事 情
ニコの愚痴は、街に着いても留まることを知らない。
今はニコに庶民的な料亭に連れて行かれて、食事中といったところ。
お金を持っていないと言ったにもかかわらず、奢るからとぐいぐい引っ張られ、気づけば椅子に座っていた。
麒麟に奢られるって何なの、この状況……!
遠慮したものの人間風情が我の飯を食えないのかと、酔っ払ったオヤジよろしくとばかりに、ニコはからんだ物言いだ。
あたしは大人しく言う事を聞く。
ていうか。
麒麟……動物?って飲食店に入っていいものなのか。
ニコは得意げに笑う。
「汝は我を何だと思っているのだ、×××だぞ」
その名前がわからないので、何なのかすらもわからないけれど。
麒麟さんだから仕方がない、ということかな?
曰はく、周囲に幻影を見せているのだとかで大丈夫らしい。
「今の我は、人間に見えていることだろうよ」
……あ、やっぱりそのまま入っちゃダメなんだ。
フン、とニコは鼻を鳴らす。
ニコが家出したそもそもの原因は、どうやらニコを右往左往扱き扱う人物のせいだという。
それにひどく辟易していたニコが、ついにはあることがきっかけで堪忍袋の緒が切れ、逃げてきたというわけだそうだ。
……麒麟を扱き扱うって、それにしてもすごいひとだな。
要は、ニコを24時間の奉仕が嫌になったということだよね?
「どうせ我がいても、あやつがちいいいっとばかり楽するだけだ。せいぜい苦労するがいいわ」
食べ終わったニコは、不機嫌、というよりかは拗ねている様子で呟き、机に顔を乗せた。
はたと気づいたかのように、あたしにニコは顔を向ける。
「……ところで汝は何ゆえ、あのような場所にいたのだ?」
い、今頃ですか?
んー……何て話せばいいのやら。
トイレし終わったら砂漠でしたーとか……笑えない冗談だよ、ほんと。
済ませた後で心からよかったとか考えているあたり、人としてギリギリだと思われる。
一番格好悪いトリップの仕方だというのは変わりがないかもしれないけれど。
……。
えーっと、
「嘘は騙るなよ、人間。その気になれば、汝ですら気づかんことでも容易く見抜けるぞ」
こわい。
一息つき喋る前に、ニコはぎろりと、あたしを睨む。
……はい。人間、素直が一番ですよね。
冷や汗。
思えばリューオー以外の人?に、ちゃんと話したことがないかもしれない。
過去を思い出しながら、あたしはニコに正直に話すのだった。




