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暴露屋∼社会的に殺す情報屋∼  作者: 蔵品大樹
第一部 藤絵戦争
55/139

File30 大神田隆平

 俺は九鬼泰照。とある男の生存に驚いた男だ。

 それは遡ること数分前。とある依頼者から依頼を受けていたときであった。




 今回の依頼者は、変わり種だった。千葉の小さなヤクザ組織、土橋(つちはし)組の元構成員、池辺敬(いけべけい)だった。

 「皆を殺し、組を無き者にさせた奴を落としてください!」

 池辺の悔しさが、こちらに伝わった。




 土橋組は、千葉の地元ヤクザであり、カタギに優しかった。

 それが故に、土橋組は地元の人間から愛されていた。

 しかし、そんな土橋組に悲劇が訪れる。それは、7年前の事であった。

 土橋組が、新年会を行きつけの中華屋で行っていたときであった。

 その時、池辺はトイレの個室にいた。

 個室から出た際、向こうから銃声がした。それと同時に、声もした。

 「ぎゃー!」

 「うがぁぁ!」

 「やめろぉ!」

 それは紛れもない、仲間や自分の親父の声だった。

 「皆!親父ぃ!」

 池辺は急いで皆のいた部屋に向かった。

 しかし、それは後の祭りであった。

 そこには、皆の死体があっただけであった。

 「う…うぅ…」

 しかし、ただ一人生きていた者がいた。それは、土橋組の組長、土橋修作(つちはししゅうさく)であった。

 「親父!親父!」

 池辺は土橋の方に駆け寄る。しかし、土橋は虫の息であった。

 「い、池辺…」

 「だ、誰がこんな事を…」

 「すまねぇな…池辺…皆、死んじまった…かはっ…」

 土橋は、血を吐いて死んだ。

 「クソぉ…クソぉぉぉぉ!」

 その後、池辺は警察からは死体の第一発見者とみなされ、『土橋組殺人事件』の捜査は始まった。

 警察は最初、土橋組と敵対していた半グレ組織、蟷螂(カマキリ)の構成員が殺人を行ったと踏んていたが、その時の蟷螂は存在しておらず、チーム絵札の傘下として活動していた。

 しかし、警察は何故か捜査を止めてしまった。

 無論、それに納得のいかなかった池辺は警察に文句を言った。しかし、警察は皆、『お上の命令だから』の一言で、池辺と取り合ってくれなかった。

 警察に失望した池辺は、今に至るまで個人で調べ続けた。

 そして、先週、やっと犯人を見つけたのだ。

 それは、元蟷螂の構成員、大神田隆平であった。




 「どうか…奴を落としてください。それをしてくれれば、天国の皆が浮かばれます」

 「わかりました。では、奴を落としましょう」

 しかし、この時まで俺は大神田は死んだものだと思っていた。

 俺はまず、大神田の情報を集めた。

 大神田隆平。29歳。元蟷螂の構成員だったが、チーム絵札の傘下となってからは、『グレイトキング最後の砦』とまで言われるようになった。さらに、7年前、22歳の頃に土橋組を襲撃。前まではグレイトキングの幹部だったが、その後、親桐田派のリーダーになり、またその後、反桐田派が全滅したことにより、ラストジョーカーの幹部になった。

