正 座
不安は残るけれど、ひとまず“流れのまま”に。
久しぶりに、自分の部屋にきた。
トリップ前後の時間はそんなに経っていないため、周りからすれば、毎日ここで寝ているんだから何を言っているのか、と思うだろう。
けれど本当に……それこそ1年半ぶりの、自分の部屋だ。
感傷に浸る。
しみじみって、こういうことをいうのかもしれない。
鞄の中身を確認。
使えなかった携帯電話を、さっそく見てみた。
……よし、使える。
今思えば、この世界の時間が止まっていたらなんじゃ?と思う。
あくまで思うだけだけど。
待ち受け画面は他人からマイナーだと言われているキャラクター。
日付と時刻を見てみて、今日が金曜日でよかったと心の底から思う。
ゆっくり休むことができるんだ……。
安心して横になる。だらだら。ぐだぐだ。
……あれ、なんか忘れている?
1階から母が、あたしを呼ぶ声が聞こえてくる。
「はあーい?」
「ちょっときてー」
1階に降りて、母がいる……リビングに向かう。
何で妹は、正座をさせられているんだろう。
姉はおろおろとうろたえ、兄とリューオーは我関せずといわんばかりに平然と夕食を食べている。
帰ってきたのだろう父は、にこにこと笑って母の隣にいた。
父の笑顔と母の機嫌が悪そうな顔の、表情の差が余計に怖い。
「……何?」
「いいから、あんたも正座して」
「何で?」
「いいから」
「な」
「座れえ!」
母は質問に答えてはくれず、すさまじい剣幕で怒鳴りこむ。
何なんだ、まったくもう。
「来週あんた、テストあるって言ってたよね?」
……はい?
「言ったっけ?」
「カレンダー」
「……? あ」
母は壁がけのカレンダーがあるほうを、顎を使って見るように促した。
カレンダーには、テスト期間と、その詳細が書いてある。
まがうことない、あたしの字。
さあ、と顔が青ざめた。
こ れ は !!
「あんたもか!」
すかさず母の怒号。
リューオーにこんな姿見せてごめんねえと言っているけども、容赦しない。
「テストを忘れるなんてどうかしてるわ!! だいたい学生の本業ってのはね」
声を荒げて説教が開始される。
妹が忘れやすいってのは常だからわかる。
だけどあたしの場合は1年半超の空白があるんですとは言えず。
母の説教、父のフォローという名のきつい皮肉を、妹と一緒に耐えるしかなかった。
足が痺れたっていうと、足にちょっかいだして、ひどいときは足を踏む親だから、もちろん黙っている。
懐かしさを覚えるけど、これはこれで遠慮したい。
……ええ、そんなわけで。
テスト勉強を、始めねばなりません。
「反応と、悶えているのが笑える」
足痺れたっていうと、悪戯心からか笑って、ちょっかいだすひと、いますよね……。