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異世界の動物園に丸裸で展示されてるんですけど!? 〜自炊と奇行でなぜか爆バズり中! 快適スローライフですが服だけ下さい〜  作者: 海岸線の夕日
シーズン1

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1話 人間(サラリーマン)の展示を始めました。

佐藤創太(さとう・そうた/39歳)は、足元に浮かび上がる巨大な魔法陣の中にいた。


淡い光。


複雑な幾何学模様(きかがくもよう)。


(間違いない。これは小説でよくある異世界召喚ものだ……!転移したのか!)


胸のワクワクが止まらない。

胸のドキドキが収まらない。


ついに自分にもテンプレ展開が訪れたのだ。クソみたいな満員電車とサビ残の日々におさらばして、剣と魔法の世界へ。


周りを見ると、人間以外の種族の2人が、何やら深刻な顔で話している。


言葉は分からない。


(定番の魔王討伐か?王様やお姫様はどこだろう?期待と興奮が止まらない。これから大冒険が始まるんだ!)


しかし、創太が期待に胸を膨らませている一方で、召喚室のオオカミ主任とトカゲ係長の間では、会社の存続を揺るがす大パニックが起きていた。


彼らが展開しているのは、地球(異世界)から主に動物を召喚することに成功し、人気を博している「異世界動物園」ビジネス。


いつも通りの流れ作業で、地球の動物を召喚していたはずだった。


ところが、出てきたのは





――人間。





「おい係長! この個体、服を着てるぞ……!?」


オオカミ主任がトカゲ係長を怒鳴りつけるように指をさす。


「恐らく野生動物ではないですね……知性体かと思われます」


「知性体だと……!? どうする!? 上に報告するか!?」


トカゲ係長が頭を抱える。


「もし本社の役員たちに『会社の利益にならない』と判断されたら……恐らく、処分されてしまいますよ」


「しょ、処分……!? 異世界から召喚されて処分されるだと!? 可哀想過ぎないか? そ、そうだな、しれっと元に戻そう」


「バカなことを言わないでください。異世界に戻す方法なんてないんですよ」


主任は何とかしてやりたいと思った。


「じゃあ国に保護してもらうのはどうだ!?」


「それこそ処分でしょう。一体誰の予算で保護するんですか?この会社がやらかしたポカなのに、国が税金で面倒を見てくれるわけがありません!」


「そ、そうだったな……。仮に保護してくれたとしても、もし今後もこんなことが続いたら、異世界召喚事業自体が法律で全面禁止されるだろうな」


「そうなると、うちの会社は終わりですよ」


オオカミ主任は言葉に詰まった。係長の言う通りだ。


よし、主任は呟いた。


「逃すか」


「はぁー、そもそも、うちが国から異世界召喚を許可された時の条件を忘れたんですか?【召喚対象を外に放すのは一頭たりとも厳禁】なんですよ。もしコイツを外に逃がしたなんてバレたら、その時点で営業停止、一発で終わり(倒産)ですよ!」


彼らにとって、この人間は会社を倒産に追い込みかねない恐怖の爆弾だった。


だが、そこでオオカミ主任がふと目を細めた。


「待てよ。一応、念のため言葉が通じるか確認してみるぞ。もし話が通じるなら、こいつはただの動物じゃない。新しいビジネスのネタになって、会社の大きな利益になるかもしれん」


「そうですね、確率は低いと思いますが話が通じるなら……」


オオカミ主任は創太の前にドカドカと一歩踏み出し、偉そうな態度で問いかけた。


「おい、お前。俺たちの言葉が理解できるか?」


そんなこととは露知らず、創太は完全に「チートな主人公妄想モード」に入っていた。小声で「ステータス」とか「大いなる精霊よ」とか「ウォーターボール」とか何やらぶつぶつ呟くのでいっぱいいっぱいになっていた。


ハッと我に返る。偉そうな態度をした狼の獣人が、自分に何かを聞いている。


創太は精一杯の丁寧な対応を心がけ、笑顔で頭を下げた。


「すみませんが、お言葉が分かりません」


異世界の言葉は一切分からない。だが、誠意は伝わるはずだ。ペコペコと何回もお辞儀をした。


その様子を見て、オオカミ主任はあからさまにガッカリした顔になり、トカゲ係長と顔を見合わせた。


「……チッ、やっぱり言葉は通じないか」


「ですね。妙にペコペコ頭を下げて鳴くだけの、ただの珍しい生き物です。話が通じないとなると、仕方ありませんね」


二人の顔に、フッと諦めの顔が浮かび、やがて悪い顔に変わっていった。


「処分は残酷、外に放すのも禁止、言葉も通じない、ビジネスにも使えない……となると、やるべきことは一つしかないな」


「ええ。これは知性体ではなく、ただの『ちょっと小綺麗な動物』です。そう割り切りましょう」


トカゲ係長が主任の顔を覗き込む。


「会社にとってもコイツにとっても、動物園で展示されて暮らす方が、処分されるよりはよっぽど幸せでしょう。外に放り出しても規約違反で我々が困るだけですし、コイツだって言葉が通じず行き倒れるだけですから」