 警察が捜査をやめたのも、桐田が裏でなにかしらやったのだろう。

 俺はこの手で、大神田の人生にピリオドを付けることにした。

 まず、記者の金城に手伝ってもらい、土橋組の崩壊には大神田がやったと書いてもらった。

 しかし、こんな記事では警察は動かなかったが、その記事は裏社会を驚かせた。

 俺は大神田のいる富栄町東部に比嘉、伊波と共にカチこんだ。

 「うらぁ!大神田だせぇ!」

 「うわぁ!カチコミだ!」

 「構成員全員集めろぉ!」

 俺たちの前に立ち塞がったのは、元グレイトキングの奴ら。大体20人くらいだろうか。

 「死ねやぁ!九鬼ぃ!」

 一人の構成員が俺の前に襲いかかる。しかし、こんな攻撃は慣れたものだ。

 「フン!」

 「うげっ!」

 俺はヤクザキックで奴を吹き飛ばした。

 「ちっ!俺がやってやる!」

 俺の前に出たのは、ラガーマンのような巨体の男。

 「俺は大神田さん直属の部下、沼倉朔也(ぬまくらさくや)!グヘヘ、お前はすぐに死ぬぅ!」

 沼倉がそう叫び、こちらにタックルを仕掛けた。しかし。コイツは俺に仲間がいることを忘れているようだ。

 「邪魔はさせねぇ!」

 比嘉がバットで隙ありありの足を引っ掛けた。

 「ぐふぇっ!」

 沼倉は盛大に転んでしまった。

 「せいやっ!」

 比嘉が沼倉の後頭部を力強く叩いた。

 「九鬼さん!雑魚どもは俺たちがやるので!」

 「すまん!あとは任せた!」

 俺は構成員を後にし、大神田のいる部屋まで行った。

 「大神田ぁ!」

 扉を蹴破ると、そこには大神田がいた。

 「九鬼ぃ…」

 「あのときは決着を付けていなかったな。今ここで、お前を…殺す!」

 俺は着ていたシャツを脱ぎ捨てた。

 「ほほう。あのときみたいに、本気(マジ)ってやつか?」

 「あれから俺は色んな猛者と戦った。あのときの俺とは違うぜ」

 俺はすぐに奴の懐に入り込んだ。

 「なっ…」

 「しゃぁっ!」

 俺はアッパーを上げた。しかし、奴は当たる直前に顔を避けた。

 「危ねぇな。まぁいい。お前は今から、切り刻まれた死体になるからなぁ!」

 大神田はそう言うと、懐からナイフを取り出した。

 「喰らえやぁ!」

 なんと、大神田は逆袈裟でナイフを振った。

 「くっ…」

 俺は胸元を軽く切られてしまった。じわじわと流れる紅い血。俺はそんなものを気にせずに攻撃を続けた。

 「フン!」

 全力の頭突き。しかし、大神田は余裕そうに避けた。

 「ほらぁ!」

 「くかぁ!」

 今度は顔を横に一閃。鼻を切られてしまった。

 「チッ、俺のフェイスがかっこ悪くなったらどうしてくれるんだ?」

 「そんなもん、気にしなくていいだろ。何せ、お前は直ぐに死ぬからなぁ…トドメだぁ!」

 大神田がナイフを心臓に突いた。しかし、その攻撃は当たることはなかった。

 「せいやっ!」

 俺は高速で後ろに避けた。

 「ケッ」

 「余裕ぶってるのは今のうちだ!」

 俺は全力のパンチを、大神田の腹にぶっ放した。

 「ぐへはぁっ!」

 大神田は腹を抑え動かない。ならば、追撃と行こうか。

 「うっしゃぁぁぁ!」

 俺は全力のラッシュを大神田にお見舞いした。

 「ぐへぇぇぇやぁぁぁ!」

 最後の一発。それを顔に当て、奴は大の字に倒れた。

 「くそぉ…お前の何が…お前を強くさせるんだ…」

 「そりゃあ、アンタに殺された、土橋組の奴らの怨念よ」

 「土橋組ねぇ…何個も潰してきたからわかんねぇや…俺は…山王さんを裏切った時から…いや、半グレになろうと考えた時から…地獄行は決定したんだろうな」

 そう言って、大神田はポケットに忍ばせていたであろう瓶を取り出し、それの中身を飲んだ。

 「お前、また死んだふりを…」

 「ぐふぅ…」

 大神田が口から血を吐き出すと、奴は立ち上がることなく、そのまま死んだ。

 「大神田…お前は卑怯で、強い奴だったよ」

 その時、比嘉と伊波が入ってきた。

 「九鬼さぁん!大丈夫ですか!」

 「大丈夫だ…」

 俺はそれしか言わず、大神田の死体を見た。

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