File29 浦部孝治
俺は九鬼泰照。悪や闇をバラしていく情報屋だ。
今回の依頼者は、車椅子に乗った中年漫画家であり、名を加納克広と言った。
「私を地獄に陥れた男に、制裁を…」
そう語る加納は怒りを込めながら話し始めた。
加納は週間漫画雑誌、『アレイヌ』にて、バトル漫画、『伝説なる冒険』を掲載していた。
その漫画はとても有名であり、ファンが大勢いた。
アニメ化もされており、そのアニメも人気となった。
しつこいようだが、色んなものには、アンチが付き物である。
伝説なる冒険にも、とあるアンチがいた。
ソイツは浦部孝治という男であった。
彼は、伝説なる冒険が連載されるたびに、ネット掲示板にて悪評を連ねていた。
そもそも、浦部は加納が嫌いであった。
彼曰く、『こんな漫画を書いている漫画家はアホだ!』らしい。
傍から見たら、ただただ、無職の男が漫画家にクレーム同然の悪評を言っているだけだ。
そんなある時、加納に悲劇が訪れる。
二年前のある日、加納は帰路についていた。すると、目の前から何者かが歩いてきた。
そいつは、パンダの仮面を被っていた。
そして、奴は加納の前に行き、衝撃的な事をした。
「………ふぐっ…」
加納は腹を刺された。刺した者は、その場から逃げた。
(まずい!このままじゃ…)
加納は急いで救急車を呼び、意識を失った。
次に目が覚めたのは、病院のベットの上。
内臓は傷つけられていたが、加納が直ぐに救急車を呼ばなければ、死んでいたそうだ。
しかし、加納はとある事に気付いた。それは、下半身に力が入れられないこと。そして、医者からとあることを告げられる。
「貴方は下半身不随になっています」
その事実に、加納は信じることはできなかった。
その後、加納はそのショックで連載活動をしばらく出来なかった。
加納はリハビリをすることもなく、酒に溺れてしまった。しかも、自分を刺した者は逮捕されていなかった。
(日本の警察はどうなっているんだ…クソぉ……)
そんな事を考えながら、加納は毎日を過ごしていた。
それから二年後。彼は漫画を連載することなく、SNSで愚痴を晴らしていた。
その時、ある者からメッセージを貰った。
「あなたの恨みを晴らせる人物がいます」
その言葉に乗った加納はその者と会話することとした。
メッセージを送ったのは、関電社という会社で記者をしている男、金城。
金城は暴露屋を紹介し、加納はここに訪れたという。
「どうか、私を刺した者を、暴露してください!」
加納は怒りをその言葉に宿した。
「分かりました。では、その者を地獄に落としましょう」
とはいえ、犯人が捕まっていない事件の犯人を探すのは困難とされる。そのため、俺はとある女と連絡を取った。
そして、俺はソイツと功楼町の南部のバーで落ち合った。
「すまないな。わざわざ来てもらって」
「いいのよ、最近暇だったから」
彼女の名は大迫ナターリア麗未。日系アメリカ人のハーフである。
「それで、漫画家、加納克広を刺した奴を知りたいのね」
「そうだ。知っているのか?」
「えぇ。知ってるわ。なんせ、私はハッカーの大迫なんだから」
そう。大迫は海外の天才ハッカー集団、『ルチルクォーツ』のリーダーを務めており、異名は『ハッカーの大迫』とも呼ばれている。
「それで、犯人は?」
「犯人はね…浦部孝治よ」
「浦部孝治…加納のアンチという奴だよな」
「えぇ。これを見て」
大迫はパソコンの画面を見せる。そこには、暗い路地裏が映っていた。
「この路地裏には、監視カメラが2台ほどあるの。そこに、浦部が映っている。しかも、返り血が付いたパーカーを捨てている。パンダの仮面もね」
「そうか。とはいえ、これだけでは加納が殺ったという証拠が出ていない」
「落ち着いて。今のが証拠その1とするならば次は証拠その2よ」
次に大迫は一本のサバイバルナイフが映った画面を見せた。
「このナイフは…」
「浦部が使っていたものよ。刃先には浦部の血。柄には加納の指紋が付いているの」
「そうか。こんなに証拠が出ているんだ。でも、何故浦部は逮捕されていないんだ?」
「それは貴方も知っているでしょう」
「あぁ。浦部孝治の父親はとある中小企業の社長だ。おそらく金や権力を使って警察の上層部に圧をかけていたんだろう」
「じゃあ、ここからは貴方の仕事ね」
「あぁ。分かってるさ」
「じゃあ、ドイツの口座に」
「分かってるよ。じゃあ、あとは任せてくれ」
俺は一応、浦部の事を調べ上げた。
浦部孝治。43歳。父親はとある中小企業の社長。加納を刺した張本人でもある。
俺は大迫の協力を得て、SNSにて、浦部の証拠を漏洩させた。
それにより、浦部は逮捕され、父親は息子と共に地獄に落ちることとなった。




