発 見
今までの出来事を順に、あたしは話した。
ニコは茶々を入れることなく、相槌を打ち黙って聞く……というより、あたしの話を耳に入れながら何か考え込んでいる様子だった。
「ふむ、妙だな……」
しばらく経ってから、ニコの第一声がこれだった。
それから当事者のあたしをよそに、またぶつぶつと独り言を呟く。
その独り言は、ニコの名前のときのように、声がぼやけ聞き取りにくくなっているために、何を話しているのか内容がわからない。
近くのニコより遠くの、隣の机に座っている2人の会話の方がまだ聞こえる。
親戚の娘がどうやら結婚するらしく、彼の友人が嘆いているという話を笑いながら話し合っていた。
どんまい、友人。
「……まあ、我があれこれ思案しても無駄だろう。おい、もうそろそろ出るぞ」
ようやく見切りをつけたのか、ニコは半ばあきらめいた溜め息をついて店員さんに声をかける。
無礼にも隣の話に耳を立てていたために出遅れ、あたしは慌ててニコの後を追った。
気づけば支払済みになっていて不思議だった。
どうやってその4足でお金出して払えたんだろうか。
料亭の外を出て、街を歩く。
黄土色がかった白い土づくりでできている平屋の建物が多いその街は、人が多く活気づいていた。
だんだんと人が混む中で、やがて噴水を中心とした造りでできている大きな広場を目のあたりにする。
砂漠はサボテンいっぱい、オアシスにある植物はヤシの木一本なんていう、ひどいイメージがあっただけに、緑多い植物があるなんて驚くばかりだ。
噴水広場と整備された道以外は、草が生え円を描くかのように樹木がある。
それを横目に、ニコは人だかりの多い道を行く。
もしかしてわざとそうしてる?
「あ、あの……」
「……お前等は大変な目に巻き込まれているが」
あ。
“汝”から“お前”になってる。
なんでだか格上げされた気分になって、それでも嬉しいのは、何故だ。
ニコの声は、雑踏にまぎれているため、あまり聞こえなかった。
ニコの名前のときや、さっきの独り言よりは聞こえるけれど。
それでも聞きづらいというのは変わりなく、ニコの近くに寄って話を聞いた。
「乗り越え受け入れろ、とは言わん。全ては流れのまま身を任せよ」
我の恩恵も少しはくれてやろうと、寄った顔が頬に近づいた。
ほ、ほっぺちゅー?
慰められたってことかな。
あんなセリフだけど、女の子のような声と桜色をしたたてがみの白い麒麟さんなんだ。
「お、見つけた」
こんなかわいい麒麟さんを扱き扱うニコが仕える人の気がしれないよーますます、かわいい。
そう思っていたところで、この世界の街に似つかわしくない服装の男が、ニコを見てこう言った。
街の人たちは、ゆったりとした服装だけど少しでも日に当たらないようにするためか布を体を覆っている。
それに対し男は、前の世界が似合うような中華風な着物で、布が薄く豪華そうな服装だった。
知り合い?
男に気づいたニコは、不愉快といわんばかりに苦々しい顔をしていた。
……色々、もどかしく感じます。
ええ、色々と。