File14 深野健作と羽田清彦
「お前はなぁ…知りすぎたんだよ」
「くっ…」
銃を構える中年の男。銃口の先には、若い眼鏡を掛けた男。
そして、銃は発砲され、眼鏡男は口から血を出し、そのまま倒れた。
俺は九鬼泰照。世の闇を暴いて暴きまくる情報屋だ。
今回の依頼者は、謙虚そうな青年で、名を須賀耕輔と言った。
「依頼内容を」
「俺の兄を消したグループの社長とその上官を社会的に抹殺してください」
こう語る須賀は悲しみと怒りを抱えた表情をしていた。
須賀耕輔の兄である須賀瞬太(以降須賀兄と呼ぶ)は二人暮らしの兄弟であった。数年前、親を事故で亡くした二人は二人だけの生活を余儀なくされたものの、なんとか生活していた。
数年前、須賀兄は、黒の革鞄を持って家を出ようとした。
「兄さん、今回はどこに?」
「今回はレインボーローズグループだ。話は変わるが、お前もちゃんと結婚相手見つけろよ」
「いや、俺は兄さんといれるだけでいいよ」
「ったく。ブラコンなのもいいけどさ、ちゃんと見つけろよ。じゃ、行ってきます」
そう。この時の二人の会話が最後の会話になるのは、二人は知らなかった。
実は須賀兄は派遣社員を装った潜入捜査官であるのだ。潜入捜査故に危険であるものの、これを志願するものは実はいたりする。
この仕事は闇が疑われる会社に偽名を使った捜査官が潜入。そして、その捜査員がその闇を警察に報告。そして、その会社の上層部等が脱税や労働基準法違反で摘発されるのだ。須賀は自分の兄がこんな危険な事をしているのを、暴露屋にくる数日前まで知らなかったという。
須賀兄が行ったレインボーローズグループ、略して『R2G』は表は明るい企業であるものの、何か闇があるのではないかと疑われ、須賀兄が派遣されたのだ。
そして、須賀兄はR2Gに一年契約で働くことになった。
須賀兄は一年の間で、R2Gの闇を掘り出す事に成功した。社長である深野健作の脱税や家に帰らせなかったり、サービス残業を社員に押し付けたり、パワハラセクハラ等など、出せば出すほどR2Gの闇が出てきたという。
須賀兄はこの事を逐一報告すれば企業にバレてしまうと思い、一年契約が終わった後に全てを話そうとした。
しかし、その須賀兄に悲劇が訪れる。
それは、一年契約が終わり、夜道を歩いているときだった。
後ろから何かを突きつけられ、命令された。
「このまま人気のいない路地裏に入れ」
このまま反撃したいところだったが、相手は銃を持っている可能性がある。須賀兄は仕方なく路地裏に入った。しかし、その選択が後悔を意味した。
路地裏の奥まで入り、後ろを振り向くと、そこには見たことがある顔が。
「なぁ、岩尾…いや、須賀。オメェは死ぬしかねえなぁ」
岩尾というのは須賀兄がR2Gで使っていた偽名。銃を構えていたのは、社長の深野であった。
「な、なぜ偽名だと…」
「俺は最初から知ってたんだよ。お前がこの会社に来るのが!」
「な、なんで…なんで分かった!」
深野が、ポケットから出したのは、捜査班の班長兼官僚の羽田清彦の姿が写った写真だった。
「俺とコイツは、友人関係でなぁ…いつか自分の地位を奪われかねない恐怖心にかられ、エリートであるお前を消してほしいと言われたんでね」
「そんな……班長が……羽田班長が……」
「お前はなぁ…知りすぎたんだよ」
「くっ…」
銃が発砲され、須賀兄の口からは血を出し、そのまま倒れた。
「後は犬にでも喰わせるか」
深野がそれだけ言うと、須賀兄の体を持って、その場を去った。
須賀が、自分の兄の死と、R2Gの闇を知ったのは、それから数日後であった。
差出人不明の封筒が須賀の元に来たのだ。
封筒の中身は謎のUSB。
早速、それを須賀はパソコンに差した。
USBの内容は、須賀兄が死んだときのために、捜査官の方の同僚がまとめていた、R2Gの闇であった。
何故同僚が知っていたかというと、須賀兄が撃たれた後、まだ虫の息だった彼が、同僚に情報を全て送っていたのだ。
この事を知った須賀は警察にこの事を知らせた。しかし、警察は『違法な証拠は証拠にならない』と言った。
無論、このような捜査は普段やらず、班長である羽田ありきの捜査であった。しかし、羽田と深野が繋がっているためか、このときばかり、『違法』だったのだ。
そして、須賀はここに来たという。
「どうかお願いします!兄が晴らせなかった仕事を代わりに、お願いします!」
須賀は今にも泣け叫びそうな表情で懇願した。
「わかりました。では、深野と部下を売った羽田を社会的に抹殺しましょう」
俺は二人を調べ上げた。
深野健作、56歳。R2Gの社長で、脱税等の罪を重ねているものの、知り合いに羽田がいるため、罪を闇に葬られる。
羽田清彦、56歳。警察の官僚兼捜査班の班長で、自分が今いる地位から落ちたくないが為に須賀兄を消そうと画策した。
俺はこの二人を地獄に落とすよう画策した。
その結果、二人はメディアで叩かれ、どちらとも失脚することになった。




