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暴露屋∼社会的に殺す情報屋∼  作者: 蔵品大樹
第一部 藤絵戦争
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56/139

File30.5 獅子身中の虫 前編

獅子身中の虫…味方でありながら災いをもたらす者や、恩を仇で返す者のたとえ。(意味はコトバンクより)

 俺は九鬼泰照。衝撃の真実を知った武闘派情報屋だ。

 それは、大神田の死闘から一週間後の事だった。

 暴露屋の事務所にて新聞を読んでいたときのこと。

 玄関から、ノックの音がした。

 「はい」

 部屋に入ってきたのは、黒スーツにバッチ、否、代紋を付けた角刈りの男であった。

 「あなた…」

 「どうも。九鬼さん。私、藤松会の片平組幹部の小橋川貴嗣(こばしがわたかし)といいます」

 片平組というと、最近先代組長の片平亨太が死に、安藤秀人という若い幹部に変わったという組ではないか。

 「それで、小橋川さん。何のようで。誰か、暴露してほしい人物がいるのですか?」

 「はい。ウチの親父、安藤秀人を暴露してほしいんです」

 俺はその言葉に反応した。しかし、時々この暴露屋には自分の親を落としてほしい人間が訪れるため、あまり驚くことはなかった。

 「何故、自分の組の組長を」

 「実は、安藤の親父、否、安藤は武蔵野会と関わっていたんです」

 「武蔵野会と…」

 「はい。それ以前に、先代も武蔵野会と関わっていたらしく…安藤直々に言っておりました」

 「そうですか。しかし、安藤は本当に藤松会を裏切っているのか。こちらで調べさせてもらいます」

 「分かりました」

 そう言って、小橋川さんは事務所を出た。

 「………仕方ない。本当はやりたく無いが、あれをやるか」

 俺はシマの見回りをしている比嘉に電話をかけた。

 「九鬼さん。どうしましたか?」

 「少しばかり暴露屋を空ける。すまない」

 「分かりましたけど…」

 俺は電話を切り、とある所へ向かった。

 それは、武蔵野会のシマ、義憐町の東部、宮梨(みやなし)通りだ。

 宮梨通りは武蔵野会の二次団体、小田島組の担当である。

 俺はそこで、小田島組組員を見つけることにした。

 無論、俺の顔は武蔵野会でも知らないものはいないため、ホームレスの振りをすることにした。

 数時間後、辺りは暗くなり、繁華街の顔を見せ始めた。

 高架下で見張りをしていると、二人のチンピラがこちらに近づいた。

 「このホームレス、見ない顔だな。なんかムカつくから殴ろうかな」

 「そうだな、北見(きたみ)。なんかイライラするし、殴ろうか」

 どうやら、この二人は倫理観のないチンピラのようだ。しかし、胸元には武蔵野会の代紋を付けている。

 俺は立ち上がった。

 「何だよ?」

 俺は後ろにいた方のチンピラを殴った。

 「ぐべっ!」

 「なっ、大下(おおした)!テメェ、俺たちを誰だと思っていやがる!」

 「知ってるよ。倫理観のない外道チンピラだろ?」

 「きっ、貴様ぁ!ホームレスの分際で!」

 そのチンピラは、ドスを取り出した。

 「ほう。カタギに光り物か」

 「うるせぇ!死ねやぁ!」

 チンピラはドスを俺に突き刺した。しかし、それは当たらなかった。

 「なっ…」

 俺はソイツの腕を既に掴んでいて、ドスを動かすことが出来なかったからだ。

 「ホレ」

 「ぎゃびっ!」

 俺は容赦のないグーパンで奴の顔を殴った。

 「く…クソっ…」

 俺はソイツに馬乗りになる。

 「お前、武蔵野会のモンか?」

 「そ、そうだけどよ…」

 「名前は?」

 「き、北見…」

 「アンタの所に、片平組という団体が関わっているな?」

 「は、はい…」

 「そうか。ありがとよ」

 「ぐふっ…」

 俺は北見とその仲間を気絶させ、そこに放置した。

 俺は事務所に戻ると、比嘉が待っていた。

 「九鬼さん、どこに行ってたんですか?」

 「少しばかり、別の街に。それより、重大な情報を手に入れた」

 「重大な情報?」

 「あぁ。それは、片平組が、武蔵野会と関わっている事だ」

 「片平組、確か、安藤という幹部に変わったあの組ですか?」

 「あぁ。武蔵野会の組員から聞いた情報だがな」

 「そうですか…じゃあ、どうすればいいと…」

 「とりあえず、俺の方でも調べていく。ある程度情報をまとめたら、会長に伝えといてくれ」

 「分かりました」

 そう言って、比嘉が事務所を出た。

 「よし。じゃあ、やりますか」

 俺は片平組の事を調べ上げた。

 片平組。現在の組長は安藤秀人。若き幹部で、それなりにも実力がありため、先代の片平亨太から次期組長として注目されていたとか。

 片平は藤松会を嫌がっており、武蔵野会に鞍替えをしたのだ。

 さらに、片平を殺したのはなんと安藤。武蔵野会は片平より実力のある安藤と協力したいと考えていた。

 俺は小橋川さんに電話をかけた。

 「小橋川さん。どうやら安藤は本当に裏切っていたことが分かりました」

 「調べていただきありがとうございます。では、データをこちらに…ぐわぁ!」

 「小橋川さん!」

 「平井(ひらい)中本(なかもと)!お前たちも裏切った…ぐはぁ!」

 そして、電話が切れた。

 もしかしたら、組を裏切ろうとした小橋川さんを殺害したのだろうか。俺はすぐに桂田さんに電話をかけた。

 「どうした?九鬼よ」

 「桂田さん。落ち着いて聞いてください。片平組は……藤松会を裏切っています…」

 「何っ!?」

 俺は全てのことを桂田さんに語った。

 「くっ…片平の時から裏切っていて…安藤は自分の親を殺したとでも言うのか…」

 「はい…」

 「安藤は許しておけん。片平組の事務所は確か功楼町にあるはずだ。うちの組から2名出しておく」

 「わかりました」

 そう言って、桂田さんは電話を切った。

 「さて…どうなることか…」

 俺は心配をしながらも、自分の家に帰ろうとしたときであった。すると、小橋川さんから電話がかかってきたのだ。

 「小橋川さん、大丈夫でしたか!?」

 俺は開口一番、そう叫んだ。しかし、返ってきたのは、知らぬ者の声だった。

 「テメェ、九鬼かぁ?」

 「誰だ?」

 「俺は片平組の平井だ。今すぐに功楼町の関坂(せきさか)通りに来い」

 そして、電話が切れた。

 「何をする気だ…」

 俺は今すぐに関坂通りに向かった。

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