砂山ばかりで、どこがどうなのかわからない。
それでも行動を起こさなきゃ人に会うことなんてできないと思って、あたしは歩き続けた。
くらりと目がかすむ。
あー、このまま死んじゃうんだろうなあ。
そんなことを思いながら、砂に気を取られて膝ががくりと落ちる。
誰かの、怒鳴り声が聞こえた気がした。