File18 柳野司
俺は九鬼泰照。暴露が日常的な行動になっている情報屋だ。
今回の依頼者は若い男で、名を垣内修生と言った。
「逆恨みで私を殺そうとした芸能事務所の社長を暴露してください」
そう語る垣内は、怒りのオーラを纏っているかのような表情をしていた。
遡ること数年前、垣内は路上シンガーとしてそこそこ名を馳せていた。
自作の歌を作り、皆から拍手を貰うほどの実力の持ち主であった。
その力は、テレビに出るほどであり、彼はSNSでバズりにバズったのであった。
そんなある日、彼の家にとある人物が現れた。
「すいません」
「はい」
玄関のドアを開けると、そこには恰幅のいいスーツを着た男がいた。
「すいません、どなたでしょうか?」
「私、こういうものです」
男は垣内に名刺を渡した。渡された名刺には、『ヤナギノ芸能 社長 柳野司』と書かれていた。
ヤナギノ芸能は、垣内も聞いたことがあった。その芸能事務所は、色んな有名シンガーを生み出したという有名な所であった。
「貴方の実力、世に出したいでしょう?」
柳野は垣内にそう問いかける。しかし、垣内はその誘いを断った。
「いえ、実は私、路上シンガーはあくまで副業としてやっているんですよ」
そう、垣内の本業は、とある中小企業の社長で、いつも路上ライブをやっている所は会社の敷地内であるのだ。
そう言われた柳野は笑顔でその場を去った。
「分かりました。では」
家を出る瞬間、柳野が舌打ちをしたことに垣内は気づかなかった。
それから数日後、それは、帰路の途中のことであった。
電灯が輝く夜道を歩いている際、垣内の前に焦る男が現れた。そして、その男は垣内に言う。
「て、テメェ、死にやがれぇ!」
男は、ドスを垣内の腹に刺した。
「くっ…」
男はそれだけすると、その場を去った。
「救急車…」
垣内は救急車を呼び、意識を失った。
次に目覚めたのは病院。医師は九死に一生だったと言う。
その後、自分を刺した犯人は捕まり、こう話していた。
「自分は、芸能事務所の社長に指示されてやった」
その時、垣内が思い出したのは、柳野のことであった。
垣内が真実を知ったのは、それから一ヶ月後のことであった。ある時、ヤナギノ芸能の者と名乗る男から、電話が掛かってきた。
「貴方と話がしたいので、アクサイドカフェで、落ち合いましょう」
そう言って、電話を切った。
アクサイドカフェはたまたま垣内の家から近くだったので、そのカフェに垣内は行くことにした。
例のカフェに着くと、そこには、眼鏡を掛けた男がいた。男は手を上げて、ここに来るよう指示した。
椅子に座ると、男はまず、名前を名乗った。
「自分、ヤナギノ芸能の加瀬と申します」
加瀬は垣内に衝撃の事実を話した。
「率直に言いますと、貴方の殺害を依頼したのは、柳野社長なんです」
「な、それは…本当ですか」
「はい。手に入れられなかった貴方を殺そうとしたんです」
「それにしても、何でこんなことを俺に話すんですか?」
「実はね、社長からパワハラを受けているんですよ。この事をここに話してください」
加瀬が渡したのは、暴露屋の情報。それを知った垣内は、ここに来たのだとか。
「お願いします。あの鬼を落としてください」
「分かりました。では、地獄を奴に見せましょう」
俺は、柳野を調べ上げた。
柳野司。56歳。ヤナギノ芸能の社長で、自身は『芸能界の神』と自称している。過去に榊田組に柳野が垣内殺しを依頼した。
そして、その榊田組というのが、武蔵野会直系の組である。
調べる必要性はないが、念の為に榊田組の事について、少しだけ調べた。
榊田組の組長は、武蔵野会幹部の榊田敏孝という中年の男がやっている。そして、垣内を殺害しようとしたのが、そこの末端構成員である。
まず、俺は柳野の情報を、マスコミにリーク。
そのことにより、柳野は落ちる所まで落ちた。
榊田組は、いずれウチと当たる事になるだろう。




