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章題1 もし愛を知っていたとして Ⅳ






——しょうちゃんに彼女ができたことを知ったのは、次の日だった。

 


 学校から走ってしょうちゃん家に帰った。


 きっと浮かれてたんだ。いつもは気ままに歩いてだらだらと帰る。


 大好きなしょうちゃんに好きって言って、キスをして。またね、ってハグをした。


 始業式だったから、私はいつもより早い帰り。しょうちゃんも早終わりだと聞いていたし、今日も家へ行くつもりだった。


 ランドセルにつけた鈴が跳ねて楽しげな音を鳴らす。


 この角を曲がった、あと少し。あと十歩、あと三歩、あといっぽ……


「章太郎、じゃあ、キスして?」


「いいよ」


 見えたのは、私の王子様じゃなかった。


 知らない女の人、多分同じ学校。制服のデザインが似ている。その人と、キスをしている、しょうちゃん。


「しょう、ちゃん……」


 呆然とした。見ていられなかったのに、目が離せなかった。


 しょうちゃんがくれた鈴は、もう楽しそうな音は鳴らさなかった。


 それから、どうやって自分の家に帰ったのか、覚えていない。


 その日から、しょうちゃんの家には行かなくなった。


 

 しょうちゃんは、何度かうちに来たみたいだった。


 私に会いたいって。


 私が好きなお菓子を持って。


 でもね、そんなのいらないの。


 一番好きなのはしょうちゃんだから。


 しょうちゃん以外、いらないの。


 

 簡単に言えばシツレンした私だけど、それでも日常は何事もなかったように続いた。


 別にしょうちゃんがいなくても私の人生って順調に回るのね。


 しょうちゃん断ちをしてから一ヶ月経ったころ、そういう結論に至った。


 寂しいと言えば寂しいけれど、別のもので埋められる。


 一ヶ月もすれば気持ちは落ち着く。


 しょうちゃんじゃなくたっていいじゃない。あの時の私って恋に酔ってたのね、バカだわ。


 なんて、きどってみたりした。


 それが、十歳の十月。最初の絶交。


 

 

 

 

 

 それから、一年と半年後。私は中学一年生になった。


 相変わらずしょうちゃん断ちは続いていて、街中で見かけるたびに気配を消して逃げた。あれだけ頑張って伸ばしていた髪も、肩の上ですっぱり切ってボブにした。


 小学校の頃のブレザーに変わってセーラー服になって、もう、私はしょうちゃんにべったりだった私じゃなくなった。


 あの頃の私も可愛かったけど、今は少し大人で綺麗になった。


 学校に行って、友達と話して、授業を受けて。部活に行って、たまに男の子から告白されて。


 秋ぐらいに、彼氏ができた。林くんといって、そんなにイケメンじゃなかったけど、字が綺麗で気遣いができる人だった。


 けどそれも、半年付き合って別れてしまった。


 気が向いた時に会って、喋りながらご飯を食べる。そんな距離感が私は心地が良かったのだけれど、彼は違うかったらしい。


「雨宮さんって、僕のこと好きじゃないよね」


 そう言って泣かれてしまった。


 そう言われても、そもそも告白してきたのはあっちだし、私なりに大事にしているつもりだった。


 それから恋愛も、あまりうまくいかなかった。


 二年の夏に先輩と付き合って、色々あって別れて。


 二年の冬に同級生と付き合った。芳川くんという人で、この人が一番長続きした。


 三年の一月まで付き合ったけれど、彼とのキスをしょうちゃんのキスと比べてしまって、どうしても本気で好きになれなかった。


 この頃から、しょうちゃんを少し意識し出した。とっくに忘れてしまったと思っていたのに、しょうちゃんは私の心の奥深いところに染み付いていた。


 そして、中学を卒業した私は、公立の難関高に進学した。


 入学して、三ヶ月が経った頃。


 ついに恐れていたことが起こってしまった。


 放課後、彼氏と歩いていた私は、しょうちゃんに、会った。


 駅前の交差点。騒がしい人々も、隣で手を繋いでいる彼も忘れて、しょうちゃんしか目に入らなかった。足が動かない。喉の奥が苦しい。


 周りの音が消えて、自分の心臓の音がやけにうるさく響く。


 あちらは私に気づいていない。


 変わらなかった。しょうちゃんは、あれから六年も経っているのに驚くほどそのままだった。


 背が、少し伸びていることと、格好が制服じゃなくてラフな私服になっていることぐらいで。


 今すぐに叫びたかった。何で、何であの時キスしたの?悲しそうに笑ったの?家の前で、彼女とキスしたの——?


 かけだした足は止まらなくて、彼氏の手も振り払ってしょうちゃんに抱きついた。


「う、わ。すみませ……って、え、音々……?」


 しょうちゃん、しょうちゃん。ごめん、今は、何も言えない。


 ただ、涙が溢れて、仕方ないの。涙の止め方も、忘れてしまったの。


 

 

 

 

 

 

            第一部 -Before Dawn- SIDE Neon 終幕

                -Grow Light- SIDE Syotaro に続く。


スクロールお疲れ様でした。


わざわざ言うべきことではないのかもしれませんが、-Before Dawn-は「夜明け前」、-Grow Light-は「空白む」という意味を持たせています。

他の意味もあったりするので興味があればぜひ調べてみてください。

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