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暴露屋∼社会的に殺す情報屋∼  作者: 蔵品大樹
第一部 藤絵戦争
13/139

File10 川成芳則

 俺は九鬼泰照。どんなものであろうと犯罪を犯した秘密をバラす男だ。

 今回の依頼者はとある中年男性だった。

 「失礼ですが、お名前は?」

 「私、こういうものです」

 すると、男は、名刺を一枚出した。そこには、『大杉法律事務所 所長 大杉稜吾(おおすぎりょうご)』と書かれていた。

 この名には見覚えがあったのだ。

 「あなた、もしかして…」

 「はい。私はかつて、『百戦錬磨の大杉』と呼ばれた弁護士です。まぁ、それも過去の話ですが」

 そして、大杉は本題を語り始めた。

 「私がここに来たというのは、勿論訳があります。それは、数ヶ月前の事でした………」




 数ヶ月前、百戦錬磨の大杉こと大杉稜吾は、とある人間を弁護していた。名は園原三郎(そのはらさぶろう)。園原は、殺人の疑いを掛けられていた。

 しかし、実際園原は人を殺しておらず、所謂冤罪事件だったのだ。勿論、そのことを知っていた大杉は、彼を無罪にしようと奮起していた。

 しかし、相手が悪かった。その相手というのが、検事正である川成芳則(かわなりよしのり)だった。

 川成も大杉と同じく、『百戦錬磨の川成』と呼ばれていて、有罪にするプロであった。

 大杉と川成のこの戦いは、数時間にも及んだ。

 しかし、結果は有罪であった。どうやら川成の提出した証拠品である園原の指紋の付いたナイフが有罪の決定打となったのだ。園原は冤罪にも関わらず、無期懲役を喰らってしまった。

 勿論、この事に納得がいかなかった大杉と園原は再審をするよう命じたものの、再審は却下され、園原は死ぬまで刑務所にいることになったのだ。

 大杉は個人でこの事件を調べることにした。しかし、彼は衝撃の事実を知ることになる。

 そう、例の事件の真犯人はあの川成だったのだ。

 それは裁判の日から数ヶ月前、家庭でのストレスが溜まっていた川成は家からナイフを持ち出し、たまたま歩いていたサラリーマンの男を刺殺したのだ。

 そして、そのナイフをたまたま歩いていた園原にナイフを持たせ逃亡、そして、今に至るというのだ。

 この事実を彼は園原の家族に伝えることにした。しかし、家族は『殺人鬼の家族』としてマスコミに追い詰められ、精神が崩壊。大杉と話すもの嫌になっていたのだ。

 それからの大杉の評価はだだ下がりだった。

 弁護人を無罪から有罪にしてしまうなど、ミスの連発を起こし、彼からの信用がなくなり、大杉法律事務所に勤める弁護士は大杉以外いなくなってしまった。そして、ここにやってきたのだ。

 「お願いします。のうのうと生きている川成に社会的制裁を加えてください」

 「わかりました。では、川成を社会的に抹殺しましょう」

 とりあえず、川成について詳しく調べた。

 川成芳則。50歳。検事正で、世間からは『百戦錬磨の川成』と呼ばれている。

 しかし、妻から精神的DVを受けている。数ヶ月前、サラリーマンの男を刺殺した。

 最初に川成が事件の真犯人だということをマスコミにリークした。すると、あいつらは手のひらを返したかのように川成を批判し始めた。

 そして、川成は社会的に抹殺され、殺人罪で逮捕された。そして、園原は釈放されることになった。




 それから一週間後の深夜。護衛の比嘉と伊波と共に歩いていると、5人の襲撃者がこちらにやってきた。彼らはまさにこちらを襲わんとばかりに怒りの顔をしていた。

 「どうします?九鬼さん?」

 「とりあえず殺すなよ」

 そして、なんとか全員を倒し終え、伊波が襲撃者の一人の胸ぐらを掴み、尋問をしていた。

 「誰の命令だ?」

 「それは……その……」

 「言え。さもないと………」

 「わかりました!言います!実は……」

 すると、男は白目を向いた。

 「………」

 「なんだよ、言うのにビビって気絶したのか?」

 突如、向こうから黒のバンが近づき、銀髪でヒョウ柄のパーカーを着た男が降りてきた。

 「おいおい。全員役立たずだな。まぁ、ジャックスの残り全員を襲撃に使わせたが、予想通り駄目だったな」

 「誰だお前?」

 問を掛けると、男は素直に答えた。

 「俺は無限絵札の幹部、遊佐岳也(ゆうさがくや)。これからもよろしくね。藤松会」

 遊佐は5人の倒れた襲撃者を車に入れ、その場を去った。

 「九鬼さん…何だったんでしょうかね?今の」

 「さぁ…宣戦布告かもしれんな」

 俺は夜道を照らす月を眺めた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ターゲットを失脚させても結局は依頼人も不幸になってしまうエピソードは、読んでいてちょっと辛いものがありましたが、今回は園原さんがガチの被害者だと思うので、園原さんが釈放されて本当に良かった…
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