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第43話 尋問の時間

 取調室内で土下座するマクスウェルを二人の麗人が見下ろしている。


 その状況で兜が口を開く。


「マクスウェルとやら。お前の仲間は何人来ている? それらしい反応をまとめて転移させたんだが」


「はあ、仲間? 来てませんよ。最近連絡の取れない同業が増えましてね。合流して対抗しようと荷物をまとめてたところなんでさあ」


 土下座したままのマクスウェルが答える


「じゃあこの気配は何だ?」


 死神狩りの椿が真っ先に反応する。


 死神の血を得た奇妙な気配。


「ま、まさかもう来たのか!? 畜生!」


 続いてマクスウェルも気付いたようで、取調室を這い回り部屋の隅で震え始める。


「大丈夫か? こいつ」


「それはお前に言いたい言葉だ。こいつを狙った吸血鬼ごと転移させてるぞ」


 突然の爆発音。


 怒号、悲鳴、警報が音の洪水のように警察署中に響き渡る。


「ほら来てるよお! 余計なやつらまで呼びやがってえ!」


 続いて銃声。


 複数の自動小銃と思われるもの。


 撃たれているのは警察署の職員か。


 警察官側の銃声も聞こえるがその音は散発的で、吸血鬼側の勢いに負ける。


「久留間。お前見張ってろ」


「はい、課長」


「マクスウェル、落ち着いて話せよ? お前を狙ってる吸血鬼がどういう連中か言え」


 椿がかがみ込んでマクスウェルの胸倉を掴んで言う。


「えっと『血弾』……事前に血液を込めた弾丸を使ってるはず。だから高位の吸血鬼じゃない。でもきっと強化されてる……最近の奴らは不自然に強い……!」


 椿と兜が頷く。


 やはり異能者の血で強化された吸血鬼が、天敵の死神を排除しようとしているのだ。


「対策は?」


「弱点が消えて長所が強化されてる……! 今までの戦法が通用しなくてみんな死んだ!」


 怯え切ったマクスウェルから引き出せそうな情報はこれ以上ない。


「ここからどうする? お前と久留間はどれだけやれる」


「久留間はもう一人の……アレよりはやるが、わたしの方は駄目だな。期待はするな。けど逃げるってのは無しだ。たとえ分身でもヘルムヴィーゲが退くことはあり得ない」


 ドアの外から久留間の声。


「霊力の上限解放を願います」


「よし。やれ」


 久留間は公安所属ということで貸与されている拳銃に霊力を込めた。


 警察署内の人間はあらかた殺し終えたのか、吸血鬼たちの気配は椿たちのいる取調室に向かってくる。


 吸血鬼が取調室に繋がる曲がり角に達する直前で、久留間が連続して発砲した。


 吸血鬼の集団のうち一人が全弾を頭部に受け即死する。銃弾の軌道は操作されていたようだ。


 五人の吸血鬼のうち死んだのは真ん中の一人。


 二人ずつに別れ、廊下の左右の角に身を隠し一斉に発砲する。


「壁」


 久留間がそれだけ言うと、コンクリートの厚い壁が久留間を守るように発生し銃弾を防いだ。


 コンクリートの壁を銃弾が削る。


 血で強化されているというだけあって「血弾」は壁の深くにまで潜り込むが、決定打を与えることができない。


「攻めます。椿さん、頼めますか?」


「お前が前に出るならな」


 そういうと椿は赤口を顕現させ、ドアを開ける。


「こんな壁作ってどうするつもりだ? 邪魔だろ」


「今消します……フォローを頼みます」


 久留間は椿とタイミングを合わせると一言だけ発した。


「盾」


 壁が消え、身をかがめた久留間の全身を覆うほどの防弾シールドが出現する。


 特殊部隊が突入時に使用するような代物だ。それを持った久留間が突撃を開始する。


 椿はその後ろを走りながら、久留間が丁字路を飛び出た瞬間どう動くか考える。


 久留間は通路から出て左側の吸血鬼に盾を叩きつけた。


 その瞬間に椿は久留間の背中を蹴って跳躍。


 進路から見て右の吸血鬼の背後に着地し、赤口を心臓に突き刺す。


 もう一人の銃弾を死体で受けながら、死体から突き出た赤口を伸ばし、さらにもう一人を突き刺した。


 その刃は心臓には届かなかったが、動きを止めることに成功した。


 死神の力を持った吸血鬼にとって赤口の一撃は想定を超えた痛みを与える。


 その隙を突いてもう片方の手にもった拳銃から霊力強化した鉛玉を頭部に叩き込んだ。


「こっちは済んだ。どうだ?」


「こちらも今済みます」


 盾に叩き潰され、半ば壁に貼り付くように座り込んだ吸血鬼の死体と命乞いをする最後の一人が椿の目に入る。


 久留間は吸血鬼の左足を踏むと勢いをつけて盾を振り下ろす。


 絶叫と共に切断される左足。


 淡々と彼は吸血鬼の四肢を切断すると、髪を引きずって運び取調室に放り込む。


 中からマクスウェルの悲鳴が聞こえる。


「ご苦労ご苦労。久留間、お前はまだ使い物になるな。もう一人みたいな犬死はすんなよ」


 兜は自身のスーツが汚れるのも気にせず、四肢を切断された吸血鬼を引き上げ机の上に置く。


「さあて、尋問の時間だ」


 吸血鬼の尋問中、久留間は適度に数滴の血を与え、死ぬことを許さない。


 死神の血である。身体が強化され死のうにも死ねないのだ。


 椿、兜、久留間の三人に怯え切ったマクスウェルが適宜補足をし、死神勢力は情報を得る。


 吸血鬼の中には主に四つの派閥があるようだ。


 選ばれし者だけが吸血鬼になるべきだとする選民思想の「貴族主義」派閥。


 死神に殺されるよりも多く吸血鬼の数を増やしていくべきだとする「繁栄主義」派閥。


 原初の吸血鬼「真祖」を蘇らせ吸血鬼の最盛期を取り戻そうとする「再興主義」派閥。


 ただひたすらに血液を操る技術についての研究を生涯かけて行う集団「叡智主義」派閥。


 だが「血戦派」はそのいずれにも属さず、何でもありの「叡智主義」以外からは追放されるような鼻つまみ者の集団だという。


 そしてその頭首である吸血鬼、ロデリック。


 この尋問を受けている哀れな吸血鬼では会うことも叶わない存在らしい。


「血戦派は……大きな勢力じゃない……ゴホッ……。だが、それは吸血鬼……全体を……うう……指してのことだ……。お前ら、の……思う以上に、数は多い……精々、我々を侮らないこと……だ」


「死んだな」


 椿が吸血鬼の死を確認すると、兜が大声で指示を飛ばした。


「グリムゲルデ! ロスヴァイセ! 聞いただろ!? さっさと吸血鬼狩りの保護を進めろ! もう遅いだろうが、念のためな!」

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