File35 橋岡良次
俺は九鬼泰照。なんとか営業を再開することができた情報屋だ。
チーム絵札との戦争、藤絵戦争が終わったことにより、暴露屋が再開できた。
とはいえ、まだ武蔵野会が残っているため、短期間の営業になると思われる。
しかし、暴露屋がある限り、悪人の悪事の暴露は終わらないのである。
今回の依頼者は、サングラスをかけ、杖を持った若い男であった。そして、俺はその姿を見たことがあった。
「貴方、小説家の山木トシヒロさんですか」
「えぇ、ですが、私はその名を捨てました」
「その名を捨てた…それは一体…」
「それは………過去に私を虐めた奴が、逆恨みでやったのが原因なのです」
そうして、山木は語り始めた。
山木トシヒロ。本名、山木寿浩は、中学生時代に苦痛を味わっていた。
それは、同級生の不良、橋岡良次が、山木に陰湿ないじめを行っていたからだ。
山木は本好きだった。それを狙ったのか、本を破いたり、捨てたりの繰り返しを行っていた。
橋岡の親はとある中小企業のドラ息子で、親の権力を利用していじめを隠していたのだ。
しかし、山木はそれを耐えていた。決して橋岡に屈した訳では無い。山木は、いつか見返してやると考えていた。
そして、中学校を卒業し、偏差値が高い高校に入学。高校卒業後は小説関係の専門学校に入学。その後、自分のやりたかった小説をネットで書くようになり、それが奇跡的に大ヒット。
山木は、とても著名な若き小説家となったのだ。
しかし、そんな山木に地獄が訪れる。
ある日の事。当時29歳だった山木が仕事の為に駅に向かっていたときであった。
山木が通っていたのは、人通りが少ない道。すると、山木は後ろからの肩を叩かれた。
「はい」
後ろを振り向くと、そこには忘れるはずもない、顔があった。
「よう、山木」
「なっ、橋岡!?」
そう、かつて自分をいじめていた橋岡本人であった。
「な、なんだよ。今から仕事場に行かなきゃならないんだ」
「仕事場ぁ?ちょっと来いよ」
橋岡は山木を近くの路地裏に入れる。
「何を…なっ」
山木の目に写ったのは、ナイフを持つ悪魔であった。
「ケケケ。俺はお前が偉くなって憎いんだ。だから、その為にお前の目を…………」
「なっ、止めろ!そんな馬鹿なこと!警察に通報するぞ」
「通報しても無駄だ。何せ俺は親から金を沢山貰っている。しかも親は横の繋がりも広いからなぁ、無意味なんだよ!」
「うっ…うわぁぁぁぁ!」
その瞬間、橋岡は山木の目を横に切り裂き、その場を去った。
「み、見えない…」
山木は暗闇という恐怖に襲われ、路地裏を出た後、意識を失った。
その後、山木は病室に送られるも、医者からは永遠に目を使えないことを言われ、絶望した。
山木は、小説家を辞めた。
そんな山木にとある男が訪れた。
それは、関電社に勤めるという記者、金城であった。金城は世間で山木が目を事故で失ったという事を疑い、山木本人に聞くことにしたのだ。
山木は金城に全てを話した。
すると、金城は暴露屋を紹介した。
「どうか…お願いです!どうか奴を落としてください!奴を…奴を……ぐううう…」
山木は出せない涙を、声で表現した。
「分かりました。では、奴を落としましょう」
俺は橋岡の事を調べ上げた。
橋岡良次。30歳。とある中小企業の社長の息子。山木の目を切り裂いた張本人。
俺は奴の社会的地位を落とし、それにより、奴と息子を守っていた父親も落ちる事となった。




