File47 広尾利夫と山崎祐太郎
俺は九鬼泰照。暴露という制裁を行う情報屋だ。
今回の依頼者は、顔に縦の切り傷の跡がある青年。名を荒本崇彦と言った。
「依頼内容を」
「俺の兄貴を植物状態にした下衆力士と俺の仲間を殺したヤクザを暴露してください…」
そう語る荒本の目には復讐を誓う炎が写っていた。
荒本の兄、悠成は力士であった。
力士としての名は竜蒼。
これまで沢山の力士に勝利しており、横綱候補であった。
そんな彼を育てたのは。広尾利夫事、親方の清鳳であった。
広尾は人格者であり、荒本悠成を力のある漢に育てあげた人間であった。
しかし、広尾には悪い癖があった。
それが出たのは悠成の後輩の飯島こと、山乃花が幕下に行った記念に、飲み会に行った時であった。
参加者は悠成、広尾、飯島、その他力士達であった。
「いやぁ、それにしてもお前が幕下に行くなんてな」
「ありがとうございます。先輩」
「おめでとう!」
「おめでとう!」
そんな中、ある力士が荒れていた。
「あぁん?幕下にいったからなんだぁ?調子のってんじゃねぇぞ!」
そう。広尾であった。広尾は酔いやすく、酒癖が悪かった。
「親方、もうそこまでにしてください」
「うるせぇ!テメーらは所詮俺の下っ端なんだ!黙って俺に着いてけばいいんだよ!」
「もう止めにしましょうよ」
そう言って悠成が広尾を止めようとする。しかし、奴は酒瓶を持つ。
「うるせぇ!何が横綱候補だ!俺の座を奪って色々するつもりだろぅ!」
何と広尾は酒瓶で悠成の頭を強く叩いたのだ。
「ぐふえっ!」
頭から血を流し倒れる悠成。それによって驚き血の気が引いていく力士達。
「うぃ~もう帰るわ」
そう言って広尾は帰ってしまった。
「は、早く救急車呼べ!」
力士の一人が救急車を呼び、悠成は一命を取り留めたものの、植物状態となってしまった。
荒本が兄の状態を知ったのも、時間の問題であった。
「ぐっ…誰がこんな事を」
荒本は怒りに燃えた。そんな彼に犯人を教えたのは、悠成を慕っていた飯島であった。
他の力士は広尾の圧力によって自分の地位が落ちるのを恐怖し、何も言わなかった。しかし、飯島は何者にも屈する事もなく、荒本に教えたのだ。
そして、二人は広尾を訴える準備をし始めた。
そんな中、二人は広尾を訴える為に弁護士である小柳という男とカフェで落ち合っていた。
しかし、そのカフェには客はいなかった。それを怪しむ二人。恐る恐るそのカフェに入る。
すると、小柳が何者かに電話をかけていた。
「はい。今来た所です」
そして、小柳は電話を切る。
「何の話を」
「そ、それはともかく広尾さんを訴える準備をしましょう」
「いいから何の話をしてたんですか!」
すると、カフェの扉が開く音がした。
「誰だ!」
「貴様ら、一旦死んでおこうか?」
入ってきたのは、顔に幾つもの傷が出来た中年男であった。その男の手には、奇妙な刃物が握られていた。
「や、山崎さん!コイツらをお願いします」
そう言って、小柳は逃げた。
「小柳さん!」
「フフフ、冥土の土産に教えてやろう。私は山崎祐太郎。又の名を『顔切りの山崎』。そして、貴様らは嵌められたのだ」
「その手にある刃物は…」
「コイツか?これはバグ・ナク。ヒンディー語で虎の爪だ。これで、貴様を裂いてやろう」
「させるか!」
これでも飯島は力士。荒本を逃がそうと、飯島は山崎に突っ掛かる。
「阿呆が」
山崎は飯島の顔を横に引っ掻く。
「ぐばぁ!」
飯島は顔を抑え、悶え苦しむ。
「ククク。次は貴様だ」
山崎は逃げようとした荒本に近づく。
「この!」
飯島は山崎の足を抑える。
「くっ、この死に損ないが!」
山崎が飯島の喉を引っ掻く。
「カハッ…」
飯島は息絶えた。
「飯島さん!」
「さて、顔を切り刻まれようか」
そう言って、山崎は荒本の顔を縦に切り裂いた。
「ぎゃあっ!」
「さて、トドメといこうか」
その時、外からパトカーの音が聞こえた。
「ちっ」
山崎はそのまま逃げた。
「くそっ…」
荒本の意識は闇に落ちた。
「くっ…ここは」
荒本が次に起きたのは、病院のベット。
「やっと起きましたか」
「俺は…生き延びたのか」
どうやら、カフェの騒ぎを聞いた一般人が警察を呼んだのだとか。
「貴方は数ヶ月間安静にした方がいい。顔がズタボロです」
「はぁ…」
それから数週間が経った。ある時、荒本の元にある男が現れた。
「どうも」
「貴方は?」
「俺は金城光成。関電社の記者です」
「それで、何のようです?」
「貴方は植物状態の力士、竜蒼の弟さんなのですね」
「えぇ。そうですが」
「貴方は竜蒼を植物状態にした広尾を許せませんね」
「何故それを!」
「俺は闇に通じる記者なのでね。この事は知ってますよ」
「そうなんですか!」
「あぁ。だが、ここでは話せない。別の病院に行く事になる」
「はぁ…」
それからして、荒本は苑頭町の病院、伊佐病院に転院した。
そして、金城は荒本の前にまた現れた。
「それで、何を知っているんです?」
荒本が金城に問いかける。
「あぁ。竜蒼の親方、広尾利夫は竜蒼の頭を酒瓶で殴り、植物状態にした。そして、貴方は竜蒼の後輩、山乃花もとい、飯島遼一と組んで、広尾を訴えようとした。ここまでは知ってますよ」
「えぇ。それで、俺は山崎祐太郎と名乗る男に顔をやられ、しまいには飯島さんを殺した」
「はい。実は、広尾と山崎はグルなんです」
「グル?」
「はい。広尾は裏社会の人間、特に武蔵野会と繋がっている。恐らく奴は自分が訴えられないようにその組織の人間を使って貴方達を殺害させようと考えたのでしょう」
「ぐっ…」
「俺はそんな人間を社会的に殺す所を知っています。ここに行けばよろしいかと」
金城が渡したのは、暴露屋の場所と電話番号だった。
「どうか…奴らを!奴らを落としてください!あの奴らはこの世にいてはいけないんだぁぁ!」
「分かりました。では、奴らを落とし、貴方のお兄さんと飯島さんの仇を打ちましょう」
俺は広尾と山崎の事を調べ上げた。
広尾利夫。56歳。とある相撲部屋の親方。この間、荒本悠成を植物状態にした。
山崎祐太郎。45歳。武蔵野会三次組織山崎唐蓮会の組長。異名は『顔切りの山崎』。この間、荒本らを襲い、飯島を殺害、荒本を負傷させた。
さらに、この山崎という男。実は元藤松会の者であり、過去に藤松会で大きなミスをした際に、藤松会から追い出され、本部長の猿渡によって武蔵野会に入れられたという。
俺はまず、広尾の悪事を世間に訴えた。その瞬間、奴は相撲界から追い出され、傷害罪で捕まる事となった。
残るは山崎のみ。山崎は、この手で葬る事にした。