「違いない。衣食住は保証されるんだ。むしろ処分の運命から救った俺たちに感謝してほしいくらいだな」


完璧な自己正当化を済ませた二人が、ニヤリと冷酷なアイコンタクトを交わす。


何やら最終決定が下されたようだ。


創太のワクワクとドキドキは最高潮に達する。


(いよいよ、王様との謁見か!?)


ところが。


その時、創太の視線がふと横に逸れた。


召喚室の隅に、静かに佇む一人の女性がいた。長い銀髪が光を柔らかく反射し、透き通るような白い肌。切れ長の瞳は淡い翡翠(ひすい)色で、耳は長く尖っている。完璧に整った顔立ちは、まるで絵に描いたような美しさだった。


創太の首は、まるでねじ切れるかと思うほどの勢いで、そのエルフの方を向いた。


(……え? あの人、エルフ……? めちゃくちゃ綺麗……)


創太の心臓が一気に高鳴る。


魔王討伐も冒険も、今はどうでもよかった。


あの綺麗なエルフに見とれ、思わず口が半開きになり、顔が緩んでデレデレしてしまう。


エルフの女性は、その熱っぽい視線にすぐ気がついた。


翡翠色の瞳が冷たく細められ、低い声で吐き捨てるように呟く。


「……フン。コイツ、発情してるわね」


創太にはその言葉の意味が全く分からない。


ただ、彼女の冷たい口調と、明らかに軽蔑を含んだ視線だけが突き刺さり、一瞬で背筋が凍りついた。


それでも、綺麗なことに変わりはなく、視線を外せずにいる。


オオカミ主任が女性の方へ振り返り、命令を下した。


「ナターシャ、拘束魔法を頼む」


「……了解」


ナターシャが淡々と詠唱を唱え、杖を軽く振る。


(あの綺麗なエルフさんはナターシャと言う名前なんだ。ん、何だ。魔法か?あの流れは、ナターシャさんが祝福の魔法をかけてくれる?!嬉しい!)


だが次の瞬間、淡い光の鎖が創太の手足を絡め取り、動きを完全に封じる。


冷たく、容赦のない拘束魔法だった。





「え?」


「あ、あれ……?」


そのまま頑丈なケージに押し込まれ、馬車で動物園へと輸送される。


抵抗する間もなく、着ていたお気に入りのスーツを脱がされて、裸にされ、冷たいコンクリートのバックヤードへと放り込まれた。


ガチャン! と重い鉄格子が閉まる。


(え……? 王城の客間……じゃなくて、ここ、飼育小屋……!?)


すっぽんぽんのまま、藁が敷いてあるだけの冷たい床に座り込む創太。


異世界に転移してきたのに、定番の神様からの説明も無い、チートスキルも無い、そして、剣と魔法の世界に来たのに魔力も無いときた。


ただのおっさんが、

人間が存在しない、

様々な異種種族が住む獣人の世界に、

ただ、転移しただけだった。


頭の片隅には、まだあの綺麗なエルフの冷たい視線だけが残っていた。言葉の内容は一切分からないまま。


こうして、異世界動物園の新たな展示物「ハダカザル」としての生活が、最悪の形で幕を開けたのだった。

掲載するかどうか迷ったのですが、新しい試みとして、後書きに「参考AI画像」を載せることにいたしました。


毎回少しずつキャラクターのイメージが変わってしまうかもしれませんが、あくまで参考として大目に見ていただけますと幸いです。また、背景や小物などストーリーと違う点などが多々出てくると思いますがご容赦ください。順次掲載していく予定です。


参考AI画像 召喚シーンオオカミ主任&トカゲ係長


挿絵(By みてみん)


参考AI画像 召喚シーンエルフ


挿絵(By みてみん)


番外編 名前決定シーン


オオカミ主任はオフィスでお茶を飲んでいた。そこにトカゲ係長がやってきて、遠慮がちに切り出す。


「……で、主任。名前というか名称、どうしましょうか」


オオカミ主任はお茶を置き、腕を組んで顎に手を当てた。


「うーむ……。確かこの前、召喚した猿という動物に似てるんだよな。でも……体毛がない」


係長が即座に同調するように言う。


「まるで裸だ」


二人の視線が、ゆっくりと交わる。


次の瞬間、同時に声が重なった。


「「ハダカザル!!!」」


オフィスに、妙にノリの良い叫び声が響き渡った。

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